〈BD〉ポーランド若手筆頭格、ヴィクター・ジーリンスキ、インタビュー

Photo :  K. MORI 2023
Photo : K. MORI 2023

 

先月27日に

ラスベガスオープン』(10ボール)で

連覇を果たした

ヴィクター・ジーリンスキ。

 

現在22歳のジーリンスキは、

プール強国・ポーランドの

厚いトッププレイヤー層の中でも、

現10ボール世界チャンピオンの

ヴォイチェフ・シェブチックとともに

国を代表する存在になっていると

言って良いでしょう。

 

そんなジーリンスキの

最新インタビューをお届けします。

 

2月中旬、ジーリンスキは

他のワールドトップ達とともに

新イベントに出るために、

カナダ・トロントを訪れていました

(※このイベントは収録イベントのため

まだ全容は公開されていません。

大井直幸プロも参加)。

 

その機を捉えて、

トロント在住のK. MORI氏が

ジーリンスキにインタビュー。

 

彼の近況や普段の練習、

そして2019年初来日時の

エピソードなど色々と聞き出してくれました

(※この取材はラスベガスオープン

連覇の前に行っています)。

 

…………

 

Photo :  K. MORI 2023
Photo : K. MORI 2023

 

聞き手:K. MORI

語り手:Wiktor Zieliński(以下WZ)

 

 

――ヴィクター、あなたは2019年に来日して『ジャパンオープン』に出たこともありますね。

 

WZ:旅行とプールが大好きな友人と一緒に日本に行ったんだ。東京とその近郊を10日間ぐらい巡ったよ。文化の違いを結構感じたね。シャイな人が多くて話し掛けても避けられちゃったり(笑)。テクノロジーもすごい。日本の車がみんな静かでびっくりしたよ。ただ、食事は合わなくて困ったかな。食べ物が原因とははっきり言えないけど、何度かお腹を壊しちゃった。

 

――『ジャパンオープン』では3位でした。

 

WZ:名前は忘れたけど日本のプレイヤー(小川徳郎)に準決勝で負けたんだ。7-5でリードしていたんだけど(8ラック先取)、なんだかわからないうちに負けてたよ。あの時は大井(直幸)が優勝したんじゃなかっけ。

 

――そうです。今年は9月に『8ボール世界選手権』が日本で開催される予定になっていますが、また日本に行きたいですか?(※BD注:日本開催プランはその後なくなったとも言われている。公式発表はまだない)

 

WZ:もちろん。去年シルバーメダルだったしね(2022年大会の優勝はF・サンチェスルイス)。世界大会だから必ず行くよ。トッププレイヤーは皆行くだろうね。

 

――初来日の2019年の時も優れたプレーを披露していましたが、コロナ禍の期間を経て更にスキルアップしたように思えます。何か特別なトレーニングをしていたのですか?

 

WZ:ポーランドでもコロナ禍の間はビリヤードクラブがどこも閉まっていて練習も出来なかったんだ。なんとかスヌーカーを出来る所を見つけて、しばらくスヌーカーをプレーしたりしてたよ。その後、友人のプールルームで一人で練習出来るようになった。それまで一人っきりで練習するというのはやったことがなかったんだけど、仲間と相撞きするよりも色々学べたよ。シュートは既に自信があったから主にセーフティの練習をしたんだ。かなり自信が付いたね。

 

(※筆者追記:カナダのイベントのプラクティスセッションでもジーリンスキはセーフティやセーフティー返しの練習に時間を割いていた)

 

WZ:誤解してほしくないんだけど、人と撞くのが悪いって訳じゃないんだ。良いスパーリングパートナーは絶対に必要だからね。自分にとっては、シリアスなトーナメントで戦っていく上で、一人でじっくり考えて練習する時間を持てたのは結構良かったと思う。

 

――近年ポーランドから強いプレイヤーがたくさん出てきていますが、なぜだと思いますか?

 

WZ:以前から強いプレイヤーはたくさんいたんだ。W・シェブチック(2022年10ボール世界王者)を始めとして皆で切磋琢磨してお互いを高め合って来た結果かな。

 

――あなたはコーチングを受けたことはありますか?

 

WZ:アレックス・レリー(1990年代~2000年代にオランダNo.1選手として活動した後に解説者・コーチとして活躍。近年は『モスコーニカップ』欧州チーム監督を務めている)に指導してもらったことがある。13年ぐらいプレーしてきてるのに「知らなかったことがこんなにあるのか」と驚いたよ。彼は世界で1、2を争うコーチじゃないかな。

 

――プールでのメンタルについてどう考えていますか?

 

WZ:もちろん重要だね。プールは戦略的なゲームだし、重要なショットでは2度3度と考え直してしまうこともある。トッププレイヤー同士で戦っている時に簡単なボールを外して恥ずかしいと思うこともある。僕自身はたくさん負けてそこから学んで来たかな。でも、柯秉逸(台湾)のような冷静さは自分には無いかも(笑)。今は特にメンタルトレーニングとかはしてないけど、僕はテーブルに向かえば周りのことは一切目にも耳にも入らなくなるんだ。

 

――普段はどんな練習を?

 

WZ:セーフティとブレイクは必ずやってるね。ブレイクの重要性は大きいし、セーフティとセーフティ返しも同じぐらい重要だ。同じ配置でも色々なセーフティが考えられるから、その中から常に最適解を選べるようにならないと。

 

――攻めるか守るか悩んだ時はどうやって決めていますか?

 

WZ:その時に自信がある方かな。でも、本当に悩みに悩んだ時は入れに行く。相手にターンを渡したら何が起こるかわからないから。ラッキーなロール(流れ)があるかもしれないしね。

 

――ちなみに、あなたはまだ大学に通っているんですよね?

 

WZ:そう、あと1年残ってる。コロナが広がり始めた時に何もやることが無かったから大学に入ったんだ。昔からプールのプロプレイヤーになるのが夢ではあったんだけど、ここ数年は何が起こるかわからない状況だったから、他の可能性も残しておいた方が良いかなと思ってね。卒業したら本当にフルタイムのプロプレイヤーになるよ。

 

――あなたのようになりたいと思っている日本の若いプレイヤーにアドバイスをお願いします。

 

WZ:若い頃は友達からの誘いも多いと思うけど、目標を持ってしっかりそれに向かって練習あるのみだね。僕はここに来るまでに12~13年かかっている。友達からパーティやドラッグに誘われたりもしたけど、練習に行くからって断ってたよ。

 

――当時のその練習は相撞き中心でしたか?

 

WZ:うん、当時はほとんど相撞きだね。週4~6日は撞いてたよ。本当にプールが好きだから全然苦じゃなかった。

 

――あなたは「世界2位」まで登りましたが、その先に行くためには何が必要だと思いますか?

 

WZ:とりあえず大学をちゃんと卒業してプールに集中出来る環境を作ることかな。練習はもちろん大事だけど、練習に打ち込める環境が欲しい。例えば、出来るだけ試合の環境に合わせた自分専用のテーブルとか。ラシャも新しいものでないと試合の調整にはあまり役に立たないしね。

 

――最後に。今までに受けた一番良いアドバイスは?

 

WZ:僕は頑固だから人の話を聞かないんだよね(笑)。……そうだな、色々な人に言われたことだけど、「椅子に座っている時は何も出来ないのだから何が起ころうと気にする必要はない。テーブルに向かったら台上の状況を受け入れて今出来ることを考える」かな(笑)。

 

――ありがとうございました!

 

(了)

 

Wiktor Zieliński

ヴィクター・ジーリンスキ

ポーランド出身

2001年1月11日生(取材時22歳)

主な戦績は、

『ラスベガスオープン』連覇(2022、2023)

『ユーロツアー優勝3回

他、優勝入賞多数

使用キューはPREDATOR

 

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◇ 同時期にK. MORI氏が取材した

S・ウッドワードのインタビューはこちら

J・チュアのインタビューはこちら

 

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