〈BD〉初開催『モルディブオープン』のちょっと裏側 by 吉岡正登

 

インド洋の島国、

モルディブの首都・マレで開催中の

WPA10ボール新トーナメント、

『モルディブオープン』。

 

日本の大井直幸は決勝トーナメント・

ベスト32敗退(17位タイ)、

 

吉岡正登はグループラウンドの

敗者最終敗退(33位タイ)となり、

日本勢の戦いは終わりました。

 

現地では27日0時30分より、

柯秉中(台湾) vs J・チュア(フィリピン)の

決勝戦が行われます。

 

今大会はモルディブで初めて行われた

WPA公認10ボールトーナメント。

 

出場選手数は64名と

国際大会としては小~中規模ですが、

世界チャンピオン5名の他、

アジア各国のトップ選手達が多数参加し、

初開催に華を添えていました。

 

そんな大会の模様と、マレという街の様子を、

現地にいる吉岡正登プロが教えてくれました。

 

…………

 

吉岡正登・記:

 

モルディブからこんにちは。吉岡正登です。

 

僕は初モルディブ。20日の早朝に地元・大阪から成田に向かい、成田―スリランカ―モルディブと飛行機を乗り継ぎました。帰国便は経由地が増えて、モルディブ―スリランカ―シンガポール―成田です。

 

まず日本からスリランカへ9時間半。便が遅れて乗り継ぎ時間は40分ほどしかありませんでしたが、小さい空港だったので余裕で間に合いました。

 

そこからモルディブまでは1時間半。到着するとモルディブビリヤード協会の方が迎えに来てくれていて、車で約10分の所にある大会公式ホテルの『マンハッタンビジネスホテル』まで送ってくれました。

 

 

着いたのが夜9時頃と遅かったので、近場でタイ料理を食べました。味は……まぁ、普通に食べられるレベルで特筆すべきモノではなかったです。そう、大井(直幸)プロと僕はまだ知る由もありませんでした、このマレ島の9割の飲食店がタイもしくはインド料理屋だということを……。

 

…………

 

 

一夜明けて滞在2日目(21日)。この日は大会前日で、プレイヤーズミーティングがある日。前日に空港で迎えてくれたモルディブビリヤード協会の関係者らしき人に「明日練習したければメッセージをください」と言われて連絡先を交換していたのでメールをしました。

 

しかし、返事がないので、とりあえずホテルから約5分のモルディブ協会(試合会場)へ歩いて向かっていると、バイクに乗った見知らぬ人がキューを担いでいた僕たちを見て、「協会は閉まってるよ。練習したければあっちだよ」と親切に近隣の別の建物へと案内してくれました(※上記の『歩いてみた』動画の途中に出て来る場所です)。

 

ですが、そこに着くと、3台ある練習テーブルの予約シートの枠はびっしり埋まってました。奇跡的にラストの夜11時の1枠だけ空きが……。昨日の協会の人、ちゃんと教えておいてよ! って感じでした。

 

プレイヤーズミーティングは午後3時スタート。

 

10ボールは「コールショット」(どのボールをどのポケットに入れるか撞く前に指定)で行われる種目ですが、狙っているボールとポケットが明らかな場合はいちいち口にしなくていいというのが慣例です。しかし今回は、声に出して言うかキューなどでポケットを指すなどして「全球完全にコールしなければいけない」と言われました。これは最近の10ボールの世界大会でノーコールやジェントルマンズコールがもとで言った言わないのトラブルが発生したからでしょう。

 

しかし……、実際試合が始まってみるとこれが曖昧で、コールを忘れていても選手が狙っている穴が明らかに分かるようなショットではスルーされていました。

 

…………

 

 

滞在している首都マレは、いわゆる「モルディブ=ビーチリゾート」のイメージとは異なり、現地の方が普通に生活している街です。あまり綺麗ではなく、言ってしまえば雑多な印象で、狭い土地の狭い道路をバイクが縦横無尽に走り回っています。ちなみに、バイク運転手たちはほぼノーヘルメット。警察官もノーヘルで2人乗りしていました(笑)。ところ変われば法律も変わります。

 

気温は1日を通して30℃前後あり、湿度が非常に高いです。そのため少し外を歩くだけで疲れます。

 

現地の方とのコミュニケーションは基本的に英語が通じますし、お店ではドルも使えます。モルディブには「ルフィヤ」という通貨もあります。街のほとんどのお店で2種類のお金が使える国は珍しいのではないかと思います。

 

食べ物はタイ料理、インドネシア料理、インド料理など、大ざっぱに言えばアジアフードがメインです。というか、それ以外ありません。あまりチャレンジングな物を頼まなければ、それなりにいただけます。

 

朝食はどこへ行ってもビュッフェスタイルでした。屋台などもあるのですが、そこもビュッフェ。値段はどこへ行ってもリーズナブルですね。ケンタッキーは1セット1,400円となかなかの高級品でしたが……。

 

それと、マレでは基本的にお酒が飲めません。モルディブ国民のほぼ全てがイスラム教徒だからです。

 

【お酒が飲めない・暑い・イスラム教中心・ビリヤード協会の建物で試合】……とくれば、カタール開催時代の『9ボール世界選手権』を思い出します。モルディブは湿度の高いカタールみたいな感じでしょうか。

 

ただ、モルディブにある数多のリゾート島へ行けばお酒の提供がありますし、食べ物も多種多様で、マレとは雰囲気が全然異なると思います。正直マレだけに滞在していても、【ビーチリゾート・モルディブ】に来た意味はあまりないと言っても過言ではないでしょう。

 

…………

 

 

大会会場は『モルディブビリヤード協会』がある小屋のような建物。

 

今回の大会用にでしょう、TVテーブルが1台設けられていて、その他に8台設置されていました。

 

テーブルはWIRAKA(ウィラカ。シンガポールのブランド)。これもカタール時代の『9ボール世界選手権』と同じですね。

 

ラシャとボールは大会スポンサーであるPREDATOR(プレデター)の物。テーブル自体は撞きやすいのですが、湿気の関係でラシャの状態がバラバラでした。

 

暑い開催地あるあるなんですが、基本的に日中の室内はクーラーガンガンで寒いと感じるぐらい温度が低く設定されています。このモルディブでも、小さなクーラーがすごく狭い間隔でたくさん設置されていました。画像でもわかると思います。

 

ですが、夜のうちにラシャが湿気を吸うからなのか何なのか、僕が初戦でプレーしたテーブルは、新ラシャ感が全くありませんでした。2試合目と3試合目のテーブルはまだボールが転がりましたが、それでもクッションの出方にバラつきがあり、とても難しかったです。こういったアジアならではの多湿のテーブルコンディションに慣れていないヨーロッパの選手などは戸惑っていたのではないかと思います。

 

…………

 

 

レフェリーは予選グループラウンドでは2台につき1人。決勝シングルトーナメント(ベスト32)からは1台につき1人付いていて、もともと狭い台間を行ったり来たり。言ってしまうと、プレイヤーの移動の邪魔になっていた時もありました。

 

そして、大井プロのベスト32戦(vs ルオンドゥックティエン(ベトナム))で事件が!

 

今回の試合テーブルは、シュートしたボールがそのまま各ポケットに溜まるタイプでした(「ポケットストップ型」)。10番を入れた直後、手球がまだ少し動いている状態で、いつものようにポケットから的球を取り出した大井プロ。これは多くの選手が試合の円滑な進行を思ってなかば無意識的にやっている行為です。しかし、それを見てレフェリーは「ファウル」と告げました。手球には全く触れず、関係のない場所へ的球を上げただけなのに、です。これで2-4に出来るところが1-5になったのはかなりキツかったと思います(※最終的に大井プロは6-8で敗戦)。

 

これは大井プロだけのことではありません。ベスト8で張榮麟(台湾)も、第1ラックで10番を入れた直後、ポケットにあった球を早く上げすぎてファウルを取られました。張榮麟は納得が行かず、試合を棄権しようとしましたが、なんとか試合は再開されました(※ファウルという裁定は変わらず、相手のJ・フィラーがフットスポットに戻された10番を手球フリーで入れて1-0となりました。この試合はフィラーが勝利)。

 

たしかに予選グループラウンドの時に、僕も同じことをして注意されました。ですが、まさかファウルを取るとは……。以前、別の国際大会であるプレイヤーがボールの取り出しを手伝った結果、不運にも取り出した的球が止まりかけの手球に触れてしまい、ファウルになった事例がありました。そういったケースを受けて、トラブルの元になる行為自体を防ごうという狙いなのでしょう。しかし、試合を早く進行できるようにという選手の配慮が裏目に出るとは……。

 

もちろん大井プロも分かっているので、手球に干渉しそうな所には的球を上げていません。主催・運営側がルールを厳格に守りたいのは分かります。しかし、プレイヤーに対してもう少しキチンと事前に説明がなされるべきだと思いました。

 

…………

 

 

開会式には、青少年・スポーツ・地域社会強化省なる政府機関の大臣の方も来られており、「来年はもっと大きな大会を目指す」と話していました。

 

もしこれを読んでいる方が、モルディブオープンに参戦や観戦に来られる際には、試合はもちろんですが、140あるというリゾート島で、美しいターコイズブルーの海も堪能することをお勧めします。

 

(了)

 

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◇ 大井直幸/I組

 

○ 7-0 vs L・シャルマ(インド)

○ 7-4 vs D・チア(マレーシア)

グループラウンド通過

 

×(ベスト32) 6-8 vs ルオンドゥックティエン(ベトナム)

 

17位タイで終了

 

…………

 

◇ 吉岡正登/J組

 

○ 7-3 vs A・ファヤス(モルディブ)

× 2-7 vs J・モラ(カナダ)

× 2-7 vs ルオンドゥックティエン(ベトナム)

 

※グループラウンドで終了

 

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※ライブ配信&アーカイブ

https://www.youtube.com/@maldivespool-billiardassoc2399/streams 

 

※モルディブビリヤード連盟Facebook

https://www.facebook.com/MaldivesPool/

 

※モルディブビリヤード連盟Twitter

https://twitter.com/maldivespool

 

※モルディブビリヤード連盟公式サイト

https://mpba.mv/

 

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◇ 大会概要&フォーマット:

 

インド洋の島国、モルディで、

今年創立された新トーナメント

 

モルディブビリヤード連盟主催、

モルディブ青少年スポーツ地域社会省後援、

WPA(世界プールビリヤード連盟)公認、

ACBS(アジアビリヤードスポーツ連盟)協力、

プレデター協賛という、

“WPA系10ボールイベント”で、

WPAランキングと

アジアランキング対象のイベント。

 

64名出場。

まず4名×16組に分けて

グループラウンドを行い(7ラック先取マッチ)、

各組2名(計32名)を選抜。

 

32名決勝シングルトーナメント

(8ラック先取、準決勝と決勝戦は10ラック先取)。

 

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◇ モルディブオープン関連記事:

 

4/24 大井直幸が決勝トーナメント進出

4/21 大井と吉岡の初戦は23日

4/17 大井直幸&吉岡正登が参戦

 

 

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