打感・パワー・キレを兼ね備えた
牛革積層タップを手掛ける国産ブランド、
『BIZEN TIP』(ビゼンタップ)。
今回はBIZENアスリートの一人である、
肥田緒里恵プロ(JPBF)に
ご登場いただき、『BIZEN』の
使用感や特徴をお聞きしました。
あわせて、まもなく新シーズン開幕を迎える
『PBA』についてもお聞きしました。
『PBA』とは、
2019年に韓国で生まれた
スリークッションプロツアーのこと
(※BDでのPBA関連記事はこちら)
6月11日より、
2023-2024シーズン(5年目)の開幕戦、
『Gyeongju BlueOne Resort』が
始まります。
肥田プロは過去2シーズンと同じく、
今季も個人戦とチームリーグ戦の
両方に出場します。
…………
↑ 肥田プロは現在、ポケット用BIZEN(カーボン・ハイテク系シャフト用)のプレミアムコーティングバージョンを使用中(画像)。コーティングバージョンについて詳しくはこちら→ https://bizen.store/collections/all
※画像のものとは別にゴールドコーティングが施された海外市場向けバージョンも日本国内で購入できるようになりました。詳しくはこちら→ https://bizen.store/products/bizen-tip-for-all-round-with-premium-coating
取材協力:ビリヤードCANNON (東京都板橋区)
――まず、BIZENについてお聞きします。出会いは?
肥田:PBAに行く前……2年前の春頃だったと思います。うちのお店(東京『CANNON』)で1年ぐらい球を撞いておられたIさん(BIZENマーケティング担当・I氏)が、実はBIZENのスタッフだったということが後からわかりまして。私の父(肥田明プロ)とIさんがよくタップの話をするようになり、父がBIZENを試すようになって(※後に明プロはBIZENのエクゼクティブアドバイザーとなる)、それから私も使わせていただくようになりました。その頃はまだ契約選手ということではなく、応援していただいていたという形です。
――初めて使った時から好印象でしたか?
肥田:良かったです。ただ、以前私は豚革タップを使っていたこともあって、使い始めの頃は少し違和感もありました。そして、できれば私の好みにもう少し合うものがあればよいなと思いまして、Iさんに希望をお伝えしていました。
――どんな表現で伝えていたのでしょうか?
肥田:よく言っていたのは「柔らかめのものを」でしたね。私は革や製法に関して知識もボキャブラリーもないので拙い表現だったと思いますが、Iさんや苫野さん(開発担当の苫野裕氏)がいつもよく汲み取ってくださっていたと思います。
BIZENマーケティング担当・I氏:いえいえ。「柔らかめ」ということと「スピンがちゃんと伝わること」「方向の安定性」といったことを口にしておられたと記憶しています。
――PBA挑戦1年目(2021年6月~)はBIZENは使っていましたか?
肥田:使っていた時もありましたけど、向こう(韓国)でタップ交換をしなくちゃいけなくなり、別のタップを使っていた時期もありました。私はタップ交換ができないので、日本にいる時は父に替えてもらっていますが、当時は海外に行くと長い隔離期間があったので、一旦韓国に行ったら気軽に日本に帰って来るという訳にもいきませんでした。なので、メンテナンス面からも完全にBIZENに移るのはまだ難しかったですね。
――PBA2年目(2022年6月~)は?
肥田:ずっとBIZENだったと思います。よく覚えてるのは、LPBA第3戦で初優勝(2022年9月)した後ぐらいに苫野さんからいただいたタップです。それが今も使っている「ポケット用(カーボン・ハイテク系シャフト用)」のコーティングバージョン。これがすごく私の肌に合っていて、アベレージもだいぶ安定してきました。
――スリークッション用の『Ⅲ』ではなく。
肥田:『Ⅲ』は私にはちょっと硬く感じられて、パワーが出すぎる印象でした。実は商品化される前の段階の『Ⅲ』は私好みでした(笑)。……という話を(『Ⅲ』監修者の)鈴木剛プロにしたこともあります。
BIZENマーケティング担当・I氏:ご存知のように『Ⅲ』は鈴木剛プロの監修のもとで、より芯の感じられる方向に仕上げました。面白いことに、『Ⅲ』が素晴らしく合うという方がキャロム・ポケット問わずいる一方で、「もっと硬いのがいい」という人もいますし、「ここまで芯がなくてもいい」という方もいらっしゃいます。本当に人それぞれの感じ方があるのだなと我々も勉強になりました。
――肥田プロが思うBIZENの良いところとは? 以前のアンケート企画で「グリップ力」と書いておられましたが……。
肥田:そうですね。私はグリップ力の高さがBIZENの特徴だと思います。韓国で他のタップも使いましたけど、もうグリップ力は段違いでした。たくさんヒネればたくさんスピンがかかるのはもちろんですけど、BIZENの場合、1タップとかの少ないヒネリでもちゃんと手球に伝わって反応してくれる感覚があります。
――もう一つ、アンケートでは「BIZENで音を奏でるようにイメージ通りのショット・プレーをしたい」という回答もありました。
肥田:あ、はい(笑)。BIZENを使っていると「ああ、今すごく気持ちよく撞けたなぁ」という瞬間があるんです。その瞬間がずっと続くといいな、またあの感覚を味わいたいな……そんな願望を込めた回答です。私は安定感のあるプレイヤーではないので、なかなか思い通りになることはないんですけど(笑)。それでも、あの気持ち良い瞬間を再現できるようになりたい。そう思わせてくれるタップです。
――以前は豚革タップをお使いだったとのこと。牛革のBIZENとはやはり違いがありますか?
肥田:初めのうちは正直「牛革タップってシビアなんだな」と感じました。例えば、自分が撞きミスをすると、BIZENはダイレクトにそれが出る。そこに少し戸惑いも感じてたんですけど、BIZENの記事を見た時に、苫野さんが『万人受けするようなタップではないと思います』とおっしゃっていて。「すごく正直なメーカーだなぁ」と感心してしまいました。ミスはミスとして出る。でも逆に、ちゃんと撞けた時は本当に素晴らしいショットができますし、その時の快感はすごいものがあります。今はBIZENのキャラクターに慣れましたし、とても気に入っています。
――PBA新シーズン、BIZENとともに戦うのが楽しみですね。
肥田:はい。ADAM JAPANさんからシャフトを多めにご提供いただいていますので、3本ぐらいBIZENを付けて韓国に持って行く予定です。BIZENはメンテナンスが楽で、持ちが良いのも特徴です。私は普段、BIZENを付けたら初めの1週間ぐらいはRを整えながら撞きますが、安定してきたらほぼ何もしません。そして毎日たくさん撞いても2ヶ月ぐらいは余裕で性能を維持してくれるので、シャフトを3本ぐらい持っていけば、もし3~4ヶ月ぐらい日本に帰って来られなくても問題ないと思います。
――ここからはPBAについてお聞きします。挑戦2年目の昨シーズンは、個人成績はLPBA年間4位まで上昇しました。
肥田:昨シーズン印象深いことと言えば、やっぱりLPBA第3戦で初優勝できたことです(※優勝時インタビューはこちら)。その後も調子は悪くはなかったんですけど、成績はそんなに上がらなかったですね。チームリーグの方は、チーム(『SKレンタカー』)は8チーム中7位と下位の成績でしたし、シーズンを通して私のパフォーマンスが安定していませんでした。今シーズンはこれまでとは違う取り組み方をしたいと思っています。
――具体的には?
肥田:もっと自分らしく、自分のままでプレーすることが大事なのかなと思っています。過去2シーズン、周りのアドバイスを聞きすぎてしまったかなと思うところがあって、それによって自分本来の良さやスタイルが出せなかった場面もあったと思うので。
――キャプテンのカンドンコン(姜東窮)をはじめ、チームにはレベルの高い方がたくさんおられますね。
肥田:そうなんです。皆の言うことが正しいということもわかっています。でも、それで自分の良さが薄れてパフォーマンスが低下してしまっては本末転倒だと思うので……難しいところですね。それに関連してもう一つ、シーズンが始まるとどうしてもメンタル面が不安定になりがちなので、そこも改善していきたいです。
――チームリーグ全体でも日本人は肥田プロお一人でしたし、何かとご苦労もあるかと思います。
肥田:アドバイスの話と同じで、私が周りに合わせようとしすぎていた部分があったかなと思うので、今年はもう少し自分のペースで活動できたらなと思います。今はもうコロナも収まってきて、日本との行き来もしやすくなっているので、日本に帰って来られる時は日本で過ごしても良いと思いますし。
――そうですね。
肥田:あとは体力面ですね。PBAのシーズンは長くて試合数も多いので、体力の維持が大事になってきます。私自身、45歳を超えたぐらいから実感していますが、女性は40代後半から筋力の低下が顕著になります。今までストレッチぐらいはしてましたけど、トレーニングはしてませんでした。このシーズンオフからスポーツクラブに通ってます。筋力測定をしてみたら、下半身は問題なかったんですけど、上半身は年齢相応だったので、今は上半身中心にトレーニングを続けています。おかげで球を撞いていても以前より振りやすくなったなと感じるので、韓国に行ってもトレーニングは継続したいと思っています。
――あと2週間でシーズンイン。今の心境は? ワクワクしていますか?
肥田:ワクワクというより、「また始まるんだなぁ」という気持ちです(笑)。始まったらもう怒涛の日々と言いますか、試合して数日休んでまた試合して……の繰り返しで、流れに身を委ねるしかありません。もともと韓国は『パリパリ(急げ!)文化』でもありますし、なにかとせわしない感じがあります。のんびりするのが好きな私にはあんまり合わないです(笑)。
――チームリーグへの参加は3年連続です。だいぶ前に内定していたのですか?
肥田:いえ、公式発表(5月下旬)の少し前でした。正直、昨シーズンはチームに貢献できてたとは言いがたいですし、外される可能性もあると思ってました。そうなっても運良く別チームに入れてもらえたらいいですけど、歳も行ってますし、外国人選手だし、難しいかもしれないなと。そうしたら「今年もメンバーです」と会社(SKレンタカー)から連絡が来たので、ホッとしました。
――SKレンタカーチームのメンバーは昨年と同じですよね。
肥田:正確には昨年から一人減って6人になりました。そして、若い女性プレイヤー(Woo kyung Lee)が、D・サンチェスがいる『SY』というチームに移りました。彼女は間違いなく才能のある選手なのでどこでも活躍できると思います。今季、チームの女性プレイヤーは私とカンジウン(Ji eun Kang)の2人だけです。カンジウンとプレーするのは楽しみですね。彼女は2018年に韓国で開催されていた『WPBL』(アルバモン女子3Cリーグ)の時のチームメイトでもあります。すごく気持ちが強い選手ですし、良い刺激がもらえると思います。
――チームは異なりますが、今シーズンから日本の界文子プロ(Hana Card)と東内那津未プロ(Welcome Savings Bank)がチームリーグ戦に初参加。日本選手が3名になります。
肥田:すごく嬉しいです。2人はきっとチームリーグでもすぐ活躍すると思います。試合が始まったら対戦相手になりますけど、試合会場やホテルなどで顔を合わせる機会は増えるでしょうし、2人の顔を見られると気分が落ち着くと思います。今までチームリーグ戦は7日間開催だったんですけど、今シーズンから9日間になります。いくらチームメイトがいるとはいえ、日本人は私一人だけですし、いつも3日経った頃から息苦しさも感じていました。チームが勝ってたらまだいいんですけど、成績が悪いと気持ちも沈みやすくなります。そんな時に界さんと東内さんの顔を見たり、喋ったりできたらだいぶ楽になるだろうと思います。
――新シーズン、具体的な目標はありますか?
肥田:チームリーグ戦で絶対優勝したいです。今まで「優勝するぞ」と思って撞いたことはないんですけど、会社がメンバーを信じて今季も同じメンバーで行くと決めてくれたので、その期待に応えるためにも優勝を目指してやるしかないと思ってます。昨シーズンの前半はチームのまとまりが欠けていたかなと思いますけど、女子選手のトレードがあったあたりから雰囲気も良くなり一体感が出てきました。負けた試合もぎりぎりのところを落としてしまった試合が多かったので、そこをきちんと抑えられたら今季は十分に優勝を狙えると思います。
――個人戦での目標は? 狙うは2度目の優勝でしょうか。
肥田:はい、もう1回優勝したいです。安定して2位や3位に入り続けるより、1回の優勝が大事だと思っています。過去2シーズンの悪かったところを反省して、強い気持ちで、そして自分らしく挑みたいですね。
(了)
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