〈BD〉I氏のビリヤードメモラビリア秘宝館【vol17:ビリヤードの古書・明治&大正期編】

 

古今東西の稀少なビリヤードアイテムを

多数所蔵している

「ビリヤード珍品コレクター」の

I氏(あいし)

 

今回ご紹介いただくのは

「ビリヤードの古書」です。

 

明治・大正期にビリヤードが

日本国内に広がって行くにつれて

手引書・指南書を中心とした

日本語のビリヤード書籍も

刊行されるようになりました。

 

今回はそんな「ビリヤードの古書」を

前編・後編、2回に分けて紹介します。

 

まずは前編として

「明治&大正期編」をどうぞ。

 

…………

 

I氏・記:

 

ビリヤードをこよなく愛する皆様、

こんにちは。

 

「ビリヤードの古書」は、I氏にとって

是非とも取り組みたかったジャンルです。

 

この秘宝館シリーズ第1回

自己紹介で書いたように、

I氏のコレクションのスタートは、

たまたま見つけた古いビリヤードの

本だった……という理由もありますが、

ビリヤードの古いもの・変なものを

特にこだわって蒐集している立場としては、

古い本は最高のコレクション対象なのです。

 

一般に著作物は、自費出版などでなければ

その情報は古いものでも

データベース化されていますので、

自分が持っていない本のタイトルや著者名、

出版年などを簡単に検索することができます。

 

いつの日か、日本国内で今までに

出版されたビリヤード関連の書籍を

すべて集めたい……とI氏は目論んでいますが、

古本市場になかなか出てこない

希少本もありますので、

その実現はなかなか難しいでしょうね(涙)。

 

I氏宅のビリヤード関連の本棚です。他にもいろいろ蔵書があります
I氏宅のビリヤード関連の本棚です。他にもいろいろ蔵書があります

 

そこで今回は、ビリヤードに関する

古い本を2回に分けてご紹介していきます。

 

まずは明治・大正期に出版されたものの

中から厳選した逸品を解説します。

 

…………

 

◆① 『弄玉集』(ろうぎょくしゅう。日本最初のビリヤード解説書) 

 

明治12年(1879年)6月初版、48ページ、宇津木信夫 譯、内外兵事新聞局

 

 

この本は、

わが国最初のビリヤード解説書です。

 

ただ、「譯」(訳)とあるように、

もともとはアメリカのビリヤード書籍を

日本語訳したものです。

 

この本の装丁は、古い和書によく見られる

「袋綴(ふくろとじ)」とよばれるもので、

糸で本全体をまとめています。

 

また、厚紙のような材質から出来ている

カバー状のもので包まれています。

 

その内容は、現在のスヌーカーのような

テーブルで4つのボールを使ってプレイされる

「American Four-Ball Billiards」

(アメリカ式四つ球)という種目について、

ビリヤードの基本を紹介しています。

 

アメリカの著名なビリヤード史家である

マイク・シェーモス(Mike Shamos)氏に

よれば、このゲームはアメリカでは

1870年代ごろまで広く流行していたものです。

 

スヌーカーのテーブルで3つのボールを

使ってプレイされる

「イングリッシュビリヤード」

という競技がありますが、

それから派生した種目のようです。

 

文明開化を迎えた日本では、

欧米各国のビリヤード競技が

輸入されたようで、明治初期は

特にこのゲームが愛好されていたようです

(※ マイク・シェーモス氏による

この競技の解説については、

たとえばこのサイトをご参照ください)

 

ちなみに「弄玉」(ろうぎょく)とは、

この本の翻訳者である宇津木信夫氏が

【billiards】に対応する日本語として

採用した用語のようです

(※玉突とか撞球といった用語は、

この頃はまだ一般的ではなかったようです) 。

 

他にも、現在使われているビリヤード用語が

確定していなかったようで、

例えば手球(cue ball)を「棒球」、

ボールの上側を突くこと

(follow shot)を「随行突」、

下側を突くこと(draw shot)を「力突」

としています。

 

…………

 

◆② 『西洋遊戯 玉つき指南』(日本で3番目?のビリヤード解説書)

 

明治20年(1887年)7月初版、36ページ、小田錦江 訳、平澤鶴山 筆記、 船井弘文堂

 

 

この本はI氏が知る限り、日本で3番目に

出版されたビリヤード解説書です

(※上述の『弄玉集』が出版された後、

明治19年〈1886年〉に『欧米玉突指南』

という本が発行されたようです) 。

 

この本の内容も『弄玉集』と同じく

American Four-Ball Billiardsに関する

アメリカの解説書を翻訳したものです。

 

この本ではbilliardsのことを「球つき」

または「撞球」という表現にしていますが、

ボールの上側を突くことは「随撞」、

下側を突くことは「勢撞」としていて、

専門用語の表記にまだまだ“揺れ”が見られます。

 

…………

 

◆③ 『增補日用 西洋料理法 附 支那料理 及 玉突指南』

 

明治28年(1895年)6月初版、254ページ、杉本新藏 著、大倉書店

 

書名からお分かりのように、

当時の西洋料理のレシピ、食材、

調理器具などを紹介している本ですが、

巻末に付録としてキャロムビリヤードの

簡単な解説が載せられています。

 

なぜ料理本にビリヤードの内容が……?

という感じですが、西洋料理とビリヤードは

どちらも欧米舶来のハイカラな文化と

考えられていたのでしょうか。

 

あるいは西洋料理店とビリヤード場を一緒に

経営していた方が多かったのでしょうか……

I氏にとっても謎です。

 

なお、西洋料理とビリヤードを1冊に

まとめて紹介している書籍は、

この本以外にも刊行されています。

 

I氏所有のこの本は、画像のように

ネズミ?に大きくかじられた跡があって

コンディションはよくないのですが、

貴重な1冊と思われます。

 

…………

 

◆④ 『玉突術』

 

明治33年(1900年)2月初版、159ページ、三宅鐵骨 著、博文館

 

 

明治の中期~後期になると、

日本国内のビリヤードは

キャロム競技が広く普及してきたようで、

この本でもキャロム(三つ球の

フリーゲーム)を詳しく解説しています。

 

なお、巻末にはキャロム以外の競技も

多く紹介されていて、今でいう

「ピン倒し」やスヌーカーの解説もあります。

 

ちなみにスヌーカーは

「英吉利嚢付玉臺」

(いぎりすふくろつきたまだい)、

上述のAmerican Four-Ball Billiardsは

「亞米利加四つ玉」(あめりかよつだま)

と説明されています。

 

…………

 

◆⑤ 『新案圖解 玉突術』全(前編)・続編

 

前編:明治36年(1903年)2月初版、226ページ、小川文雄 著、文武堂

後編:明治40年(1907年)9月初版、174ページ、小川文雄 著、文武堂

 

キャロムビリヤードの解説が

かなり詳しく書かれています。

 

前編がかなり売れたようで、

その後に続編も出されました。

 

この時期になるとビリヤードの

専門用語も確立してきていて、

また技術的な解説も詳しいものに

なってきています(※後編には

簡単なシステムの解説もあります)。

  

…………

 

◆⑥ 『撞球秘訣 セリーとマッセー』『タマツキ セリーとマッセー』

 

左側:明治43年(1910年)10月初版、211ページ、玉乃一熊 著 服部書店

右側:大正8年(1919年)9月初版、211ページ、玉乃一熊 著、大鐙閣

 

こちらの2冊は

タイトルや装丁、出版社が異なりますが、

内容はまったく同じものです。

 

この時期は、内容が同じでも

デザインや出版社を変えて

再版されることが多くありました。

 

この2冊の内容は、

タイトルからお分かりのように、

キャロムビリヤードのセリー

(※的球と手球を接近させて

連続得点を狙う技術)と

マッセの解説に特化しています。

 

著者の玉乃一熊氏は、

明治後期から昭和初期にかけて

活躍した名選手で、これ以外にも

多くのビリヤード解説書を著しています。

  

…………

 

◆⑦ 『最近解説 たまつき術』

 

大正2年(1913年)3月初版、424ページ、小和田嘉一 著、博文館

 

 

こちらもキャロムビリヤードの解説書です。

大正から昭和初期にかけて

よく売れた本のようで、

I氏が所有しているものは

昭和4年10月に発行された第35版(!)です。

 

ページ数も多いだけあって、

内容も豊富です。

 

特にセリーの解説は図解も含めて

かなり詳しく説明されています。

 

この本は、I氏がビリヤードを始めた

1990年代初頭に、たまたま神田神保町の

古書店で見つけたものです。

 

これをきっかけにビリヤードの

コレクションに目覚めて(?)

しまいましたので、I氏にとっては

珍品コレクターの出発点になったものです。

 

当時はこの本を読めば四つ球が

上達するかな……と考えていましたが、

ほとんど腕は上がらないまま興味は

スリークッションに移ってしまいました……(汗)。

 

…………

 

【前編】はここまで。

近日【後編】をお届けします。

→【後編】はこちら

 

◇ 秘宝館連載 バックナンバーはこちら

 

………… 

 

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