古今東西の稀少なビリヤードアイテムを
多数所蔵している
「ビリヤード珍品コレクター」の
I氏(あいし)。
6月28日の記事、
に続き、後編として
【ビリヤードの古書・昭和期編】を
お届けします。
…………
I氏・記:
ビリヤードをこよなく愛する皆様、
こんにちは。
前回に続いて、今回は昭和に出版された
ビリヤード解説書をご紹介します。
約63年間の昭和の時代は、
戦前・戦後からバブル期まで
いろいろなビリヤード書籍が
出版されてきました。
そんな多くの著作物の中から、
I氏なりに厳選したものをご案内します。
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◆⑧ 『最新撞球術』
昭和9年(1934年)7月初版、564ページ、山田浩二 著、博文館
表紙にあるように、
キャロムビリヤードの四つ球、
ボークライン(カードル)、
スリークッション、曲球について
詳しく解説されています。
著者の山田浩二選手は当時を代表する
日本のプレイヤーの第一人者です。
大正から昭和初期に
アメリカやヨーロッパに出向き、
世界最高峰クラスの
ウィリー・ホッペ
(Willie Hoppe)選手、
ウェルカー・コクラン
(Welker Cochran)選手などと
何度も対戦した実績を持つ方です。
山田選手が帰国してから出版された
この本は、内容も豊富で、
約90年たった現在でも古さを
あまり感じさせません(その文章は、
現代人にとっても読みやすいです)。
最終章では欧米への参戦記も含め、
自身のビリヤード人生を振り返っていて、
大変興味深いです。
キャロムを愛好される方が
古書店でこの本を見つけた場合は、
絶対に買われることをお勧めします。
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◆⑨ 『3クッション』
昭和13年(1938年)5月初版、218ページ、松山金嶺 著、三省堂
前述の山田浩二選手の本にあるように、
昭和初期には国内でも
スリークッションという競技の存在は
ある程度知られていたようですが、
その普及には松山金嶺選手の存在が大きいです。
スリークッションはアメリカで
生まれた競技ですが、そのアメリカで
武者修行をしていた松山金嶺選手が
帰国とともに、その種目を日本に輸入した……
ということはよく知られています。
松山選手がアメリカで得た
スリークッションの知識を惜しむことなく
公開したのがこの本といえます。
スリークッションの歴史や、
特有の配置によるショットの解説に加えて、
「一子相傳(伝)門外不出」として、
さまざまなシステムの紹介をしています。
現在ではよく知られている
ファイブアンドハーフ・システムや
プラストゥ・システムなどの
解説が中心ですが、
当時のプレイヤーにとっては、
手球のコースが計算で求まるというのは
夢のような方法だったのではないかと
推察されます。
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◆⑩ 『入門新書 撞球入門』
昭和33年(1958年)2月初版、223ページ、桂マサ子 著、川津書店
日本を代表する女性プレイヤーとして
知られる桂マサ子選手は
何冊か解説書を出していますが、
こちらはそのうちの1冊です。
内容はキャロムビリヤード(四つ球)の
全般的な解説で、桂選手本人が
実演をしている写真がいろいろ
載せられています。
巻末には質問や実施指導の案内もあり、
自身の『桂撞球場』(※現在はありません)
まで来ていただくか、
手紙で問い合わせてほしい……とのことです。
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◆⑪ 『撞球』
昭和33年(1958年)4月初版、189ページ、天田章 著、虹有社
キャロムビリヤードの基本的な解説書です。
女性モデルのプレイ姿のスナップ写真が
表紙などにあり、いかにも
「昭和レトロ」的な雰囲気があります。
著者の天田章氏は昭和初期から
戦後にかけて活躍された名選手で、
昭和13年(1938年)に行われた
第1回全日本スリークッション選手権では
準優勝に輝いています。
…………
◆⑫ 『ハイ・ビリヤード』
昭和47年(1972年)発行、68ページ、高木正治 著、鶴書房
四つ球の解説が書かれていますが、
本というよりは冊子のような印刷物で、
サイズはかなり小さいです
(約9.1cm×12.9cm) 。
詳しい出版データや値段が書かれて
いませんので、無料で配布されて
いたものかもしれません。
著者の高木正治選手は当時を代表する
トップクラスの四つ球プレイヤーで、
全日本四つ球選手権で何度も優勝された方です。
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◆⑬ 『入門 ポケット・ビリヤード』
昭和49年(1974年)9月初版、310ページ、藤間一男 著、文研出版
日本のプール(ポケット・ビリヤード)の
普及に尽力された
藤間一男選手による本です。
従来のビリヤード解説書は
キャロム競技の内容がほとんどでしたが、
この本はプールに限定した内容を
非常に詳しく解説しています。
当時のプール選手からは「藤間本」と
呼ばれたバイブル的名著といえます。
その後、平成の時代になって
(株)BABジャパンから復刻版が
『ポケット・ビリヤード大全』
として発刊されています。
…………
◆⑭ 『NHK趣味講座 ビリヤード入門 テキスト』
昭和62年(1987年)9月発行、127ページ、講師:小林伸明、日本放送出版協会
1986年に公開された
映画『ハスラー2』による
ビリヤード・ブームのさなか、
NHKの教育テレビ(Eテレ)でも
ビリヤードの番組がオンエアされました。
こちらはその『ビリヤード入門』の
テキストです。
番組では“神様を破った男”である
故・小林伸明プロ(JPBF)が講師を担当し、
プール(ポケット)は長矢賢治プロ(JPBF)、
四つ球は町田正プロ(JPBF)、
スヌーカーは吉田博選手が出演して
プレイを実践しています。
こちらの本は教育番組のテキストとはいえ、
内容はかなり詳細です。
特にスリークッションのシステム解説では、
ファイブアンドハーフやプラストゥといった
基本的なシステムに加えて、
ダブルレールや切り返し、
クロスバウンド(通称バタバタ)の
システム解説もあります。
当時の初心者からすれば、かなり内容が
濃かったのではないかと思われます。
(了)
…………
【ビリヤードの古書・昭和期編】は
ここまで。
I氏にはいずれまた別のアイテムを
紹介していただきます。
◇ 秘宝館連載 バックナンバーはこちらへ
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