〈BD〉【再掲】映画『たまつきの夢』、本日7月15日(土)より渋谷ユーロスペースにて劇場公開。監督・田口敬太さんに聞く「ビリヤードの魅力」

 

※7月15日追記:

渋谷ユーロスペース・スクリーン1にて

毎日20:45〜(1日1回上映)。

当日〜数日先までオンラインでも

チケットを購入できます。

http://www.eurospace.co.jp/

 

公開初日からしばらくの間、

毎日「上映後舞台挨拶イベント」が

予定されています

(※上掲の田口監督のTwitter内、

4枚目の画像をご覧ください)。

 

…………

 

〜以下、7月6日の記事の再掲です〜

 

ビリヤードをテーマにした

日本映画がもうすぐ公開されます。

 

『たまつきの夢』。

7月15日(土)より

渋谷ユーロスペース(渋谷)にて劇場公開。

 

“ニンゲンは、遊ぶドウブツだ”

 

“大戦前夜、屋敷で暮らす女、撞球(ビリヤード)世界を夢見る男、昭和モダンを生きた若者たち”

 

という惹句の通り、

 

第二次大戦の足音がすぐそこに迫る中、

時代の閉塞や不穏を感じつつも、

限られた娯楽に生の実感と夢を

見出す若者たちを描いています。

 

BDは公開に先駆けて試写を見ましたが、

古色蒼然たる撞球場に始まり、

ボール・テーブルといった道具、

そして四つ玉のプレー姿や玉の音も

美しくノスタルジックに収められていて、

昭和撞球の空気と、刹那的で儚い

物語世界に深く浸ることができました。

 

1980年代生まれの監督・田口敬太さんが、

どうしてこの時代とビリヤードに着目し、

映画を作ったのか。

本稿の終わりのインタビューで

そのあたりを聞いています。

 

…………

 

 

映画『たまつきの夢』

(2022/日本/61min/スタンダード/カラー/DCP)

 

7月15日(土)よりユーロスペースにて劇場公開! 他全国順次公開

特別鑑賞券1,100円(税込)劇場窓口にて販売中。

当日一般1,500円(税込)。

学生・シニア・会員1,200円(税込)

 

公式Twitter:@tamayume2023

公式Instagram:tamayume2023

 

【あらすじ】

第二次世界大戦前夜の日本。主人公のきし乃は妾として軍需工場経営者で地主の熊野の邸宅で暮らしている。そんな中、戦地の北京から弟の戦死の知らせが届き恋人と心中を図る。自殺しようと山中に足を踏み入れたところ、浅次郎という男に出会う。きし乃は浅次郎に亡くなった弟の面影を重ねる。当時流行していた結核を患っている浅次郎は兵役免除となり人目につかないように暮らしている。同じく結核で亡くなった妻と始めた撞球場(ビリヤード場)は長引く戦争で風紀を乱すという理由から警察の取締の対象となっている。それでも浅次郎には夢があった。ビリヤードの世界チャンピオンになること。浅次郎の夢の話を聞いたきし乃は自分の夢を浅次郎に伝えようと、一緒に熊野邸に忍び込むが……。

 

【イントロダクション】

舞台は昭和初期の蓄音機から音楽が流れる撞球(ビリヤード)場。屋敷の中で暮らす女と撞球世界を夢見る男が出会い、自由を求め、行動する儚い物語。主人公は、主演映画『男の優しさは全部下心なんですって』を皮切りに映画、ドラマへの出演が続く辻󠄀千恵、本作では透明感ある自然な演技で存在感が際立つ。『彼女はひとり』で話題となった金井浩人が撞球の世界チャンピオンを目指す青年を演じる。『グッドバイ、バッドマガジンズ』の山口大地、『由宇子の天秤』の木原勝利、『Vtuber 渚』の佐藤睦ら話題作へ出演するキャスト陣が戦前の市井の人々を演じ映画に彩りを加えている。監督は『ナグラチームが解散する日』で長編映画デビューし、2019、2022年と特集上映が組まれた田口敬太監督の待望の劇場公開長編映画第2作目。監督自身の祖父の記憶をモチーフに、極力台詞を排した人物の視線を用いて、純度の高い恋愛映画として時代を超えた男女の感情を繊細に描いた。この映画のために再録された寺尾紗穂の『ねえ、彗星』が入江陽編曲により戦前の昭和歌謡曲として生まれ変わり、現代に響く。

 

…………

 

最後に監督・田口敬太さんの

インタビューをお届けします。

 

監督・田口敬太さん
監督・田口敬太さん

 

――『たまつきの夢』というタイトルは語感も字面も素晴らしく、作品を観終わった後もすっと胸に残ります。このタイトルに込めた思いを教えてください。

                                            

田口:タイトルの『たまつきの夢』は、この映画を企画した一番最初の段階で決めていました。自分にとっては自然に頭の中に出てきたタイトルなので特別な思いはないのですが、これまで作ってきた他の映画でもまず最初にタイトルが頭の中に浮かんで、そこから試行錯誤しながら物語や映画のディテールを作っていくことが多いです。

 

――改めて、なぜビリヤードを題材にしようと思ったのか教えてください。

 

田口:2019年頃、祖父の記憶をテーマに映画を作りたいと思ったことがきっかけです。祖父から色々な話を聞いていく中で、父親に連れられて子供の頃にビリヤード場に遊びに行ったことがあるという話がありました。岡山県の津山市という小さな町なのですが、まず戦前にビリヤードがあったんだということに驚きました。その後、調べていくと明治から昭和初期にかけて四つ玉が娯楽として流行していたという事を知りました。太平洋戦争に入ると、外国の映画やダンスなどの娯楽が禁止されたことはよく知られていますが、ビリヤードもまた風紀を乱すという理由で取締・摘発を受けていた歴史があると知り、これを題材に映画を作ろうと決めました。

 

――劇中の『撞球場』は実在するビリヤード場なのでしょうか。どのようにしてあそこを見付けたのですか?

 

田口:実際に映画を撮影するとなった段階で、セットを組む予算もないので、撮影ができそうな場所を探しました。インターネットで見つけた口コミの記事から、群馬県の下仁田町に今は営業していない撞球場が残っていると知り、現地まで行き、一目見て、すぐに「ここで映画を撮りたい」と思いました。その後、所有者の方を探して使用許可をいただいたのですが、長い年月空き家になっていたので、そのまま撮影をすることはできませんでした。まずは掃除から始めて、美術の山下(修侍)さんや地元の方々にもご協力いただき、扉の建て付けを直したり、襖や障子の張り替え、畳の取り替えなどを行い、撮影できるように修繕しました。

 

――浅次郎役の金井浩人さんをはじめとするキャストの皆さんや田口監督は、ビリヤードの経験はありましたか? 劇中ではしっかりとしたフォームで撞いておられましたが、技術指導を受けたりトレーニングをしたりしたのでしょうか?

 

田口:浅次郎役の金井さんはオーディションで決まったのですが、ビリヤード経験はありませんでした。私もビリヤードは遊びでナインボールをやったことがあるぐらいで、ほとんど素人です。最初は四つ玉のルールもわからない状態でした。そこで、金井さんと一緒に西荻窪の『ビリヤード山崎』の店主である平山道子さんに、四つ玉のルールや撞き方など習いに行きました。金井さんはその後、自主練習という形で、新大久保にある『Billiards KOBAYASHI -BRIGHT-』などで四つ玉の練習を重ねていました。撮影時にはほぼ失敗することなく、こちらが思い描いていたショットを撮影することができました。また私自身は、平山さんから四つ玉の技術だけでなく、ビリヤードの歴史や当時の雰囲気など色々なお話を聞かせていただきました。それは脚本を書く上でとても参考になりました。

 

――ビリヤードシーンを撮る際、または編集する際に、何か意識していたことはありますか?

 

田口:『たまつきの夢』の主題歌は寺尾紗穂さんの『ねえ、彗星』という曲で、劇中のレコードからも流れてくる重要な曲ですが、今回映画を作る際に考えていたことは、ビリヤード台を宇宙に見立てて、その台の上を行き交う球がまるで宇宙を彷徨う彗星のようなイメージの映画にできないかということでした。また、四つ玉のルールをどこまで描くべきかということは脚本の段階で悩みました。脚本上は「得点がこうなって、次にこうなって、最後は……」と詳細に書いていたんですが、最終的にはルールや戦況のゆくえよりも、物語の人物の心に寄り添うような映画にするべきと考えて撮影、編集をしました。実際にどんな映画になっているかは是非劇場で観ていただければと思います。

 

――制作途中で改めて感じたビリヤードの魅力や面白さなどはありましたか?

 

田口:映画を作るにあたって色々な方に取材していく中で、ビリヤードの世界の奥深さを知りました。下仁田町の撞球場に残されていた『たまつき術』という大正時代~昭和初期にかけて発行されたベストセラーの解説書を読んだのですが、「ビリヤードは競技であると同時に研究として極めることができるものなのだ」と書かれていて、なるほどと思いました。どこをどう撞いたら球がどう動くかということが理論的にも研究されている。私は大学で物理を専攻していたので、ビリヤードの技術は理論的な面では物理に通じる面白さがあると感じました。一方、ここ一番の勝負どころでは、技術よりも精神面の強さが何より大事だということがビリヤードの面白いところだと思います。そして、ビリヤードは競技であると同時に娯楽であり、ビリヤードを通じて様々な人に出会えることが一番の魅力だと思います。

 

――『たまつきの夢』は渋谷ユーロスペースで劇場公開されますが、今後他の映画館での上映予定や他メディア展開の予定はありますか?

 

田口:ユーロスペースで公開後、全国の映画館でも上映したいと考えています。ありがたいことにいくつかの映画館からは「上映をしたい」との声をいただいております。自主配給宣伝の小さな映画ではありますが、いずれ全国各地の映画館で公開できるように、まずユーロスペースでの上映を成功させられるようにプロモーションに力を入れて行きます。

 

――最後に、ビリヤードファンに向けて『たまつきの夢』の見どころを教えていただけますか?

 

田口:『たまつきの夢』は戦争という影が忍び寄る時代を舞台にしていますが、今を生きる私たちにも共通する普遍的な希望や夢について描いた映画です。あまり難しく考えず映画に没入して楽しんでいただけると嬉しいです。昭和期の四つ玉を知っている世代にとっては懐かしい映画、知らない世代の方にとってはこんなビリヤードの世界もあったんだと新たな発見のある映画になっているのではないかと思います。映画を観て気になったら、キャロム台(中台)のあるビリヤード場で四つ玉で遊んでみてください!

 

(了)

 

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