東の果て=極東の国=日本を意味する
「Far East」を名に冠した
国産キューブランド、
(ファーイーストキューズ)。
先日の第1弾記事では、
「最新キュー」を紹介しました。
第2弾となる今回は製作現場を探訪し、
同ブランドの成り立ちや特色を
スタッフの皆様に聞きました。
…………
Far East Cuesの工場があるのは
埼玉県入間市。
企業の社屋・工場・物流倉庫などが
立ち並ぶ地域の一区画に、
2階建ての工場があります。
1FがFar East Cues工場で、
2Fが『ミヤデラホール』
(ビリヤードスペース。
次の第3弾記事で紹介)。
工場内では、代表の猿山さんをはじめ、
涌井さん、大木さんの
3名のスタッフがそれぞれの持ち場で
忙しく手を動かしていました。
室内は広く、複数の工作機械や
作業台が余裕を持って配置されています。
Far East Cuesの創業は2018年春。
当初は入間市内の別の場所に
工場がありましたが、
手狭になったために2021年に
この場所に移転しました。
…………
Far East Cuesでは、
キューには必須の北米産メイプルから
国産の神代木(古代の埋れ木)まで、
材木を潤沢にストックしています。
2枚目の画像は最近仕入れたばかり
だというスポルテッドメイプル。
3枚目の画像は、
2Fの『ミヤデラホール』内にある
様々な銘木の板材。
インテリアのように並べられていますが、
これもキューの材料です。
…………
木材保管庫内も見せていただきました。
たくさんのバット材・シャフト材・
ハギ材(ベニア)・インレイパーツなどが
出番を待っています。
Far East Cuesの特色の一つは、
華麗で精緻な「本ハギ」。
「本竹」「クロス竹」「剣」などの
ハギを彩る鮮やかな色板も揃っています。
…………
ハギ作り工程の途中のキュー達。
2枚目の画像は「子持ち本竹」モデル。
どのハギも、趣がある巧みな色使いに
「和」のテイストを感じます。
5枚目の画像は、ハギを組んで
圧着固定している様子です。
…………
こちらは塗装&乾燥の工程のキュー達。
完成までもう少しです。
3枚目の画像の「鳥海山」とは、
神代木を用いたキューに付けられる、
広い意味でのシリーズ名です
(※山形県の鳥海山は
東北を代表する名山であり、
付近一帯は神代木の産地でもあります)。
特に韓国では、
メイドインジャパンだとわかる銘が
販売促進の一環として求められるので、
これを付けているのだとか。
…………
ひと通り工場を見せていただいた後、
Far East Cuesのブランド史と
キュー作りの理念をお聞きしました。
Far East Cuesは、
大手国産キューメーカーに所属していた
猿山代表が独立して立ち上げたブランド。
少し後に、同じメーカーにいた
同僚である涌井さんと大木さんも
Far East Cuesに加わりました。
3人それぞれが約20年の経験を有する
キュー作りのスペシャリストです。
「極東の国・日本から、伝統と新機軸を融合させたカスタムメイドキューを、広く世界へ発信していきたい」
そんな思いを込めて、
“Far East Cues”という名を掲げました。
現在はポケットキューにも
より力を入れている
Far East Cuesですが、
設立当初はキャロムキューが
製作の中心でした。
猿山:キャロム大国である韓国はマーケットが非常に大きいですし、日本のキュー、特にハギの入ったキューが好まれる素地がありました。現地の販売代理店とも繋がりがありましたし、僕らは前からキャロムキューを作り慣れていたので、まずはキャロムキューを中心に作って行こうと。
涌井:代表の猿山がハギを作れることはとても大きかったです。韓国でもベトナムでも本竹やクロス竹といった長物のハギが重宝されています。それが作れるのが弊社の売りでもありますし、自然とキャロムキューがメインになりました。
大木:韓国でハギのキューが人気だというのは作る側として日々感じています。ある時、うちのキューの中である特定のモデルのオーダーが大きく増えたことがあるのですが、おかげで一時期は毎日たくさんトメハギを作っていた記憶があります。
創立時から一定数のオーダーがあり、
新興ブランドとしてはまずまずの
船出を迎えたFar East Cuesですが、
そこから今に至るまで
決して順風満帆だった訳ではありません。
新参者であるがゆえに、
時に海外の販売代理店の
厳しい目にもさらされてきました。
涌井:当時から製品のクオリティには自信を持っていましたが、実績のない駆け出しのメーカーだったということもあるでしょう、韓国の代理店にはだいぶ細かくチェックされました。要はダメ出しです(笑)。一時期はどうしたら解決できるかを3人でさんざん話し合っていました。
猿山:すぐ対応できたこともあれば、時間のかかることもありました。その繰り返しの中で作り方がどんどんアップデートされてきて、今では以前の作り方からはだいぶ変わりました。もう向こうのチェック水準はクリアできています。ほんと鍛えられた感じがします(笑)。その過程で培ったノウハウはキャロムキューだけでなく、ポケットキューの製作にも活きています。
いわゆる「カスタムキュー」
ブランドであるFar East Cues。
製作するキューのほとんどは、
販売代理店あるいは個人が
ベースとなるハギのタイプを選び、
デザインや仕様を指定してから
製作が始まります
(※同種のデザインの色違いや
材料違いのキューが同時に作られ、
Far East Cues自社サイトなどで
販売されることもあります)。
手仕事の工程が多いこともあり、
月産本数の平均は約15本。
これまでに作ってきたキューの数は
「900本ぐらいだろう」とのこと。
ハギ入りモデルの平均価格帯は、
キャロムキューが45万円~50万円で、
ポケットキューはそれよりやや高くなります
(工程がキャロムキューより多いため)。
プロダクト(量産)メーカーのキューと
比べると高いと感じられるでしょう。
しかし、プロダクトメーカーでは
なかなか手掛けられないような
ワンアンドオンリーのデザイン・
仕様のキューが作れるのは
カスタムメイドの強みです。
猿山:当初から「Far Eastならでは」と感じていただけるような個性のあるキューを作ることを意識してきました。もちろんお客様のニーズを形にすることがまず優先されますが、その範囲内で他社にはないハギや色合いを積極的に表現したいと思っていますし、それができるのがうちの強みだと思います。「メイドインジャパン」を感じられる雰囲気で、もっとハギの可能性を追求したり、新しい材料を使ったり、今までに見たことのないようなハギとインレイの組み合わせを編み出して、これまでにないキューの表現を創りたいと常に考えています。
そんなFar East Cuesが、
今後の展望の大きなポイントとして挙げるのが、
「よりポケットキューも浸透させたい」
ということ。
以前から、そして現在も、
Far Eastのポケットキューを
愛用しているプレイヤーは
プロ・アマ問わず少なからずいますが、
より多くの人に使ってほしいと
願っています。
少し大げさですが、それはすなわち、
韓国と違いポケットプレイヤーの
割合が高い日本市場への
“5年越しの本格進出”も
意味しているように感じられます。
涌井:キャロムキューを多く作ってきたのは事実ですし、「キャロム専門メーカー」と思っておられる方がいることも理解しています。ですが、弊社スタッフは皆、昔からポケットキューも数多く作り、ノウハウを培ってきており、自信を持って送り出しています。弊社のポケットキューを使って全国タイトルを獲ったアマチュアプレイヤーも複数名おられますし、他のユーザーの方々からもご好評いただいております。カスタムキューと聞くと敷居が高いイメージのある方もいらっしゃると思いますが、弊社は材料費や製作費を考えると比較的抑えた価格でお出ししていると思いますので、『Far Eastのポケットキュー』も検討していただけると嬉しいです。
猿山:僕個人的には若い世代にこそカスタムキューを手に取ってもらいたいと思っています。プロダクトキューとは異なる世界や楽しみ方があるということを若い方々に知ってもらえると、ビリヤードキューの業界がより豊かに、より広がりがあるものになると思っています。そのためにも、Far Eastらしさをしっかり感じられるカスタムキューを、多くの方の手の届くような価格でお届けしたいですね。
(了)
近日「Vol.3 ミヤデラホール」を
お届けします。
◇ Vol.1記事(最新キュー)はこちら
◇ Far East Cuesサイト&SNS
公式サイト:https://fareastcues.com/
WEBストア:https://fareastcues.stores.jp/
…………
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