〈BD〉「自分が思ってたよりもこの大会で優勝したかったんだなって」――『MEZZ 京都レディースオープン』優勝・河原千尋の談話

 

先週末の

第1回 MEZZ 京都レディースオープン』で

優勝した河原千尋の談話をお届けします。

 

大会2日後に取材をしました。

 

河原プロは今週日曜日に愛知で行われる

JPBA西日本男子プロツアー

グランプリウエスト第4戦』に参加。

 

その後、オーストリアに向かい、18日から

10ボール女子世界選手権』に出場します。

 

…………

 

 

――記念すべき第1回大会のチャンピオンになりました。

 

河原:試合中、『1st MEZZ KYOTO LADIES OPEN』と書かれたボードを眺めて「第1回かぁ。初代チャンピオン、なりたいなぁ」と思いながら撞いてました。MEZZプロとして勝てて嬉しいですし、初代なのも嬉しいですけど、あの素晴らしい会場で最後まで撞けたことも嬉しいです。

 

――ヒューリックホール京都、いかがでしたか?

 

河原:観客席に少し座らせていただいたんですけど、すごく試合が見やすく感じました。すぐ外のガーデンには多くのブースやビリヤード体験コーナーもあって、一般の方も含めて多くの人達がワイワイ楽しんでいる様子が、中で試合をしている私にも聞こえてきました。楽しい雰囲気の大会になって良かったです。

 

――特設会場のテーブルコンディションにはすぐ適応できましたか?

 

河原:アメリカ(『ミシガンオープン』。3位)から帰って来たばかりで、向こうの特設会場の新ラシャの感覚が残っている状態だったこともあって、違和感なく試合に入って行けたと思います。ブレイク以外は(笑)。

 

――ブレイクは最後まで掴めず?

 

河原:最後まで迷いながらやってましたねぇ。それ以外は……、もともと私は特設会場の新ラシャのコンディションは好きな方というか、慣れてる方だと思ってますし、特設会場は選手全員が同じような条件(誰にとっても初めての状態)でテーブルに向かうので、その方がやりやすく感じます。

 

――今回4試合とも、河原プロの強みである正確なショットと安定感ある試合運びが見られたように思います。ご自身の感触としては?

 

河原:もちろん良い面もあったんですけど、悪い面も結構出ちゃったなという印象なので、(自己評価は)半々という感じですね。いつも優勝する時は、大会全体を振り返って「どの試合も結構良かったな」という感想になることが多いんですけど、今回は自分で想像していたほどの手応えはなかった感じです。「なんでだろう」と自分でも考えてみたんですけど……、

 

――なんででしょう。

 

河原:ベスト16からの4試合全て、ショットクロック(時間制限)があったからかな。早く歩いたり早くジャッジしたりと、なんでも早くしなきゃいけないですよね。ベスト16とベスト8の間は1時間ぐらい休憩できましたけど、それ以降はずっと試合が続いていたので、だんだんと疲れを感じていました。それで頭が回ってない時があったり、判断が甘くなってミスをしてしまっていたと思います。グッと入らないといけないところで入りきれなくていいかげんな部分が出てしまったなと。なので今回は優勝はできたんですけど反省点や改善点も見付かりました。

 

――とはいえ、どの試合も上がりのラックはしっかり取り切っていて勝負強さを感じました。

 

河原:たしかに最後マスワリで終わった試合が多かったですね。でも、それは意識してなかったです。ブレイクが良くなかったんで、取り出しでセーフティをすることになってもいいから、ブレイクスクラッチとイリーガルだけは絶対避けようと。とりあえず手球を厚い目に1番に当てて、1番を回して来るイメージ。それで取り出しが見えたらいいなと思ってました。ブレイクでしっかりボールをコントロールして、取り出しを作ってのマスワリであればナイスだったなって思えるんですけど、今回は偶然が重なって良い形になった感じです。

 

――1日を通して精神的には良い状態だったのでしょうか?

 

河原:常に落ち着いていたと思います。あのコンディション、あの環境であれば、皆が力を発揮してレベルの高い試合になるだろうなと思ってましたし、皆が行き切れる実力を持っているので自分がノーチャンスで終わる展開もありえるなと想像できてました。ベスト8(vs 青木知枝)がそうでしたね。相手が序盤ずっとミスなく入れていたので、「このまま行かれることもあるな」と。仮にそうなっても納得できる心境だったので、あんまり気負ってはいなかったです。逆に自分が行き切れる可能性もあるだろうし、嫌なプレッシャーや悪いイメージはなかったです。

 

――決勝戦(vs 小西さみあ)は最後まで競り合いになり、5-5で迎えた第11ラック、相手が8番をミスしました。そこから河原プロが取り切りとマスワリで上がりました(7-5)。

 

河原:あの8番は回って来たことに驚きもありましたけど、「チャンス来たな」と割と冷静な感じで向かって行けました。めちゃくちゃ自信のある球かと言われたらそんなことはなくて、失敗することも全然ありえる球でした。いつもの決め事や注意点を意識して撞いたんですけど、ちょっとギリギリな入り方をしたので「入ってくれて良かった」という気持ちでした。

 

――最後のマスワリも気負うことなく?

 

河原:あのコンディションであの配置なら「マスワリしなきゃいけないな」と思ってました。丁寧に撞けばおそらく大丈夫だろうという自信もありました。

 

――ゲームボールを入れた瞬間、全方位に向けて手を振ったりガッツポーズを見せてくれました。

 

河原:あの瞬間に気付きました。たぶん自分が思ってたよりもこの大会で優勝したかったんだなって。あの時いきなり実感が湧いてきて、「噛みしめてるわ、優勝」と思いながら、自分の中で時が止まってた感覚がありました。自分では覚えてないんですけど、周りから「長かったね」って言われてちょっと恥ずかしかったです(笑)。

 

 

――京都レディースの1週間前の『ミシガンオープン』についても教えてください。3位という結果をどう受け止めていますか?

 

河原:大会を通して終始良い内容でプレーできて、今の全力は出せたなと思いますし、出せればそれなりに戦えるんだという自信も付きました。

 

――準決勝(vs ケリー・フィッシャー)はエキサイティングな試合でした。河原プロご自身は楽しめましたか?

 

河原:楽しんでたし、めちゃくちゃ集中もしてたし、心の状態も内容もすごく良かったですね。「これで負けたらしょうがない」「勝てるなら今日かもしれないし、負けるとしたらその原因は何になるんだろう」なんてことも考えてました。

 

――それはかなり良い状態ですね。

 

河原:めちゃくちゃ良かったです。あのイベント(『プレデターUSプロビリヤードシリーズ』)のTVテーブルで撞くのは初めてだったし、TVテーブルだけショットクロック(30秒)があるのでかなりテンパるかなと思ったんですけど、よく対応できた方だなと思ってます。30秒であの内容を撞けるなら成長してるなって思えました。

 

――4点先取 × 2セット先取というフォーマットも初めてでしたか?

 

河原:初めてでした。自分の考え方次第で良くも捉えられるし、悪くも捉えられるフォーマットだと思います。どっちにも捉えられるなら私は絶対に良い方に考えますね。ショートゲームの2セットマッチなので格上の選手とも勝負になるし、1-1のフルセットに持ち込んでシュートアウトさえ外さなかったら格上に勝てる。そんなふうに良い方にだけ考えてました。

 

――テーブル(特設会場のプレデター社のテーブル)にも合わせられましたか?

 

河原:だいぶ対応できていたと思います。もっとしけってたり、クッションの出(出方)が速くなったりしたらどうなるかわからないですけど、今回は転び(球の転がり)とクッションの出が良い状態で撞きやすかったです。この先もあのコンディションで撞けるなら、日頃から球の入れ方とかをもっと研究して練習しておけばより上手く対応できると思うし、さらにシュート率を上げられるんじゃないかと思います。

 

――ほぼ同じテーブル環境で行われる2週間後の『10ボール女子世界選手権』(10月18日~。オーストリア)が楽しみですね。

 

河原:そうですね。昨年(2022年。河原プロは9位タイ)は結構コンディションが難しく感じられました。今年も昨年と同じ会場なので、どれだけコンディションに対応できるかという心配はあるんですけど、テーブル・ボール・ラックとかはミシガンオープンと同じで、フォーマットが少し変わるだけなので、今の自分は変えずに、ミシガンで見付かった課題に取り組んで準備します。本番では自分に期待しすぎずに全力を出すだけです。その結果として前回より上、ベスト8以上に行たら良いなと思います。

 

――わかりました。最後に応援してくれた方へのメッセージを。

 

河原:MEZZ 京都レディースオープンの会場で観戦してくださった方、ライブ配信を見てくださったビリヤードファンの皆様、日頃より応援してくださっている皆様、ありがとうございます。そして、京都レディースオープンの実現に向けて尽力されていた京都の皆様と、大会メインスポンサーのMEZZ様など協賛・協力してくださった方々にも感謝しています。大会実行委員会の方々やスタッフの皆様もありがとうございました。皆様のおかげですごく快適に試合ができました。素晴らしい大会を創り、運営してくださった皆様に感謝しています。来年またヒューリックホールでプレーできることを楽しみにしています。

 

(了)

 

Chihiro Kawahara

1985年1月5日生 

JPBA39期生

JPBA女子年間ランキング1位・9回

(2010年、2011年、2013年、2014年、2015年、2016年、2017年、2018年、2019年)

『ジャパンオープン』優勝2回(2013年、2015年)

『全日本女子プロツアー』優勝11回

『関西オープン』優勝6回

『東海グランプリ』優勝4回

『大阪クイーンズオープン』優勝4回

(※前身の『全日本女子ナインボールオープン』優勝3回(3連覇))

『セントラルレディースオープン』優勝2回

『九州レディースオープン』優勝1回

『北陸オープン』優勝3回

『関東レディースオープン』優勝3回

『全日本選手権』準優勝3回

2023年『MEZZ 京都レディースオープン』優勝

アジアンインドアゲームズ銀メダル2回、銅メダル1回

2015年『女子9ボール世界選手権』4位

2016年『アムウェイカップ』3位

2016年『女子9ボール世界選手権』準優勝

2023年『ミシガンオープン女子』3位

その他、優勝・入賞多数

『アンセーズ』(大阪)所属

使用キューはEXCEED & MEZZ

使用タップは

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