〈BD〉「シーズン8開始! ICCS 2023日記・後編」――Detective “K” season8 episode03 

 

※2023 ICCS レポート by K

前編

中編

後編(本稿)

 

 

私の名はDetective K。

ビリヤードキューの調査を引き受ける探偵だ。

 

『インターナショナル・キュー・コレクターズ・ショー』

(ICCS)の後編。

 

ICCS 2023・イン・オクラホマシティ。

 

1分たりとも気が抜けなかった最終日の

一般公開、そして表彰式の様子だ。

 

******

 

◇ 9月9日:最終日

 

Part1:コレクターズ・ミーティング

 

1枚目:オクラホマの朝日はデカイ

2枚目:コレクターズ・ミーティング。キューメーカーは参加厳禁

 

 

ICCSの朝は2日目も早い。

 

9時半、キューコレクターのみの

ミーティング開始。

 

メインの議題は、

「コレクターズ・チョイス賞」の選定。

 

昨日展示された、各キューメーカーが

1本ずつ自ら選んで展示したキューの中から、

コレクターによる投票を行い、

過半数を得票したキューが受賞する。

 

しかし、夜遅くまで飲んだり

玉を撞いたりしていたコレクター達が、

昨日の事など覚えているはずがない(苦笑)。

 

そこでオレがノートPCを取り出し、

昨日撮影の画像を表示。

 

コレクターズ・チョイスの13本。どれが誰の作品か分かればエキスパート
コレクターズ・チョイスの13本。どれが誰の作品か分かればエキスパート

 

画像確認後、投票開始。

 

ここで協力願ったのが酔爺。

燃料抜き、即ち酒が入っていない

状態における酔爺の実務能力は高い。

集計はスムーズに進んだ。

 

投票1回目で過半数を獲得した作品はなく、

得票上位3本に絞り再投票。

それでも過半数を得たキューはなく、

最後は2本で決戦投票の結果、

僅差で受賞作が決定した。

 

この結果は、夜の表彰式まで

絶対口外しないのが掟。

 

たとえ受賞したキューメーカーに対しても

事前に「おめでとう」などと

言ってはいけない。

 

コレクターとしての矜持を保つこと、

秘密を共有することで絆を深めるのだ。

 

そして、今回はこのミーティングの場で

特別にケースメーカー、JBケースの

ジョン・バートンがケース開発秘話を披露。

 

JBキューケース開発秘話をプレゼンするジョン・バートン
JBキューケース開発秘話をプレゼンするジョン・バートン

 

キューをしっかり保護すると同時に、

フタが開いた状態でさかさまにしても落ちず、

バット・シャフトの区別なく柔軟に

収納できるインナー、さらに多種多様、

かつ個性的なデザインが特徴のケースだ。

 

しかも彼は、人情に厚い性格の

持ち主であることが、夕方判明する。

 

******

 

Part2:一般公開 

 

ICCS会場はコレクターの夢が詰まっている
ICCS会場はコレクターの夢が詰まっている

 

本日は一般公開ゆえ、

午後1時の開場に遅刻は許されない。

 

ミーティング終了後、各自昼食を

手早く済ませ準備にとりかかる。

 

ちなみにオレが選んだ名物オクラホマ

BBQソースのハンバーガーは甘酸っぱく、

今一つの味。まぁ、どうでもよいことだ。

 

さて、今回の展示キューメーカーは13名。

 

1枚目:アーサー――Arthur Queue(ドイツ)

2枚目:ビーズリー――Beasley Custom Cues(初参加)

3枚目:リチャード・ブラック――Richard Black Custom Cues

 

1枚目:エディ・コーエン――Eddie Cohen Cues

2枚目:カポーン――Capone Custom Cues(初参加)

3枚目:マイク・ダービン――Mike Durbin Custom Cues

 

1枚目:エクシード――EXCEED Cues(日本)

2枚目:ボブ・オーウェン――Bob Owen Custom Cues(初参加)

3枚目:ヴァイガス――Vigus Cues(初参加)

 

1枚目:シェルビー――Shelby Custom Cues(初参加)

2枚目:マクウォーター――McWorter Custom Cues

3枚目:pfdスタジオ――pfd Studios

 

1枚目:地元メーカーのオット――Ott Custom Cues(初参加)

2枚目:JBケース――JB Custom Cases

 

 

さて、UKコーポレーション代表・大原氏と

酔爺とオレは、

「ICCS警備隊」を仰せつかった。

 

メーカー・コレクターが1本ずつ持ち寄り

「夢のコレクション」を形成する

「グランド・コレクション」の監視だ。

 

1枚目:ICCS警備隊として見張っていたグランド・コレクション

2枚目:グランド・コレクションに群がる人々

 

 

各ブースは所有者が責任を負うが、

一般投票向けに離れたテーブルで

展示されるキューは野放しになる。

 

そこで日本人ならカラテや

カンフー使いに違いないと誤解され(笑)、

かつヒマそうな我々に白羽の矢が立った訳だ。

 

まぁ、キューケース持ち込みNG、

かつ出入り口にはガチの武装警備員が

配置されており、戦闘モードに入る

リスクは小さい。

 

ところが事前説明不十分で、

開場時「グランド・コレクション」の

キューラックは空っぽ。

これでは一般入場者が投票できない。

 

結局オレが御用聞きに回り、各キューの

展示位置の抽選を行うハメになった。

 

だが、展示本数と出展者数が

どうしても合わない。

 

原因は、オークションにかかる

「スペシャル・コレクション」を

「グランド・コレクション」に回した

キューメーカー、

候補を出さないコレクター、

ドタキャンした出展者を

計算に入れなかったこと。

管理すべき展示本数を把握するまで

約30分浪費した。

 

グランド・コレクションの一部
グランド・コレクションの一部

 

おまけに一般投票の集計も担当させられた。

だが、投票箱がなく急遽小さなザルを用意した。

 

酔爺はこまめにザルから投票用紙を回収、

集計に忙殺されることになった。

すまんな、酔爺。

 

6年ぶりの開催ゆえ運営メンバーが高齢化、

「忘れる力」が強化されているので、

泥縄式の運営は仕方ない。

 

******

 

1枚目:100人以上の入場者でごった返す会場

2枚目:一般入場者でにぎわう会場

 

 

一般入場者は増え続け、会場内は大賑わい。

メーカー・コレクターとも急に忙しくなった。

 

我々もICCS警備隊の任務に加え、

多くのアメリカ人たちから声をかけられる。

 

その中で幸運にも出会ったのが、

1990年代には日本でも知られた

ベテランキューメーカー、ジョン・ガフィ。

本人に会うことはないと思っていたので

うれしい驚きとなった。

 

また、アラスカのキューメーカー、

マイク・ベンダーも、キューは

展示しないものの、駆けつけてくれた。

 

1枚目:会場で出会ったキューメーカー、ジョン・ガフィ(右)、大原氏(中)、松實氏(左)

2枚目:カーセンブロックコレクションをチェックするキューメーカー、マイク・ベンダー

 

 

一方、熱気を帯びてきたのが

「スペシャル・コレクション」の11本を

落札する「サイレントオークション」。

 

昨日めっちゃ怒られた主催者、

ウィル・プラウト氏に最高入札額を確認、

更新されたら応札しなければならない。

 

オレが入札しているのは4本。

シェルビー・ウィリアムズ、

ダグ・ビーズリー、

ラリー・ヴァイガス、

そして、オレが最も力を入れる

エディ・コーエン。

 

だが、同時進行する4本もの

オークションをフォローするのは難しい。

「サイレント」ゆえ、

すぐには最高額が分からないからだ。

 

特にエディ・コーエンは競争が激しく、

7,200ドル……7,300……7,500……

7,700……7,800……。

血沸き肉躍る戦いだ。

 

しかし、ICCS警備隊の任務に

忙殺されているうち、気が付くと

オークション締切りの午後3時を

3分過ぎてしまった。

 

ここでウィル・プラウト氏に確認すると、

エディ・コーエンは

落札できなかったことが判明。

 

「ICCS警備隊をさせておきながら、

そりゃないぜ!」と言っても、

答えは「もう入札終了」とつれない。

 

前夜祭の9ボールでエディ・コーエンに

負けた記憶がよみがえる。

おまけにラリー・ヴァイガスも

さらわれていた。

 

リアルタイムで進行しながら

最高入札額がすぐには分からず、

誰が落札したのかもわからない。

それが「サイレント」の恐ろしさだ。

 

だが、シェルビー・ウィリアムズと

ダグ・ビーズリーの2本を落札。

 

とりあえず爪痕は残せたか……と

立ち尽くすオレに声をかけてきたのは

昨夜、食事を共にしたコレクター、

ブルース・スポーン。

 

「オレが落札した記念に撮影してくれ」

と言われ連れていかれたのは、

ラリー・ヴァイガスのブース。

 

「……オマエか、持って行ったのは!」と

心の中で叫びつつ撮影した。

 

オレが手にするはずだったヴァイガスキューと、ラリー・ヴァイガス(左)、入手したコレクターのラリー・スポーン(右)
オレが手にするはずだったヴァイガスキューと、ラリー・ヴァイガス(左)、入手したコレクターのラリー・スポーン(右)

 

残り時間でキューのエモノを

漁っているうち、午後5時となり終了。

 

ICCS警備隊の仕事は全うし燃え尽きた。

 

ふと振り返ると目に留まったのは、

会場の隅に飾られていた

ICCS創始者のビル・ストラウドと、

2022年に亡くなったビル・シックの肖像。

 

故ビル・ストラウドと故ビル・シックの肖像
故ビル・ストラウドと故ビル・シックの肖像

 

偉大なキューメーカーが

「また良いキューに出会えるよ」と

オレを慰めてくれているように思えた。

 

******

 

Part3:表彰式

 

1枚目:表彰式はまずディナーから始まる。どのテーブルも会話が弾む

2枚目:なぜか真っ先にデザートが置かれるが、最後まで食べてはいけない謎ルール

 

 

撤収作業を済ませ、

午後7時からディナー兼表彰式。

 

まずはキャッシュオンでビールを買って

呑んでいると、隣の席に座っていた

札幌のコレクター、松實氏の所に

息を切らせてやってきたのが、

JBケースのジョン・バートン。

 

松實氏が日本から持参した

大型キューケースのキャスターが

壊れてしまい、困っていたのを、

DIYでソッコー修理して持ってきたのだ。

 

労を惜しまず、ショー終了後の

わずかな時間で対応してくれるとは、

何たる漢(おとこ)だ、ジョン・バートン!

 

ディナーはフルコースだが、

サクッと食べきれる量で味付けも良い。

 

ワインは赤白いくらでも注いでくれるのだが、

呑み過ぎると表彰式に差し障る(笑)。

 

表彰式で渡される盾
表彰式で渡される盾

 

午後8時から表彰式開始。

まずは展示キューコレクターと

キューメーカーに盾が贈られる。

 

さらに本日はICCSの渉外担当、

トム・ワッターズが77歳の誕生日。

サプライズで喜寿を祝った。

 

そして、いよいよ

「コレクターズ・チョイス」賞と

一般投票による

「ピープルズ・チョイス」賞の発表。

 

なんとエディ・コーエンが

「スペシャル・コレクション」に

出展したキューが両賞を独占。

 

1枚目:賞を独占したキューエーカー、エディ・コーエン(右)

2枚目:コーエンキュー

 

 

「昨年亡くなった父親がくれた賞だ。

今、近くで見ていてくれる気がする」

という感動的なスピーチに対する

大きな拍手のなか、

彼のキューを落札できなかったオレは、

「逃がした魚は大きい」と心で泣きつつ、

全てのスケジュールを終了した。

 

******

 

6年ぶりに開催されたICCSは、

細かな問題はともかく

成功だったと言えるだろう。

 

キューが純粋なスポーツ用品に

変貌しつつある2023年。

 

それでも美術品レベルのキューに対する

コレクターの購買意欲はなお高く、

キューメーカーはデザインを進化させている。

 

日本におけるキューへのこだわりは、

いまだにどの国よりも強いとオレは思う。

来年開催されれば、場所がどこであろうと

 

また参加するぜ!

 

参加者全員集合
参加者全員集合

 

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次回から平常営業だ、よろしくなBD!

 

【Kの2023 ICCSレポート3部作】

 

※前編はこちら

※中編はこちら

 

※ともに参加した酔爺のレポートはこちら

 

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