先週末の『GPE-5 in 埼玉WIND』で
今季1勝目を挙げた
栗林達プロの談話をお届けします。
優勝者、しかも国内トップ選手の
談話としては珍しいほどの
内省的な内容だと思いますが、
己を見つめ、もがきながら
進もうとする栗林プロに敬意を払って、
あるがままの「今」を残したいと思います。
…………
――優勝の感想を。
栗林:思うところはいっぱいありますけど、周りの人達が喜んでくれている姿を見て「勝てて良かった」と本当に思います。内容はあまり覚えてないですけど、よくは撞けてなかった方かなと思います。なんとかこなしながら取って行けたという感じでした。
――2日間で6試合しましたが、疲労感は?
栗林:相当疲れましたね。簡単な球でも「外れるかもしれない」と思っていて、毎回それを受け止めて構えに入る。その繰り返しだったのでしんどかったです。
――決勝戦(vs 照屋勝司)は先に相手に4点取られました。
栗林:照屋プロがナイスな球を撞いてたので、正直「届かないだろうな。負けたな」と思ってました。だけど、もし回って来たら、それがどんな状況、どんな球でもレベルアップのための課題だと捉えて撞こうと思って、一つ一つ向き合いながらやってました。それは決勝戦だけじゃなく、2日間、相手や展開関係なく心掛けていました。
――決勝戦の最後、第14ラックは1番から取り切って上がりました。
栗林:取り切れるとは思ってなかったです。普通に見れば難しくない配置だと思いますけど、自分には全てが難球に感じられて、最後まで「外れる」感覚がありました。イメージ・知識・精神力を総動員して必死にやりました。その息苦しさみたいなものは、見ていた方にも伝わっていたと思うんですけど、それも隠さずにやろうと。「今の俺はこんなもんなんです」と。
――あるがままを見せる。
栗林:隠したってしょうがないですから。今の僕はそういう人間でそういう選手だと受け止めて撞くしかない。決勝戦のゲームボールは簡単な球だったけど、あれでも外れるイメージがあったので、ひと呼吸入れてから構えました。自信のなさを受け入れて、1ラック1ラック1球1球、逃げずに構えに入る。それは今回最後まで貫けたと思います。
――昨年の『東海グランプリ』以来約1年ぶりの優勝。「1年に一つは勝ちたい」と思ったりしますか?
栗林:思います。「年に一つは勝たないと」って自分にプレッシャーをかけてましたし、今回も試合の合間には頭によぎってました。でも、試合が始まったら全部消えてました。
――さきほどから出てくる「自信のなさ」という言葉。なぜ、そうなったのですか?
栗林:気持ち的に整っていない部分があるから、ですかね。もっと競技活動に打ち込んでプレイヤーとして振る舞いたい気持ちがあるけど、お店(栗林プロ夫妻が営む東京『KULICKS』)のこととか様々なことがあって、今はそっちに振り切ることはできない。去年今年と何度か国際大会に行き、たくさんの人とキューを交える中で、「このままじゃダメだ。変えて行こう、もっと自分を追い込まなきゃ」とわかっているんですけど、気持ちだけが先走っているというか。
――そうでしたか。
栗林:もちろん以前からそういう意識を持って過ごしてきたつもりだし、色々な視点でボールを眺めて取り組んではいます。そうこうしているうちに「自分」というものがわからなくなってしまって……今、変なビリヤードになっているなという自覚があります。皆からは「やりたいようにやれ」「普段通りで大丈夫だ」と言われますけど、周りの選手達もどんどん上手くなっていってレベルも上がる中で「普段通り」をやるのも難しい。その葛藤や迷いが自分のプレーに出ていると思います。
――自分らしさとは何か、と。
栗林:そうですね。今まであまり意識せずにやっていた自分流のプレースタイルというのを、今は「こうだったはず」と探り探りやっている感覚です。そうすると受け止めたくないようなミスもたくさんするんですけど、「それが今の自分なんだ。俺はこんなもんだ」と向き合うしかない。
――それは苦しいですね……。
栗林:マジでつらいです(苦笑)。でも、僕はなにかと気にするタイプで精神も強くないので、「向き合うこと」を意識しないと逃げてしまうと思う。だから、今はこうするしかない。今回のGPEでは最後まで向き合い続けられました。それは、いつも励ましてくれる周りの人達のおかげでもあるんですけどね。
――「向き合うこと」以外で今大会で自分を褒められる部分とは?
栗林:どこだろう……自分の中で「逆算して考えて行った場合、この球はこうするべき」という部分は、たとえそれが難しいショットであっても腹をくくって選べていたし、それがほぼ全て成功していたと思います。今回は細かいショットや複雑な球を選んだ回数が多かったかなと思います。周りから見ると「なんでそこでそれなの?」というものを選んでたかもしれないですけど、今まで懸命にやってきた得た経験値や知識の中から、自分としてはこれが合っているはずというものを最適なタイミングで選べていたと思います。考え方的にはあれで合ってたんだろうなというところで収穫や発見はありましたね。
――さて、今週末は『北陸オープン』。その後はGPEが2回と『全日本選手権』です。
栗林:もちろん優勝したいですけど、まずは周りの目や評価を気にせずに、自分の精神状態と向き合って、「戦うこと」だけに意識を絞っていきたいです。それは今回優勝する前からやっていることですけど、日頃の練習からもっとしっかり取り組まないといけない。「さりげなくやる」「かっこよく撞く」なんてできません。一生懸命、逃げずに戦う自分を見てもらえたらありがたいです。これが今の僕のスタイルです。
(了)
栗林達 Toru Kuribayashi
JPBA39期生
1982年6月26日生
福井県出身・東京都在住
2004年アマ『球聖』『名人』
2010年『ワールドプールマスターズ』準優勝
2011年&2018年『関西オープン』優勝
2011年『関東オープン』優勝
2014年『兵庫オープン』優勝
2015年『ワールドカップオブプール』3位
2016年『ジャパンオープン』準優勝
2017年&2022年『東海グランプリ』優勝
2018年『ハウステンボス九州オープン』優勝
2018年『北陸オープン』優勝
他、上位入賞多数
GPWでは通算4勝
GPEでは通算17勝
所属:『KULICKS』(東京・墨田区)
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使用キュー:UNIVERSAL
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