今月6日、45歳という若さで
この世を去った台湾の“撞球之子”、
楊清順(Yang Ching-Shun。ヤンチンスン)。
細身の体でサウスウエストキューを
巧みに扱い、美しく整ったプレーフォームと
ストロークから鋭いショットを放つ一方、
どこか儚げで柔和な雰囲気も
まとっていたプレイヤーでした。
日本にもファンが多かった楊清順。
以前、BDに
寄稿してくださった岡﨑智也さんも
そんな“ヤン様”ファンの一人。
この年末年始にじっくり味わいたい
楊清順動画を5本選んでいただきました。
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岡﨑智也・記
初心者のときに他人のプレーに衝撃を受けるという経験はビリヤードプレイヤーなら誰しもあるだろう。やがて衝撃はその人への憧れへと昇華され、自身のビリヤードスタイルに大きな影響を与えることもある。
そんな憧れのプレイヤーが自分にとっては楊清順だった。
ビリヤード歴の浅い自分が初めて動画で楊清順を見たのは2017年のこと。さまざまな試合動画をインターネットで見る機会が増え、直近の動画では飽き足らず時代をさかのぼって昔の動画も見るようになった。行きついた先は2000年代前半。たまたま見た動画に楊清順が映っていた。
そこで見た楊清順の姿に心を惹かれた。お手本のようなフォームから放たれるパワフルなブレイク。まるで生きているかのような手玉の動き。当時使い手の少なかったジャンプショットの名手。
全ての要素が魅力的で美しいと感じた。
試合中の殺気のこもった目。だがテーブルを離れると物憂げな表情を見せ、はたまたミスが出たときには茶目っ気あふれる笑顔。
こうして自分は「ヤン様」の虜になったのであった。
その後ヤン様の試合動画を見漁った。短いテイクバックであれだけ自由自在に球を操れる姿に感動した。
ヤン様に憧れてヤン様が愛用するキューメーカー『サウスウエスト』のキューを買った。
「ヤン様が再び来日したときは目の前で見る!」、そんな自分の願いはかなわなかった。
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ここまでヤン様に対する自分の思いを書き連ねてきたが、楊清順をあまり知らない方に向けて自分が思う「楊清順・おすすめ動画5選」を挙げてみたい。
もちろんヤン様をよく知る方におかれてはさらに良い動画をご存知のことだろう。あくまでも数年間しかヤン様を見てこなかった若輩者の意見としてご容赦いただきたい。
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◇1 2002年『世界選手権』準決勝
<対戦相手:フランシスコ・ブスタマンテ(フィリピン)>
ヤン様が18歳でキャリア初の国際タイトルを獲得した1996年『全日本選手権』。その決勝戦と同じカードとなったこの試合。残念ながら試合の後半はブスタマンテのペースとなってしまったが、中盤のヤン様の連続マスワリは見どころ。もし機会があればフルバージョン(※こちら)の視聴をおすすめする。
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◇2 2020年『台塑盃 全國撞球公開賽』準々決勝
<対戦相手:張榮麟(台湾)>
結果的にキャリア「晩年」という表現になってしまうが、3年前の台湾での試合。先程の動画からフォームやストロークがコンパクトになり、時の流れを感じさせる。ハンデ戦のため、張が14ラック、ヤン様が11ラック先取りという差はあるものの、見るからに穴幅の狭い台で入れまくる姿は昔と変わらない。7歳差の“台湾新旧世代代表対決”を楽しみたい。
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◇3 2007年『ワールドカップオブプール』1回戦
<対戦相手:デンマーク(バーラム・ロトフィー&キャスパー・クリストファセン>
“台湾新旧世代”という点ではこの試合も捨てがたい。国別対抗9ボールペアマッチでこのときペアを組んだのは当時18歳の呉珈慶。パワフルなブレイクや攻撃的なプレースタイルなど似る部分は多く、11歳差にもかかわらず息の合ったプレーを見せている。球を狙う姿はもちろん「クール」の一言に尽きるが、プレーの合間に2人で仲良く談笑する姿は「ギャップ萌え」の域。
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◇4 2009年『ワールドゲームズ』準決勝
<対戦相手:トーステン・ホーマン(ドイツ)>
ヤン様の地元・高雄で開催された『ワールドゲームズ』。11ラック先取となった準決勝の終盤、9-10の1点ビハインドから動画は始まる。熱狂的な地元の声援を受けてプレーする彼の背中にはどれほどの重圧がのしかかっていたのだろうか。最後の9番を撞く場面(その4に収録)は必見。動画は4本に分かれているが時間を忘れて一気見してほしい。
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◇5 2016年『チャレンジマッチinビリヤード&ダーツ211Club』
<対戦相手:アマチュアプレイヤーの皆様>
『ジャパンオープン』参戦のため来日したヤン様が神奈川・茅ヶ崎の『ビリヤード&ダーツ211Club』でチャレンジマッチを行ったときの動画。チャレンジマッチということもあり、やりたい放題のヤン様を見ることができる。仕上がっているブレイク、余裕を感じさせるキュー切れ、激薄カット。試合での姿とはまた違うヤン様を堪能できる。時間があるときにゆっくり見たい一本。
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どれだけ月日が流れようとも初めてあなたを見たときの感動を忘れることはない。
ありがとう、楊清順。
一路好走,撞球之子!
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