2月にラスベガスで行われた
10ボールプロツアー、
プロビリヤードシリーズの
『ラスベガスオープン』。
今年のチャンピオンに輝いたのが、
フィリピンプール史上指折りの
マネープレイヤーと言われ、
トーナメントでも安定して
高い戦績を残している
「バンバン」「The Slayer(殺し屋)」
ことリー・バン・コルテッザ。
『全日本選手権』と
『ジャパンオープン』の
日本2大タイトルも保持。
日本のプールファンにも
人気のプレイヤーです。
陽気でノリが良く、グループ行動が多い
フィリピンプレイヤーの中にあって、
コルテッザは比較的落ち着いた雰囲気で
単独行動を好む人柄。
そして、プールのあらゆる種目を
ハイレベルで撞きこなすスキルと
高いビリヤード脳を持っています。
いまやフィリピンプロの中では
年長者の域(45歳)に入っている
コルテッザに、ラスベガスオープン優勝直後、
K. MORI氏がインタビューをしました。
…………
聞き手:K. MORI (『小さな動きの楽しさ: ビリヤードのメンタルゲームをマスターする』訳者)
語り手:Lee Vann Corteza(以下、LVC)
――『ラスベガスオープン』優勝おめでとうございます。1月の『ダービーシティクラシック』でも良い結果を出していらっしゃいました。ここ数年で何か変えたことはありますか?
LVC:特にないね。昔からのスタイルで撞いてるよ。変えたとすれば、一時期より練習時間が増えたかな。最近は1日5時間ぐらい撞いてるね。
――ドリルなどは?
LVC:やらない。ローテーションだけだね。15ボールのローテーションで手球の動きをメインに練習することがほとんどだ。
――ブレイクの練習は?
LVC:ブレイクは種目によっても違うから、1番のどこにどう当てるかぐらいは試合前に確認しているけど、練習量はそれほど多くはないね。
――明日から『10ボール世界選手権』ですが、対策は?
LVC:実は招待されてないから出られないんだ。今回フィリピンから出ているのはC・ビアド1人だけ(※そのビアドが優勝した)。世界選手権なのにおかしな話だよね。一応キャンセル待ちには入れてもらっているけど、恐らく出られないだろうね。
――今年はアメリカ以外のトーナメントに出る予定はありますか?
LVC:本当はもっと色々な国でプレーしたいんだけど、フィリピン人にとって海外でプレーするのはビザの問題もあって結構大変なんだ。パスポートが日本のように強くないからほとんどの国でビザが必要で、時間もお金もかかる。それもあって、一度アメリカに来たらなるべく他に行かずにアメリカ国内の色々なトーナメントに出るようにしている。でも、今年は日本にも行きたいね。友達もたくさんいるから。高橋さん(1998年9ボール世界チャンピオンの高橋邦彦プロ)もそのうちの一人。彼の名前が世界で広まっていた頃、私はすでに日本に行ってプレーしていたからね。
――あなたのキャリアは相当長いですよね。
LVC:もう今年で45歳になるけど、まだまだ若い人達に負けてないと思うよ(笑)。常にレベルアップを目指して練習しているからね。
――若い頃より練習熱心になっているということでしょうか?
LVC:それはないかな。若い頃は日に10~12時間練習していたけど、今は5時間ぐらいがちょうど良いと思う。あとはフィジカルも鍛えて色々エクササイズもし、睡眠もしっかり取るようにしている。フィジカルは年齢に対して110%のレベルに維持しようとしているんだ。若い頃はビールをたくさん飲んで塩辛い物ばっかり食べていても気にしてなかったけど、最近自分が歳を取ってきていることを実感しているから、余計に気を付けているよ。まだまだ皆に私のプレーを見てもらいたいからね。私はエフレン(・レイズ。フィリピンが生んだ『プールの神様』)とは違って60歳になったらリタイヤしたいな。エフレンはあの歳(現在69歳)でまだ賭け玉で若いプレイヤーと本気の勝負をしているからね、本当にハスラーだよ(笑)。
――フィリピンのプレイヤーは、決して良いとは言えない地元のプレー環境のおかげでプレッシャーに強いと言われていますが、あなたもそう思いますか?
LVC:そう思うね。世界で戦える強い若手がどんどん出て来ているから。
――あなたは緊張に襲われることはないんですか?
LVC:緊張はするよ、人間だもの。問題はその緊張とどう向き合うかだと思う。それは考え方(マインドセット)一つだよ。試合に負けたって命を取られる訳じゃない。私はただ自分のスキルを皆に見せればいいんだって思っているんだ。勝とうが負けようが関係ない。どうプレーしたかだ。
――なるほど。
LVC:フィリピンの若いプレイヤー達は本当に素晴らしいタレントが揃っていてすごく誇らしく思っている。彼らにアドバイスしたことが何度かあるけど、いつも言うのは「もし学校に行っているならきちんと勉強すること。ドラッグには近寄らない。ビリヤードは学校の後で」ということ。ビリヤードプレイヤーとして生活を成り立たせるのは簡単な事じゃない。皆がS・バンボーニングや大井さん(大井直幸)みたいにプレーできるなら良いけど、2番手~3番手グループになってしまうと経済的にも苦しいからね。それでも若いプレイヤー達にはどんどん世界に出てプレーしてもらいたいと思っているよ。
――今まで色々なテーブルで試合をしてきたと思いますが、テーブルコンディションをどうやって確かめていますか?
LVC:決まった角度のカットショットをするのと、2レール、3レールのクッションパターンをいくつか決めているから、それを撞いてクッションからの出方とスピードを見極めて調整していく感じかな。私はスローなテーブルではあまり実力を出せない。速いテーブルの方が自分のストロークには合っていると感じているんだ。もともとあまりハードショットをする方ではないし、スムーズなストロークで手球をコントロールするのが得意だね。
――ヒネリもうまくコントロールしていますよね。どうやっているんですか?
LVC:(ストロークする仕草をしながら)腕の振りとキューのリリースの仕方かな。あとはピンチ(キューのつまみ方・握り方)だね。
――ストロークの終わりにグリップをしっかり握る感じですか?
LVC:そんなに強くはないけどね。キューをリリースした後にピンチ、ちょっと握る感じ。それが速いテーブルでの対処法かな。スローなテーブルではバックスイングも大きく取ってパワーを出さないといけないから、ピンチは違うものになるね。
――どのようなタップが好きですか?
LVC:硬さで言うならソフトからミディアムの間。ソフトなタップを使って1ヶ月ぐらい経つとミディアムからハードぐらいの感じになるから、それをそのまま使っているよ。
――どのくらいの頻度で変えていますか?
LVC:期間は気にしたことないけど、レイヤー(積層タップの層)が残り2枚になるぐらいまでは使ってるよ。プロプレイヤーなのにタップのスポンサーがいないので自費で買ってるんだ。お店に行って「これ2つ」とか言って(笑)。私は日本のタップが好きなので、スポンサーになってもらえるメーカーがあれば嬉しいね。
――『ラスベガスオープン』のライブ配信でコメンテーターがあなたのことを、「過小評価されている(underrated)プレイヤーの一人」だと言ってました。
LVC:いいね、それ。アンダードッグ(伏兵。負けそうな方)でいる方がいいんだ。私はスキルがあって誰と戦っても勝てるのは自分自身でわかっているし、経験もある。相手が油断してくれた方がチャンスは広がるからね(笑)。
――ありがとうございました。日本のファンも楽しみにしていると思うので、機会があればぜひまた日本にもいらしてください。
LVC:ぜひそうしたいね。家族で行って休暇を取りつつチャレンジマッチとかもしたいし、また『ジャパンオープン』や『全日本選手権』にも出たいな。日本には友達もたくさんいるからね。また行ける機会を楽しみにしています。
(了)
Lee Vann Corteza
1979年3月1日生まれ(取材時45歳)
フィリピン・ダバオ出身
2004年『サンミゲルアジアンツアー マニラ』優勝
2006年『全日本選手権』優勝
2007年『フィリピン選手権』優勝
2013年『チャイナオープン』優勝
2013年『ワールドカップオブプール』優勝(with D・オルコロ)
2017年『ワールド14-1』優勝
2018年『ジャパンオープン』優勝
2020年『ダービーシティクラシック 9ボール』優勝
他、優勝・入賞多数
『SEA Games』(東南アジア競技大会)
ビリヤードの部ではフィリピン代表として
金メダル6つ獲得
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