2024/05/21

〈BD〉「最後のブレイクはだいぶ緊張しました」――全日本14-1で2度目の優勝・土方隼斗の談話

19日（日）の

『第52回全日本14-1オープン選手権』で

優勝した土方隼斗の談話をお届けします。

土方プロは2018年大会以来

2度目の14-1制覇。

また、1月の『関西オープン』以来、

2024シーズン2勝目となります。

…………

――優勝の感想を。

土方：『関西オープン』（1月）に続いて、今年2度目のオープン戦優勝ができて嬉しいです。でも、ヘトヘトになりました（笑）。まだまだ14-1は知識不足を感じる場面も多く、すごく脳の力を使いましたし、全然頭が回ってなかった場面もありました。

――決勝日には初めて「タブレットビリヤードクロック」が導入されました（持ち時間一人80分。使い切った場合はそこから1ショット30秒）。

土方：クロックがあった方が絶対に良いですね。もしクロックがなくて、自分の持ち時間に無自覚だったら、もっと長考した場面があったでしょうし、自分も含めてもっと試合時間が長くなっていたかもしれません。特に今回の決勝戦は最後まで競り合う展開だったので、僕も栗林（達）プロも持ち時間が切れるギリギリまで行きましたけど、クロックがあったから時間は認識できてました。クロックがなかったら、使えるだけ時間を使って考えようと思う場面が増えていたでしょうし、終わるのがもっと遅くなっていたと思います。

――9ボールや10ボールとは考えることの多さが違う。

土方：違いますね。どう取り切るのが一番いいんだろうと組み立てから考えるのが14-1。慣れてないと9ボールよりも時間はかかります。そのあたり、やっぱり羅プロ（全日本14-1で優勝5回を誇る羅立文）は思考が早いですね。配置の要所もすぐに見抜いているし、本当に14-1を撞き慣れているなと感じます。

――2日間のご自身のプレー内容は？

土方：良くもなく悪くもなくでした。しっかりやらなければいけない所ではちゃんと集中できていたかなと思います。自分にとって良かったのは、どの試合も最初の方で30点～60点ぐらいのランが出せていたこと。それで多少は相手にプレッシャーをかけられたと思いますし、展開が自分に向いてくれて先行したまま勝てた試合が多かったです。

――決勝戦は大接戦になりました。

土方：序盤、栗林プロのミスから僕が先行して、30点、18点、41点とランが出て、そのまま上がれそうな雰囲気があったのにキーボール（90点目）をミスしました。そこから栗林プロがナイスショットも出しながら追い上げて来たので「さすがだな」と。最後の勝負際はお互いにかなり疲れていて頭も回らなくなって、普段ならしないような選択をしてしまったところがあったと思います。それで互いに行き切れなかったですね。

――最後まで結末が予想できませんでした。

土方：僕がミスしたあの90点目はイージーだったし、ああいう球を飛ばすと大抵まくられますよね。あそこで負ける覚悟もしてました。その後、もう1回チャンスが来て僕が93点まで行きましたけど、ブレイクでラックを割れなかった。故意ファウルとセーフティを挟んで、栗林プロがナイスバンクからいい感じで取り始めたので、これは厳しいかなと。

――栗林プロは97点目のコンビをミス。そこから土方プロが8点撞いて上がりましたが、途中でラックをまたぎました。

土方：そう、ラックをまたがなきゃいけないのに、ブレイクボールに出来る球がない配置だったので……もうあそこは頭フル回転でした。悩むだけ悩んで最終的に手球を6番に当てて自分でブレイクボールを作ることにして。あの試合では初めてと言っていいぐらい狙った通りにブレイクボールが作れました。

――最後のブレイクは理想的な当たり方をしたんじゃないでしょうか。撞点は下でしたか？

土方：右下でした。だいぶ緊張しましたね、あのブレイクは。上の撞点の方がブレイクボールのシュートのイメージは良かったんですけど、手球がラックに当たって埋もれる可能性があるなと。右下の撞点はシュートのイメージは全く良くなかったけど、入った時に配置が良くなるのはこっちだなと思って右下にしました。結果、最高の形になりましたけど、最後の2球も相当プレッシャーがかかりました（苦笑）。

――これで2度目の14-1タイトルです。

土方：14-1は他の大会と違って明確に優勝をイメージして出ている訳ではないです。いつも「羅プロに当たるまでは負けない」ことを目標にしています（笑）。今回準決勝で羅プロと対戦が決まった時は「よし、最低ノルマはクリアしたな」ぐらいに思ってました。

――やはり羅プロの14-1は違いますか。

土方：組み立てが上手すぎますね。一緒に試合をしていても、撞きながら「羅プロならこんなに悩まないだろうな」「こんな取り方はしないだろうな」と思ってしまいます。14-1で羅プロに勝てるイメージはあまりないですけど、今回の準決勝は、羅プロがブレイクで行き切れる形にならなかったり、あまりツキがなかったので僕が勝てました。

――土方プロは14-1は好きですか？

土方：14-1のゲーム性自体は好きで、アベレージ更新やハイランを目指すのも好きなんですけど、14-1で人と対戦するのはそんなに好きじゃないですね。展開が向かなかったりして、自分がまともに撞けずに一方的に負けたり、理不尽な試合がありえてしまう。それも相手がナイスと言えばナイスなんですけど、どうしても不完全燃焼感が出やすいと思います。それだったらゴルフみたいに個々でスコアを追求する形にした方が納得が行くというか。例えばですけど、一人で5イニング撞いて何点出せるかとかの方が、面白いかどうかは別として、撞く側としては納得が行きやすいと思います。そうするとますます羅プロが勝ちそうですけど（笑）。

――これで今年は早くもオープン戦2勝です。次の目標は？

土方：9月の『8ボール世界選手権』（ニュージーランド）に出られることになったので、近いところでの最大の目標はそれです。他にも海外の試合で出られるものがあれば出たいと思っています。今年はまず春の『10ボール世界選手権』（3月ラスベガス）～『関東オープン』（4月）に調子のピークを持って来ていました。それが終わって一旦リラックスしていたというか、そこまで追い込んだ練習はしてなかったんですが、それが今回のプレーにも少し出ていたと思います。でも、『8ボール世界選手権』への参加が決まったので、もう一度100%の状態で臨めるように今から調整していきます。

（了）

※今年1月『関西オープン』

優勝時の談話はこちら

※2018年全日本14-1、

初優勝時の談話はこちら

Hayato Hijikata

JPBA40期生

1989年3月16日生　東京都出身＆在住

アマ時代の2005年『世界ジュニア』銀メダル

2005年、2013年、2019年、2020年『関東オープン』4勝

2007年『ルカシージュニアワールドテンボール』優勝

2008年、2019年『北海道オープン』2勝