カスタムキューを多数取り扱っている
その代表、大原秀夫氏が所蔵している
キューを見ていく本企画。
（※過去記事はこちら）
今回紹介するのは
『McWorter Custom Cues』
（マクウォーター）です。
代表はジェリー・マクウォーター。
カリフォルニア州のベンチュラを
製作拠点としています。
この連載企画では、以前に3回、
マクウォーターキューを紹介しています。
…………
今回のキューは、
2023年秋、ジェリー・マクウォーターが
来日した際に携えてきたもの。
2023年製の「ビクトリアンクラウン」
（Victorian Crown）です。
フォアアームもスリーブも
エボニーがベースで、
シンセティックアイボリー（人工象牙）と
シルバートリミング（銀の縁取り）
からなる「クラウン（王冠）」の
インレイが入っています。
マクウォーターキューで
お馴染みのシリアルナンバーは、
白いバットキャップに
目立たない色で入れられています。
今回マクウォーターは同じデザインの
キューを複数本持って来ていました。
これはマクウォーター本人の
プライベートキュー。
日本のビリヤード場を訪れた際に
実際にプレーで使っていたものを、
大原氏が譲り受けました。
大原氏・談：
「このデザイン、
『ビクトリアンクラウン』は、
マクウォーターの
キューラインナップの中では
ベースグレードと言っていいものです。
厳密に言えば、『6剣モデル』が
マクウォーター入門編になると思いますが、
インレイ＋シルバートリミングの
キューで言えばこのあたりが入門編でしょう。
シンプルですが、
一目でマクウォーターだと
繊細で優美なデザインです。
この『一目でわかる』というところが、
一流ブランドの証だと思います。
昨年（2023年）10月、
ジェリーは家族で日本観光に来ました。
ご家族とは別行動の時間が結構あり、
その時彼は球を撞いていました。
彼は私の家（兼事務所）にも泊まって行き、
音楽のこと（※ジェリー・マクウォーターは
プロドラマーで、大原氏はプロベーシスト。
以前よく共演もしていた）や、
キューのことなど、色んな話をしました」
↑大原氏宅に滞在していたジェリー・マクウォーター。大原氏提供
大原氏・談：
「その時私は彼のキューを買うつもりは
なかったんですが、
彼のプライベートキューが気になって
『ちなみにそれはいくらなら
売ってもらえるの？』と聞いてみたところ、
特別にいわゆるお友達価格で
譲ってくれることになりました。
ただし、『キミが使うものだからね！』と（笑）。
そんな訳でこれはNot For Saleです。
さすがに本人が使っていた
シャフトまでは譲ってもらえませんでしたが、
代わりにマクウォーター純正の
ミッドディフレクションシャフトと
ローディフレクションシャフトを
付けてくれました。
ジェリーが言うには、
『近年またよくキューが売れている。
主に中国だ』と。
中国ではかなり前から
マクウォーターっぽいデザインの
安価なプリントキューが人気でした。
今は本物志向になったのだろうと思います。
そして、中国に限った話ではないですが、
『バットだけで購入できないか』
『純正ハイテクシャフトはあるか』
という問い合わせも増えてきたので、
シャフトを複数タイプ作り、
選択制にしているとのことでした。
マクウォーターらしいデザインや
キューメイキングスタイルを貫きながら、
そういったニーズにも対応しているところも、
彼がカスタムキュー業界で生き抜き、
高い評価を得ている理由だと思います。
最近ジェリーは、
毎日ウォーキングを欠かさず、
キュー作り、音楽活動、球撞きに
バランスよく時間を割いているようでした。
体つきもいいし、健康そのもの。
ビリヤードのプレーも別人かというぐらい
良くなっていました。
そんなジェリーが、4月の
『スーパービリヤードエキスポ』で、
キューメーカー殿堂
（ACA＝アメリカンキューメーカーズ
アソシエーションが主宰する
Cue Maker’s Hall Of Fame）
入りを果たしました。
（→ その時の記事はこちら）
表彰セレモニーでのスピーチで、
ジェリーはキュー製作ヒストリーや、
印象深い出来事を語ってくれましたが、
その中で私の名前もコールして
くれたことは非常に光栄でした。
30年前の1994年に、
私が日本で最初にマクウォーターの
公認ディーラーになりました。
そこからビジネスの関係を越えて
友人として長く付き合ってきたジェリーが
キュー界の殿堂入りを果たし、
皆から祝福されていたのは、
自分のことのように嬉しかったです」
（了）
…………
○ UK Corporation連載企画
『カスタムの輝き』バックナンバーはこちら
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