〈BD〉『UKオープン』チャンピオン、ロビー・カピトインタビュー by absolute pool

© WNT 2024 / Taka Wu
© WNT 2024 / Taka Wu

 

先月の『UKオープン』で優勝。

自身初のWNT.(マッチルーム)

メジャータイトルを獲得した

ロビー・カピト。

 

一躍脚光を浴びた若きフィリピン系香港人に、

ビリヤードウェブサイト、

『absolute pool』

(アブソリュートプール)がインタビュー。

→ 原文はこちら

その抄訳をお届けします。

 

なお、カピトは、

現在サウジアラビアで開催中の

『9ボール世界選手権』で

ベスト64に進出しています(6/6現在)。

 

…………

 

© WNT 2024 / Taka Wu
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absolute pool・記:

訳者:K. MORI (『小さな動きの楽しさ: ビリヤードのメンタルゲームをマスターする』訳者)

 

 

【ロビー・カピトが語るUKオープン優勝、レイズカップ参加の望み、そして『香港を世界に知らしめること』】

 

「いつか父さんから受け継いだ強さを証明してみせる。そして、みんなが勝利を祝う時に噛む、あの誰もが欲しがる金メダルを家に持ち帰るんだ」。

 

今年2月、亡き父の誕生日にロビー・カピトはそう誓いました。香港出身の22歳の彼は、その3ヶ月後に自分が『UKオープン』のチャンピオンになり、誰もが欲しがるメジャータイトルを手にするとは、知る由もありませんでした。

 

決勝戦の相手はポーランドのミエスコ・フォルトゥンスキ。カピトは勝利を決める9番ボールを沈めると、天を仰ぎ、こみ上げる涙を抑えながらテーブルに飛び乗って喜びを爆発させました。

 

「亡くなった父のこと、そして勝利までの道のりで重ねてきた努力の全てを思い出しました。チームや家族と喜びを分かち合えた素晴らしい瞬間でもありました」。

 

昨秋、プール界最高峰のトーナメントと名高い『USオープン』でベスト8に進出したカピトは、今回の『UKオープン』ではダークホース的な存在として準決勝に駒を進めました。若い彼にとって、自らの運命を成就させ、メジャーイベントチャンピオンになるための千載一遇のチャンス。彼はそのチャンスを掴み取り、3万ドルの優勝賞金を手にしました。

 

「『UKオープン』に向けて自分のプレーに自信が持てるようになっていました。トレーニングと練習試合のバランスが良く、この大会で勝ち進めるという予感がありました」とカピトは振り返ります。

 

「優勝を確信していたと言えば嘘になりますが、好調を維持し、冷静に試合とショットをこなすことができました。最終的に結果がついてきて、優勝できたことは本当に満足しています」

 

大会前に優勝候補として名前が挙がることはありませんでしたが、決勝戦の当日には、誰もがカピトの話題で持ちきりでした。なぜなら彼は、フェダー・ゴースト(アメリカ。ロシア出身)とジョシュア・フィラー(ドイツ)という、世界で最も優れたプレイヤーと評される2人の強豪相手に、連続で勝利を収めていたからです。

 

カピトは冷静沈着に戦い、2人の強敵を相手に金星を挙げました。どちらの試合でも序盤に4ラックのリードを奪うと、その後はシンプルながらも効果的なセーフティーで彼らの猛反撃をかわしきりました。年齢に似合わぬ落ち着いた試合運びで、間違いなく自分の実力を証明してみせたのです。

 

「フィラーもゴーストもトッププレイヤーであることは間違いありません。彼らに勝てたことは、優勝を目指して最後まで戦い抜くための大きな自信になりました」とカピトは言います。

 

「どちらの試合もどう転んでもおかしくありませんでした。今のプール界がいかに競争が激しくて、厳しい世界であるかを物語っています。同時に、僕の実力がトップレベルに近付いていることの証でもあります。もう以前のように、後手に回って常に追い付くためにプレーしなければならないという気持ちはありません」

 

メジャーイベント初優勝への道のりの中で、唯一物議を醸したのが、ピュース・ラブティスとの準決勝での出来事でした。

 

今年の『ダービーシティクラシック9ボール』準優勝者のラブティスがショットを放とうとしたその瞬間、ちょうどラブティスの視界に入っていたカピトは、緊張のあまりか、椅子を軽く叩いてしまいました。彼は「決して故意的な行為ではなかった」と断固として主張しています。また、対戦相手への配慮も見せ、「ラブティスは本当に紳士的な対応をしてくれましたが、今後はこのようなことが起こらないようにもっと気を付けたいと思います」と付け加えました。

 

2017年『全日本選手権』出場時。BD撮影
2017年『全日本選手権』出場時。BD撮影

 

3歳の時、母親がトイザらスで買ってくれたプラスチック製のプールゲームがきっかけで始まったカピトのキャリア。「その数年後、父が香港のプールホールに連れて行ってくれるようになり、そこから本格的にプールを始めました」。今や彼は、最も将来有望なタレントの一人へと成長しました。

 

『世界ジュニア選手権』のU17とU19のトーナメントで2度の準優勝を果たしたカピトは、17歳で出場した2018年の『9ボール世界選手権』で、ベスト32でエクレント・カチ(アルバニア)に1-7とリードされながらも11-10で逆転勝利を収め、その非凡な才能をいかんなく発揮(ベスト16で大会優勝者のフィラーに敗戦)。

 

その後、メンタル面を強化し、感情をコントロールすることを学んだカピト。彼の成功の秘訣は何だったのでしょうか?

 

「トッププレイヤーと互角に渡り合い、その中に身を置くことができると長年信じてきました。努力を惜しまず、自分に正直であり続け、決して諦めない。ありきたりかもしれませんが、正しいことをしていると分かっていれば、あとは立ち止まることなく学び続けることです」

 

誰も予想していなかったカピトの『UKオープン』優勝は、近年の『アジア大会』でビリヤード競技が採用されていないことを理由に選手への助成金の大幅削減を検討していた香港政府に、再考を促すものとなりました。また、彼は今回の優勝によって10月の『レイズカップ』(今年初開催の欧州vsアジアチーム対抗戦)出場への可能性も高めました。アジアチームの一員になれるかどうかは、カピトにとって大きな関心事です。

 

「特に自分がフィリピン系であることを考えると、考えない訳にはいきません」とカピトは率直に認めます。

 

「『第1回レイズカップ』にぜひ出場したいと思っています。『UKオープン』で優勝したことでランキングが急上昇し、アジアチームメンバー入りという目標が達成可能なものとなりました。もちろん、10月までにもっとランキングポイントを獲得できるチャンスが残されています。僕にできることは全ての試合で全力を尽くし、どこまでランキングを上げられるかを見守ることです」

 

アジアチームの自動選出枠(ランキング枠)3つのうちの1つを獲得できれば、カピトは元世界チャンピオンのカルロ・ビアド(フィリピン)と舞台を共にすることになります。ビアドは、ワイルドカードでの選出が確実視されている選手であり、カピトを正しい道へと導いてくれた人物でもあります。

 

「彼は最高の師匠です」とカピトは笑顔を見せます。

 

「彼は師匠であり、リーダーであり、友人であり、ライバルであり、レジェンドであり、そして何よりも私にとって父親のような存在です。彼と舞台を共にすることができれば、これ以上の喜びはありません。彼がいなければ、今の私はここにいません」

 

現在WNT.プロランキング22位のカピトは、依然として野心を持ち続け、慢心するような素振りは一切見せません。

 

今回の『UKオープン』の栄光は彼にとって大きな転機となり、『レイズカップ』出場など、さらなる目標達成に向けた弾みとなる可能性があります。

 

「今年の主な目標は『レイズカップ』に出場することと、出場する大会でさらに勝ち進むことです」とカピトは明かします。

 

「自分のプレーに自信と余裕を感じられるようになり、好調を維持して、プールの世界で香港を有名にしたいと思っています。また、出場する全ての大会を楽しんで、自分のスタイルを貫き、全力でプレーしたいです」

 

今後カピトに何が待ち受けていようと、香港が生んだこのフィリピン系スター選手は、WNT.時代のメジャーイベントチャンピオンとして歴史に名を刻みました。これまでにそれができたのはほんの一握りのプレイヤーだけです。

 

(了)

 

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