フェダー・ゴーストの
2度目の優勝で幕を下ろした
今年の『9ボール世界選手権』。
参戦した日本人WNT.プロ、
吉岡正登プロから、
開催地のサウジアラビア・ジッダと
大会会場の様子を教えていただきました。
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吉岡正登・記:
サウジアラビアから無事に帰国した吉岡正登です。
応援してくださった皆さん、ありがとうございました。今回、個人的には満足の行く結果は出せませんでしたが、プールの歴史に刻まれるであろう今大会に出場出来たことは、何物にも代え難いプライスレスな経験になりました。僕がジッダで見た光景を皆さんにお届けします。
サウジアラビア第2の都市ジッダに到着。キングアブドゥルアジズ国際空港内には巨大水槽が
今回の空路は関空→アブダビ(UAE)→ジッダ。それぞれ9時間と3時間ほどでした。ヨーロッパに行くよりかは幾分近いので、1フライトが10時間を超えないのは身体的にかなり楽に感じます。
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今回も宿泊費や食費を抑えつつ、海外滞在のストレスを緩和するために、ともに参戦した大井直幸プロとAirbnb(エアビー。民泊)を選択しました。
サウジアラビアは近年観光業にも力を入れていて、個人向けの観光ビザも発行するようになったからなのか、宿泊施設の候補は1,000件を越えていました。その中から空港から車で15分、会場までも車で15分の宿を選択しました。
会場へは毎日車移動になってしまいますが、会場近辺に飲食店やスーパーなどがないのは地図を見て明らかだったので妥当な選択でした。このように初めて行く土地は立地や利便性などが分からないので、似たような地域に滞在した経験を踏まえて大井プロと作戦を立てています。
今回のエアビーは2LDKの2バスルーム付き物件。同程度の間取りの宿の中では価格は中ぐらいでしたが、ホテルに泊まるよりは安いです。
広々としていて満足でしたが、2日目に恐怖が……。僕が使ったシャワールームに蟻が大量発生しまして……封鎖しました(笑)。管理人さんが常にいるので、すぐに駆け付けてくれて虫除けスプレーをまいてくれましたが、あまり効果はなさそうでした。大人になってから虫がてんで苦手になったので、部屋に出るとなかなか堪えます。もっと逞しくならないと。
エアビーの屋上には共用バルコニーがあり、ジッダビューも楽しめましたが、暑すぎて使うことはありませんでした (笑)。
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地元のスーパーにて。はじめの2枚は宿から徒歩3分、一番近い小規模スーパー。ここには食欲が減退するような色のケーキが……。続く2枚は宿から徒歩7分のショッピングモール内にある中規模スーパー。
今回もスーパーで食料を調達し、家で大井シェフに料理を作っていただきました。ただ、ジッダの風土や環境を考えれば納得なんですが、スーパーの食材は野菜も肉も品質は基本的にとても悪かったです。5枚目の画像は少し奮発して買った牛肉(2枚で5千円)ですが、お味は残念で……(汗)。
一度だけ外食することにして、アメリカに良くある『ポパイ』というファーストフード店でチキンを食べましたが、2人で4,000円弱しました。円安も関係するのでしょう、日用品を含めて物価は高く感じました。スタバのコーヒーは800円ぐらいで日本より少し高いです。
イスラム教の戒律上、豚肉は売っていません。となると牛か鶏かになるのですが、鶏肉ならまだまともに食べられるかなと感じました。そして、イスラム教ではお酒もNG。サウジアラビアでは販売されていません。他の中東のイスラムの国、例えばカタールやUAEなどでは外国人向けのホテルなどに限ってお酒を提供しています。しかし、サウジアラビアでは70年前に国王の息子が酒に酔って事件を起こしてからアルコールは完全に禁止になったそう。最近ようやく首都リヤドで解禁し始めているとか。ノンアルコールビールは大規模スーパーには売っていました。
アルコールがないからなのか、どこのスーパーでもスイーツがたくさん売られてました。安くて美味しかったです。
宿近くのショッピングモール内のフードコートとゲームセンター。ビリヤードもありました。
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会場へ向かうUberにて。ちゃんとしたタクシーもある事はありますが、Uberが一番便利です。空港や街中には白タクがわんさかいて、歩いていたら車を横付けされて「タクシー?」と声を掛けられるのはしょっちゅうです。大井プロは空港で白タク運転手にUberの倍以上の金額をふっかけられたそうなので、この類は無視です。
Uberの運転は人によってマチマチですが、たまにすごく荒い人もいます。宿から会場までは荒野を抜ける高速道路みたいな道を走るのですが(2枚目の画像がその車窓)、そこを100km以上出して前の車と数10cmまで接近された時はヒヤヒヤしました。
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会場の『グリーンホール』は総合スポーツ施設内の、大きなスタジアムの隣にあります。屋外には今大会のために特設の「ビリヤード広場」が作られていました。
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会場内観。テーブル16台を設置するにはちょうど良い規模感で、今まで見たマッチルームの大会会場で一番豪華でカッコ良かったです。やはりお金がかかっているのでしょう。いつも通り、前日練習ではプレイヤーにここも開放されました。いつものことながら、マッチルームの会場でプレーする選手にはテーブルレイアウト図は欠かせません(3枚目)。
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選手用ラウンジ兼プラクティスルームの様子。ここにはケータリング(軽食)スペースと練習テーブルが4台ありました。ケータリングを少し味見しましたが、なんだかよく分からない食べ物ばかりでホント「軽食」って感じでした。甘い物が多め。
コーヒーメーカーが使い放題なのは有り難かったです。寒い会場でこれほど温まるものはありません。以前のカタール開催時代の世界選手権の経験から、会場内はかなり冷房を効かせると予想していましたが、想像の斜め上でした。屋外は約40℃ですから、出入りするだけで体調が悪くなります。また、1日を通してみると外気の寒暖差もあり、会場内の温度も一定ではありませんでした。この辺りの寒暖差対策は今後参戦する上でとても重要だと感じました。
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オープニング映像を撮るために外のビリヤード広場へ集められる選手。夕方ですが暑いです。サイドテーブルもビリヤードテーブルを模していましたし、この広場全体も上空から見たらビリヤードテーブルになっていました。芸が細かい。撮影ではドローンも駆使していました。
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会場内でオープニングセレモニーがあり、遂にオープニングマッチ(F・サンチェスルイス vs W・アルバルキ)がスタート。センターステージ(中央の高くなっている所)にサンチェスルイスの姿が見えます(2枚目)。
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TVテーブルは3台あり、その周りはラグジュアリーシートに。TVテーブルはアリーナ席からも観戦できます。
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今回は各テーブル横にスコアを映す巨大モニターが設置されていました。今までは選手がスコアを付けるための小さなタブレットしか置かれてなかったので、会場にいる選手やスタッフはライブスコアサイトを見ていました。
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Day1の大井プロの初戦(vs D・マシオル)。寒さでブルブル震えながら応援しました。
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テーブルはTVテーブル含めて全16台。RASSON社製のMr. Sungテーブルです。ラシャはシモニスのシャークグレー。先月の『UKオープン』のコンディションに比べると、ポケットはコーナーが甘くてサイドが渋く感じました。昨年の『ハノイオープン』もこのテーブルだったんですが、ハノイはもっと湿気てたのでより渋く感じました。でも、今回はそこまでではなかったです。転びは重くて、出しがショートしてる人が多かったです。エアコンの効き具合もマチマチで、少し湿気てる時もあったから、だいたい皆気持ち悪そうにプレーしてました。
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ラックはレフェリーによってバラバラでした。昨日初めてラックしたの? という感じのおじさんばっかりで(笑)。プレイヤーはラックに対してクレーム不可なんですが、S・ペリファノビッチはあまりの酷さに耐えかねたのか、ヘッドレフェリーを呼んでその場で研修をさせてました。
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憧れのセンターステージ。スポットライトを浴びながらここを通ってTTV(メインTVテーブル)で撞きたいです。
今大会を振り返ると、やはり賞金が大きくなると選手の心構えも変わるのか、普段よりもプレーが硬くなる選手も目につきました。番狂せも多かったです。それでも上位に行く選手はやはりブレイクが安定しています。ラックの良し悪しももちろんあるのですが、ブレイク精度を高めないと勝負にならないと感じました。そこをもっと研究して次の『ヨーロピアンオープン』、そして『USオープン』に備えたいと思います。今やこの世界選手権に出場するチャンスはほぼWNT.プロにしかありません。ランキングを少しでも上げてまた来年チャレンジできるように頑張ります!
(了)
※吉岡プロのSNSでも現地情報が発信されています。
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◯ 9ボール世界選手権概要
1990年に創設された
9ボールプールで最も権威あるイベント。
2024年大会が第33回となる。
WPA公認のもと、複数の主催者に
よって開催されてきた。
2021年からはマッチルーム(WNT.)が
再び主催者に。
マッチルームによる大会グレードは
「ブルーリボン」(最上位)。
2024年から10年間サウジアラビアで
開催されることが決まっている。
大会34年の歴史の中で、
奥村健(1994年)、
高橋邦彦(1998年)、
赤狩山幸男(2011年)という
3名の日本人チャンピオンが生まれている。
2024年大会
開催地:サウジアラビア・ジッダ『グリーンホール』
日程:6月3日~8日(6日間)
参加:128名
方式:ダブルイリミネーションラウンド(9ラック先取)
→ 64名シングルトーナメント(11ラック先取。決勝戦は15先)。
勝者ブレイク制(9ボールオンフット、レフェリーラック、ラックシート使用、ブレイクボックス採用)
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◇ 賞金総額:100万ドル=1億5千6百万円
(※2024年5月20日の為替レート)
優勝:約3,900万円
準優勝:約1,560万円
3位タイ:約780万円
5位タイ:約420万円
ベスト16:約230万円
ベスト32:約110万円
ベスト64:約55万円
敗者最終:約31万円
98~128位(負け-負け):約15万円
最多マスワリ連発記録賞:約31万円
優勝賞金約3,900万円は
大会史上最高であり、
現存する9ボール大会での最高額です
(※詳しくはこちらの記事を)。
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◇ 2024 世界選手権最新情報
大会公式サイトの他、
Facebook、X(Twitter)、YouTube、Instagram
もチェックしてください。
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◇ 2024 9ボール世界選手権関連記事
6/9 ゴーストが2度目の優勝
6/8 4強決定! Day5
6/7 大井、17位タイで終了。Day4
6/6 大井、ベスト64進出! Day3
6/4 大井黒星発進、敗者側へ。Day1
6/2 組み合わせ確定
6/1 出場128名確定
5/25 大井直幸と吉岡正登が出場
5/20 プール最高峰の賞金3900万円! 賞金&フォーマット確定
2/13 6月サウジアラビア開催決定 賞金総額1億5千万円×10年契約
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