14日の『東海レディースグランプリ』で
大会2度目の優勝を飾った青木知枝。
大会翌日の談話をお届けします。
2度目の産休からの
復帰2戦目で優勝を飾った青木プロ。
ビリヤード時間の確保には
苦心していますが、そんな生活環境を
言い訳にすることもなく、
前向きに全力で試合に臨んでいることが
言葉の端々から伝わってきます。
ーーーーーー
――2月に第二子が誕生してちょうど5ヶ月後の優勝でした。
青木:あの……、今回試合へ向かいながら「もし優勝できたらお話ししたいな」と思ったことがありまして……。そこからいいですか?
――ぜひ、どうぞ。
青木:今までの取材でBDさんには「普段ほとんど練習できてない」ということをお伝えしてましたけど、「記事では伏せておいてください」と言ってましたよね。でも、もう今回は隠さず出していこうと思いまして。実際、5か月前に次女が生まれて、もともと少なかった練習時間がさらに減りました。今年ビリヤードをした回数は試合を除くと両手で数えられるぐらいです(笑)。
――ビリヤードもそうですが、プロ競技の世界では毎日たくさん練習して当たり前という意識があって、「撞けてない」と言うことには後ろめたさもあると思います。優勝した時も、逆にすぐに負けてしまった時も。
青木:まさに昨年の『ジャパンオープン』で優勝した時はちょっと負い目みたいなものがありました。身近な人達は私が撞けてないことを知ってましたけど、取材とかでは「皆さんが思うよりは撞けてますよ」と言ったりして(笑)。でも、出産・育児をして、ビリヤードとは関係のない仕事もしながらビリヤードもするという生き方と環境を選んだのは自分だし、そのことに全く後悔はない。負けてもそれを言い訳にする気持ちもありません。だから、「もう言っていいじゃん」って。
――いいと思います。
青木:今私の周囲にも、お仕事や家庭のことなどで忙しくされている中で、なんとかビリヤードに時間を割いているという境遇の方が多くおられて。レッスンをする時も、短い時間でどれだけ濃い練習ができるかに焦点を当てています。そんな境遇の方々にも勇気を与えられるような存在になれたらいいなという思いが以前からありました。もちろんこれはたくさん練習することを否定したい訳じゃないです。絶対練習するにこしたことはありません。ただ、こういう向き合い方でも優勝という結果が出せたので、「2人子供がいて仕事もしていて練習時間が限られていてもやれることはあるし、試合でも勝てるんですよ」というのはお伝えしてもいいのかなと思いまして。
――撞くことはできなくても、イメトレだったり、球のことは考えているのですか?
青木:はい、何をしていても合間合間で球のことを考えてます。例えば、今は授乳中に試合動画を見ながら、夫(青木亮二プロ)に「これ、どうするのが正解やったん?」て聞いたり。本当は赤ちゃんの目を見てニコニコしながら授乳するのが良いとされてますけど(笑)。
――少しでも球を撞ける時は何を心掛けていますか?
青木:そこは詳しくはレッスンで教えていることなんですけど、たくさんの球に応用が効くような配置の練習をするようにしています。1回で3つ4つの意味があることをやっていると言えばいいですかね。そして、「試合の場面を想定して練習する」という言葉がありますが、なんとなくでやっている方も多いですよね。私は本気でかなり細かく「あの会場のあのテーブルで、相手はあの人でスコアはこうで……」とイメージして撞いています。正直最近は一人練習はほとんどできてないので、それを相撞き中でも常にやってます。
――わかりました。今大会のこともお聞きしますが、2日間よく撞けたと感じていますか?
青木:はい、全体的にはよく撞けてました。産休からの復帰戦が先月の『全日本女子プロツアー第3戦』(※青木プロは3位)だったんですが、あの試合はテーブルも難しくて、更に決勝日は9オンフットラックでずっと苦しい展開が続いてました。でも、今回は1オンフットでしたし、決勝会場の『ダマデノッチェ』さんのテーブルが撞きやすくて、気持ち良く撞けました。私は以前イベントで呼んでいただいたこともあってダマデノッチェさんの雰囲気をわかってましたし、オーナーさん、スタッフの皆さん、所属の森村雅一プロ、そして常連様にあたたかく迎えていただいてアットホームな気持ちになれました。
――準決勝(vs 河原千尋)はどんな試合でしたか? ライブスコアで推移を見ていて、逆転勝利を収めたことだけはわかりました。
青木:準決勝は途中で心が折れかけました(苦笑)。1ラック目は私がマスワリしたんですけど、そこから9番をぶっ飛ばしたりして5点取られました(1-5)。でも、この試合中に夫が子供たちを会場に連れて来てくれて、タイムアウト中にハグもして。「向かって行く立場の自分が心折れるのは100万年早いぞ」と気合いを入れ直しました。さっき言った「撞けない時もビリヤードのことを考えている」にも通じる話なんですが、私は対戦相手の球やその人の良いところを観察していて、上手いなと感じた撞き方をすぐ「真似してみよう」と思います。河原プロは「そう撞けたら良いな」っていうショットをよくしますよね。それを取り入れる意識でやっていたら自然と集中状態に入って行けて、取り切りからマスワリ3連? 4連?で上がれました。
――決勝戦(vs 谷みいな)は相手に3点先行されましたが、すぐ逆転しました。かなり良い集中状態にあるように感じられました。
青木:準決勝をいい形で逆転勝ちができたことが決勝戦にも大きな影響がありました。「3点ぐらい先に行かれても、9ボールの勝者ブレイクだから落ち着いていれば全然連マスで追い付ける」って思えてました。谷プロも真似したくなる球を撞いてましたし、良い心理状態でしたね。
――谷プロは19歳のルーキープロ。初優勝がかかっていました。
青木:ついに娘でもおかしくないぐらい若いプロと決勝戦を撞く時が来たか……と(笑)。ただ、谷プロは今バリバリ撞けてるし、よく海外戦にも行ってるので、「こっちが向かって行く立場だ」と思ってました。5-3にできる第8ラックを自分の7番ミスから取られた時(4-4)も、冷静に自分のショットを振り返って反省できてましたし、「もうあんなミスはせえへん。チャンスが来たらすぐ取り返す」と思ってました。
――最後、第12ラックの4番からの取り切りはイメージ通りでしたか?
青木:思った通り……ではなかったですね。7番に真っ直ぐにしたくはなかったんですけど真っ直ぐに出ちゃったので、7番から8番はマックスの穴フリで引いて出してます。あれが思った通り撞けたのはキューがよく出てたからだろうなって後で思いました。
――ゲームボールを入れてご家族とハグ。最高の瞬間でしたね。
青木:今回は上の子が「優勝」というものを少しは理解できている様子だったので、一緒に優勝の瞬間を迎える経験ができたのは本当に良かったです。ただ、あの時(2台あるうちの)配信されてない方のカメラに向かって上の子とピースしてしまいまして、映ってなかったのはちょっと残念です(笑)。
――2024年ももう折り返し地点を過ぎましたが、今年後半のテーマや目標とは?
青木:次の『全日本女子プロツアー第4戦 in 佐賀』(7月27日~28日)は、まだ子供2人を任せて泊りがけの遠征には出られないなと思いまして出場を見送りました。なので、次はディフェングチャンピオンとして出る『ジャパンオープン』(9月)です。もともとジャパンオープンで完全復帰しようと考えていたんですけど、一人目の産休の時にしっかり休みすぎて試合勘を取り戻すのに時間がかかってしまったので、今回はちょっとでも早めに取り戻せたらと思って、先月の『全日本女子プロツアー第3戦』と今回の『東海レディース』にエントリーしました。ダメダメだろうと思ったら3位→優勝という結果だったので自分でもちょっと驚いてます。むしろこれでジャパンオープンで「負け―負け」だったらどうしようと思ってます(苦笑)。来月は夏休みで久しぶりにゆっくり帰省するので、夫の両親に娘たちを見てもらって、いつもよりしっかり練習して臨む予定です。
――最後に、応援してくれている方々へ一言。
青木:とにかく日頃から支えてくださっている皆さんには感謝しかありません。スポンサー各社様、お店(『Link』『WIND』)の皆様、ファンの皆様、大会協賛企業の方々、運営スタッフの皆様、そして青木家がお世話になっている皆様、ありがとうございます。今回初めて予選日に長女を会場へ連れて行ったんですが、私の試合中、関西の女子アマの方々とトランプで遊んだり、他の方々もたくさん気にかけてくださって楽しく過ごせたようです。決勝日も、次女は初めての試合会場でしたが、ママプロの大先輩、山内公子プロをはじめたくさんの方にお世話になりました。それに、私が2度目の産休・育休に入ってもスポンサー企業の方々は優しく見守ってくださり、戦線復帰を楽しみにしてくださっていました。他にもたくさんの方々のあたたかいお気持ちやお言葉、サポートがあって試合に出られていますし、私一人では優勝できませんでした。特に子供ができてからそのことを強く感じていますし、感謝の気持ちでいっぱいです。今後も変わらず応援いただければ嬉しいです。よろしくお願いします。
(了)
青木知枝 Chie Aoki
1984年1月29日生
JPBA44期生
愛媛県出身・埼玉県在住
2016年『全日本女子プロツアー第3戦 in 富山リボルバー』優勝
2017年『北陸オープン』優勝
2022年&2024年『東海レディースグランプリ』優勝
2023年『ジャパンオープン』優勝
他、入賞多数あり
使用キューはMUSASHI(ADAM JAPAN)
使用タップはNISHIKIブラックH
所属店:『Link』
スポンサー:ココカラダ、インフィニティバランス
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…………
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