〈BD〉ジュリアン・セラディラ インタビュー。スイス発・日本経由のビリヤードトリップ【前編】

 

2022年にJPBAプロ入りした

ジュリアン・セラディラ。

 

約2年半でプロ公式戦で3勝を挙げ、

昨年からは国際大会にも

精力的に参戦しています。

 

初来日は2015年。

それ以降東京を拠点に

フットワークと日本語力を活かして

国内各地に出掛け、

誰とでも気さくにキューを交え、

球仲間を増やしてきたジュリアン。

 

スイス・バーゼル生まれのジュリアンが

どのようにしてビリヤードに出会い、

9,500km離れた日本にやってきたのか。

 

初めてのロングインタビューで

そのビリヤードライフに迫ります。

まずは前編を。

 

取材協力:3seconds

 

ーーーーーー

 

――ジュリアンのビリヤードライフを聞く機会を楽しみにしていました。早速ですが、ビリヤードとの出会いは?

 

JS:父がアマチュアのキャロムプレイヤーで、知識もセンスもなかったけど(笑)母も遊びでビリヤードをやるのが好きだったので、僕も小さい頃から自然とビリヤードに触れていました。ちゃんとやり始めたのは17歳の時。高校の旅行で泊まった宿にポケットビリヤードのテーブルがあって、友達と遊んだらすごく楽しかったです。

 

――小さい頃からビリヤードに触れていたおかげで、その時上手く撞けた?

 

JS:ある程度は。どう撞けばどう球が動くかはなんとなくわかってました。その時は8ボールをやったのかな。まだ9ボールは知らなかったと思います。その後、その友達と地元・バーゼルのビリヤード場に通うようになりました。友達はしばらくしたら飽きたのか来なくなっちゃって。僕は一人でお店に行って、上手いお客さんと仲良くなって教えてもらったり、一緒に撞いてもらってました。学校が終わったら夜中まで撞いて、土日は開店から閉店までいたり。すっかりハマってましたね(笑)。

 

――競技志向になったきっかけは?

 

JS:これと言うものは特にないんですけど、最初から試合には行ってました。始めて3か月ぐらいで『ユーロツアー』(ヨーロッパ各国からトッププレイヤーが集まる伝統の公式戦。年6、7戦開催)に出ました。

 

――それはすごい。18歳ぐらいで?

 

JS:そう、18歳でした。ボッコボコにされましたよ(笑)。初戦がイギリスのイムラン・マジドで、敗者側はスイスのロナルド・レグリ(ともに国の代表クラスのプレイヤー)。1-8と0-8で終了。でも、良い経験でしたね。プロになろうっていう考えはその時はまだなかったけど、試合は好きでした。

 

――当時はどんなライフプランを描いていたんですか?

 

JS:何がやりたいのかまだわかってなかったですね。大学に行くかどうか悩みましたけど、高校を卒業した後はとりあえずアルバイトをしながらビリヤードをしてました。結局大学には行かなかったです。

 

1枚目:2018年『6レッズスイススヌーカー選手権』(優勝)

2:帽子をかぶってスヌーカーをプレー。オーストリアのクリスマスオープン(ハウストーナメント)。2017年頃

3:2017年『スイスプール選手権(チーム部門)』(優勝)

4:スヌーカーの『BERN OPEN』で優勝。2021年

※全て本人提供

 

 

――日本のことを知ったのはその頃?

 

JS:そうですね。当時僕はスヌーカーもやってたんですけど、通っていたスヌーカークラブにはポケットテーブルが2台あって、そこで撞いていた日本人がいたんです。いつも一人で練習してたんで、僕が声を掛けて仲良くなって一緒に撞いたりしてました。その人と出会ったのが日本という国を意識するようになったきっかけの一つ。もう一つは、ビリヤードを一緒にやりだした高校の友達が、日本のアニメやマンガを好きになって日本語を勉強し始めたんです。僕も小さい頃から語学が好きだったので友達の影響で日本語を学び始めました。その友達はしばらくしたらやっぱり飽きちゃったのか勉強をやめちゃいました。なのに僕はビリヤードも日本語もずっと続けてます、今もね(笑)。

 

――ジュリアンも日本のマンガやアニメは好きですか?

 

JS:もともとそんなに観てなくて、日本語の勉強を始めてから見だした感じです。スイスでもドラゴンボールやワンピースとかの有名どころはTVでやってましたし、好きな人はネットでも観てましたね。

 

――「いつかは日本に行く」という願望もその頃に?

 

JS:はい。僕の場合は日本に行きたくて言葉を勉強したんじゃなくて、先に言葉を学んでいるうちに日本の文化や国について興味が湧いてきたという順番でした。日本語を学び始めて1年半ぐらい経ってから初来日。20歳の時でした(2015年)。バイトで稼いだお金を全てぶっこんで(笑)、3ヶ月かけて北海道から宮崎まで各地を周りました。

 

――今の日本語力を10とすると当時はどのくらい?

 

JS:3~4ぐらいだと思います。日常会話なら困ることはなかったし、結構喋れてたと思いますけど、ナチュラルではなかったですね。発音は前から「日本人っぽいね」って言われることが多かったけど、当時はまだ文法や語彙とかは外国人っぽかったと思います。

 

――それでも、習得が難しいと言われる日本語を学んで1年半で、一人で3ヶ月不自由なく日本旅行ができたのはすごい。

 

JS:もとから環境のおかげもあって(スイス・バーゼルはフランスやドイツと国境を接する多民族都市)、僕の脳みそには4ヶ国語(フランス語、ドイツ語、英語、スペイン語)が入ってますし、語学が好きなので日本語を覚えるのも早かったと思います。複数の言語が使えると、新しい言語を覚える時にも言葉や文法に繋がりが感じられて覚えやすいですしね。

 

――初来日の時ビリヤードもしましたか?

 

JS:たまにやってました。マイキューは持って来てなかったけど、ラウルさん(ラウル・ホベル氏。日本在住のスペイン人アマチュアビリヤードプレイヤー。故人)と出会って、キューを貸してもらってハウストーナメントに出たりしてました。

 

――それ以来何回くらい日本に来ましたか?

 

JS:2年間で4回です。『ジャパンオープン』に出るために来たこともあります(※2017年。その時のBD記事にも登場している)

 

2017年ジャパンオープンに初参戦。BD撮影
2017年ジャパンオープンに初参戦。BD撮影

 

――ジョニー・アーチャー(アメリカのトッププレイヤー)と当たった時ですか? 生で観てました。

 

JS:いや、アーチャーと撞いたのはその翌年ですね(2018年。ベスト128でアーチャーに敗戦)。あれは日本に住み始めた直後です。

 

――どうして日本に住みたいと思ったのですか?

 

JS:う~ん……もちろん日本は良い国だと感じていたし、たくさん気に入ったことがあったからなんですけど、冷静に考えて決めたことじゃなくてもう感情の赴くままでしたよ(笑)。あの頃は日本からスイスに帰ると1週間も経たないうちに日本が恋しくなっていて。

 

――逆ホームシックみたいな。

 

JS:そうそう(笑)。スイスにいる時にネットとかで日本についての記事や動画を目にするだけで「早く日本に戻りたい」って思ってました。20歳から22歳の2年間はスイスで会社員として働いてたんですけど、どうしても日本に行きたくなってしまって仕事を辞めました。それがちょうど6年前(2018年)。22歳の夏に日本に来ました。

 

――それから『JM』(東京都北区)を拠点として日本でアマチュアプレイヤーとして4年活動し、2022年にJPBAプロ入り(当時26歳)。プロになった理由は?

 

JS:日本はスイスよりもビリヤードの環境が良いし、ハウストーナメントからプロ公式戦まで、試合がたくさんある。JPBAプロになったらほぼ全ての試合に出られるし、競技活動中心でやっていけるんじゃないかと思ったからです。本当は日本に住んですぐにでもプロになりたかったですけど、入会規定もあったので少し時間がかかりました(※日本人女性と結婚してからJPBA入りした)。

 

――17歳で本格的にビリヤードを始めてプロテストを受けるまで約8年。その間で「すごく伸びたな」という時期は?

 

JS:単純な成長スピードで言えばやっぱり最初の数年間です。その後も技術力は年々上がってると思います。特にキャロムビリヤードをやり始めて新しい知識が身に付いたので。ただ、強さという意味ではどうだろう……上手くなればなるほど強さが減って行くような感覚も少しありました。昨年海外の試合に出始めてから「上手さと強さのバランスが大事だな」と思うようになりました。

 

――ジュリアンはビリヤードのあらゆる種目をプレーしますが、特に好きなのは? やっぱりプロの試合で撞くことが多い9ボールや10ボールですか?

 

JS:9ボールや10ボールも嫌いではないですけど、「ポケット種目で」と言われたらワンポケットやバンクプールですね。それにスヌーカーも好きだし、キャロムならバンドゲームも好きだし、あとはカイルンも。なんだろう……ちょっと変わっているというか、いろんな知識が問われて頭をたくさん使う種目が好きです。もちろん9ボールや10ボールも技術が必要ですが、それ以上に集中力が求められる種目だと僕は思っています。

 

(了)

 

【前編】はここまで。

近日【後編】をお届けします。

 

→ 【後編】はこちら

 

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