20日の『北陸オープン』男子の部で、
プロキャリア16年目での初優勝を飾った
照屋勝司(てるや かつじ)の
談話をお届けします。
ヒルヒル決着となった決勝戦。
終盤、2回の3番ミスで
上がりそこなったことや、
難球を入れ続けた最後の
取り切りについても聞いています。
※決勝戦の動画はこちらで
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――プロ16年目で遂に初優勝。ゲームボールを入れた瞬間の気持ちは?
照屋:最後の取り切りが完全に入れ繋ぎになって、自分でも取り切れるかどうか最後の最後までわからなかったので、9番を入れた瞬間は嬉しさよりも「取り切れて良かった」「やっと勝てた」という安堵の気持ちの方が大きかったです。優勝の実感はちょっとはあるんですけど、まだ自分でもよくわかってないです(笑)。
――お祝いメッセージも多かったのでは?
照屋:すごかったです。試合直後からたくさん来ていて、返信をしている間に電車が(富山から)東京に着きました(笑)。長いこと連絡を取ってなかった方や沖縄時代にお世話になった方からも届いたのは嬉しかったですね。こんなに応援してもらっていたんだなと。
――準優勝が8回。今回は9度目の正直でした。「優勝」の2文字はずっと意識していましたか?
照屋:お店(神奈川『MECCA Yokohama』)のお客さんにずっと期待や応援をしてもらっていたので意識してました。それが裏目に出てプレッシャーを感じたり、自分で自分を追い込み過ぎていた時もあったかもしれません。
――プロ16年目。ここまで時間がかかると思ってましたか?
照屋:思ってなかったです。プロ入り当初は優勝できるかどうかは全くわからなかったですけど、1年目(2009年)の『GPE-4』で決勝戦に行けて(vs 高橋邦彦)。自分が8-2とリーチをかけてゲームボールも撞いたのに、それを飛ばして結果的にまくられてしまいました(8-9で敗戦)。思えばあれが少しトラウマ的なものになったのかもしれないです。あれ以降も決勝戦に行くたびに、「優勝できたらいいな」と思ってましたけど、妙に意識して大事なところで硬くなったこともありました。
――今回は硬さがなかった?
照屋:はい、そこまで決勝戦を意識することはなかったですね。たぶん決勝日に良い精神状態で撞けていたからだと思います。今まで北陸オープンではほとんど決勝ラウンドに残れてなかったですし、今回の特設会場(JR富山駅新幹線改札前イベントスペース)は完全に初めての場所だったので、印象もイメージも何もない状態で決勝ラウンドに臨んだんですけど、会場が本当に素晴らしくて、ベスト16から準決勝まで気持ち良く撞き続けられました。ずっと集中できていて、すんなり構えてすんなり撞けていた感じです。だから、決勝戦を迎えてもそんな悪いイメージはなかったですね。
――今回プレー面で良かった部分は?
照屋:ブレイクは安定していたと思います。大会(8試合)を通して、ブレイクスクラッチもイリーガルも2、3回ぐらいだったかな。あとは、決勝戦もそうでしたけど、いつもよりもチャンスに恵まれていたと思います。「お、ここで回って来るのか」という場面が多くて、思い切りよく撞けたと思います。
――JR富山駅新幹線改札前イベントスペースはいかがでしたか?
照屋:素晴らしい雰囲気でした。ビリヤードを知らない方もたくさんおられましたけど、9番を入れた時やテーブルの球を全部取り切った時、難しい球を入れた時にはいっぱい拍手をしてくださってテンションが上りました。僕は以前の『北海道オープン』(2014年大会準優勝)などもそうですけど、ああいうオープンスペースで行う試合が得意な気がします。開放感のある会場だとより一層気持ち良く撞ける印象がありますね。
――決勝戦を戦う前の心境は? 相手の羅立文は同期(JPBA43期生)でもあり、以前からよく対戦していて負け越しています。やりづらさは?
照屋:やりづらさはなかったです。ただ、羅プロにチャンスを回してしまうとターンが戻って来ないことが多いですし、そのまま負けてしまうことがあるのは何度も対戦していてわかっているので、その積み重ねで無意識のうちに苦手意識はあったのかもしれないです。僕は僕で「チャンスがあれば行くぞ」とは思っているんですけど、単純にそのチャンスを回してくれることが少ない相手なので。だから、やりづらいとは思ってないですけど、気持ちを上げ切って撞けたこともそんなにないかもしれないです。
――今回は中盤まで照屋プロがリードしていました。
照屋:試合前から「攻め切るしかない」って思ってました。変に妥協して……例えば、まず1回守ってから攻めようみたいな考えは捨てて、攻められる球が来たら基本全て攻めるという気持ちで撞いてました。どう守るかは頭になくてどう攻めるかだけ。相手に撞き番を与えないぐらいの気持ちでやった方が自分も集中しやすいし、上手くやり続けられたら相手にプレッシャーもかけられるだろうと。そんなふうに心を決めてやっていたらリードすることができました。その攻める姿勢は決勝戦だけじゃなくて他の試合もそうでした。やっぱりプロの方たちはセーフティをしてもきれいに返してくるんで。僕の長所である攻めに徹していました。
――終盤、照屋プロは2回、3番をミスして上がりそこねました。
照屋:第13ラックの3番入れスクラッチは……あの選択は間違いではないんですけど、3番を薄めから入れたせいで手球がすーっと転がってしまいました。あれは厚みを狙い切れてなかったです。次の3番ミスは逆押しで4番に出そうとしたんですけど、手球が横にズレて3番が薄く外れました。新ラシャの逆ヒネリは手球がズレやすいのをわかっていながら、楽にポジションしたい気持ちが出てしまった。そもそも選択が良くなかったですね。あそこは少し引くだけにして、4番は逆コーナーや逆サイドでも良かったと思います。
――追い付かれてヒルヒルになった時の心境は?
照屋:それはダメージがデカいですよ(笑)。最後の羅プロのブレイクはきれいに決まって取り出しも良かったんで、さすがに「負けてしまうかも」と思いました。
↑ 照屋プロの最後の取り切りの配置。※動画はこちらで
――最後、相手の2番ジャンプミスから照屋プロが取り切りました。緊張感は?
照屋:半端じゃない緊張感でした。あの2番から4番は、手球が転がるかもとは思っていたけど案の定転がりすぎてしまって、予定とは反対のコーナーに取ることになりました。ただ、切羽詰まった状況ではそういうこともあるとわかっていたので、「撞けるだけまし」だと思ってました。なので、4番は自分でも意外なほどすっと構えられたし、構え直すこともなく撞けました。
――4番を入れて、5番はすごく薄い形になりました。
照屋:4番と5番はものすごいプレッシャーでした。思ったよりも5番が薄くなりすぎたので、一瞬コーナーバンクに行くかどうか迷いました。でも、バンクで行くとアンセ(アンドセーフ。外れても難しい形に残ること)になりそうだなと思って。それはやっぱり気持ち的に守りに入ることになるし、相手に撞かせたくはない。だから、カットで行くしかないと思いました。
――5番→8番はバタバタで出しましたが、あのポジションは想定通り?
照屋:いや、どこに止まるかわからないまま撞いてます。でも、完全に出たとこ勝負で行ったので、むしろ入れだけに集中できました。結果的に8番に対して悪くない所に手球が出てくれたので「これは行けそう」と思ったし、8番もすっと撞けました。もうちょっと手球が手前(テーブル中央寄り)に止まっていたらかなり嫌らしい球になってたと思います。……こう振り返っても最後の取り切りは入れ繋ぎとしか言いようがないですね(笑)。自分でもよく取り切れたなと思います。
――自分のスタイルで撞き切った感覚は?
照屋:それはあります。変に我慢我慢のプレーになるんじゃなくて、攻め続けられたのは良かったなと。今までの決勝戦では、やろうと思ったことをやり切れたことがほとんどなかったので、その意味でも壁を越えられたような気持ちがありますし、その結果やっと優勝できて、つらいところから抜けられたような感覚もあります。もちろん今後のためには今回の内容も振り返らなきゃいけないんですけど、今は「結果オーライ」だったということでとりあえずホッとしています。
――次の目標は?
照屋:早くまた優勝したいです。でも、結果は後から付いてくるものだと思って、自分の得意な攻撃的なスタイルを迷わずやり切る。それを続けていれば自ずとまた優勝に近付けると思います。
――最後に応援してくれた人達へ一言。
照屋:まず、北陸オープンの実行委員会・スタッフ・大会スポンサーの皆様、素晴らしい会場でプレーさせていただき、ありがとうございました。そして、お店(MECCA Yokohama)のお客さん、スポンサーさん、応援してくれている方々、沖縄の皆さん。この16年、ずっと皆さんの応援に感謝しながら試合に出させてもらっていました。皆さんのおかげで良い経験をたくさんさせてもらいましたし、今回やっと優勝することができました。本当にありがとうございました。こうやって優勝の報告ができて嬉しいです。これからも引き続き応援よろしくお願いします。
(了)
Katsuji Teruya
1983年1月11日生
JPBA43期生
沖縄県出身・神奈川県在住
使用キューはMEZZ
スポンサー:MEZZ、MECCA Yokohama、日勝亭
2010年『関東オープン』準優勝
2014年『北海道オープン』準優勝
2024年『北陸オープン』優勝、
他、上位入賞多数
…………
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