『兵庫オープン』はHRC(兵庫ローテーションクラブ)主催のオープン戦です(プロアマ混合)。
大会初日(予選ラウンド)は、加古川市の『ニッケパークタウン』特設会場と、姫路市のビリヤード場『クエッション』を併用し、2日目の決勝ラウンドはニッケパークタウンのみを使用します。全国的に数少ない「特設会場のオープン戦」です。
ビリヤードの大会で言う「特設」はおおまかに言って2種あります。体育館やホールやホテルの大広間など、公共の施設・スペースを借りきって行う大会は、プロアマ合わせて(ポケットとキャロムも合わせて)国内で年間10ぐらいはあるでしょう。
一方、一般の買い物客が行き交うショッピングモールや、デパートの催事スペースなどで行われる大会は非常に少なく(今はここだけ!?)、兵庫オープンは、そのレアな方の特設大会です。そして、参加したプレイヤーからの評価が高いだけでなく、トリックショットショーやビリヤード体験コーナーなど、魅せる・触れる仕掛けが奏効して、一般の方々にも好評を博しています。
今大会は今年(2013年)で11回目で、特設になって4年目。僕はJAPA(アマ連)さんからお誘い頂いて、初めて観に行くことにしました。そうしたら、「せっかくだから出てみては?」と更にお誘いが。え? でも……、いや……、でででで、出ます!(言っちゃった)
ここでB.D.管理人の「僕」のスペックを。
ビリヤード歴11年でクラスはA。公式戦出場経験はゼロ。試合はハウストーナメントのみ30回程度(優勝は一度きり)。最後のハウストーナメントは5年ぐらい前。もちろん特設会場は初。新ラシャで撞くのは4年ぶり。所属店はなく、この3年のビリヤードのプレー頻度は月に1、2度。
…………大丈夫か…………(汗)。
さすがに出発前の5日間は撞きました。そして、10/18、大会前日に新幹線&車で一路加古川へ。人生で初めてキューケースを新幹線に持ち込んで、気分はいっぱしの競技プレイヤーです。
事前の主催者発表で、自分の予選会場は運良く特設会場になったこと、そして、初戦の相手が大阪の吉岡正登プロであることは知っていましたが、日頃インタビューをするプロ達がよく言うセリフ、「大会で対戦相手を意識したってあまり良いことないですから」を思い出し、全く意識しないことを強く意識しました(それが良くない……)。
それと、「所属」は気を遣って頂いたのだと思いますが、何も言わずとも「BD」になっていました(ありがとうございます)。それはどこのビリヤード場だ!? って話ですね。もっと有名になりたいものです。
夕方にニッケパークタウンに着くと、もうテーブルは設置済み。同じように前日入りをしていたプロ達や運営の皆さんと談笑しつつ、OKを頂いたので試合テーブルで球を転がしてみましたが、体、ふわっふわ。「甘い(穴幅が広い)コンディションだね」というプロ同士の会話に、ですよねぇと訳知り顔で頷きつつ、「僕は球が入らない……」と背中に冷や汗をかいていたのでした。
10/19、午前10時、試合開始。テーブルに向かうプロ・アマが全員自分より上手く見えます。僕が勝てるはどうやら身長だけのようです。運営席近くにいても緊張感が高まるだけなので、意識して取材記者モードに切り替えてニッケパークタウン内をうろつきながら写真を撮っていました。
そして、11時頃、遂に始まった僕vs吉岡正登プロ。「よろしくお願いします!」と吉岡プロが安定の爽やかさで登場。プロが先に10ショット練習を終え、僕が続けて10ショット練習を…………う、うぉっ、なんだこれは……!?
右手の震えが止まりません。震えるどころか波打っています。グワングワンです。今ならストップショットでキューミスできそうです。キューは3cmぐらいしか出ず、頭もぴょこぴょこ動きます(これはいつもか)。喉が渇き、視野が狭まり、動悸息切れがし、平衡感覚も狂っています。もはや病気です(※大げさな表現、お許しを)。
握手をしてバンキング…………。あ! ぼ、僕の手球だけ、全然返って来ません。よくプロ達から聞く言葉、「試合では練習時の60%~80%程度の力しか出ないんですよ」は、これか!(間違ってる)
序盤、さくさくっと吉岡プロが取り切り・取り切り・マスワリで3-0。この間、僕は空クッションのファウルとブレイクスクラッチとセーフティミスをした記憶が……。情けないことに早くも「負けた時にどう挨拶をするか」を考え始める始末。
しかし、なんと、吉岡プロが4-0にする9番をミス! 残った形はかなり穴近のイージー球ですが、記念すべきB.D.の初公式戦1点目です。もう、ぷるっぷるしながら9番イン! 1点取ったどー!(1-3)
不思議なもので、この9番が入った瞬間、緊張が少し緩和されました。次のラックは僕のブレイクからのマスワリ! うわー、プロ相手に出しちゃった! ドキドキした! これで2-4。
次のラックは僕の2番ミス(※試合後「あの2番がもったいなかった」と言われました)から吉岡プロ取り切り(5-2)。次のラックは吉岡プロ3番ミスから僕の取り切り(5-3)。
……な、なんか、戦えている気がする……。
そうなのです。相変わらず、キュー出しは短いし、入れはギリギリで、出しはバラバラなんですが、ショット時に体を残すことができはじめ、イヤな緊張もだいぶ収まり、深呼吸でちゃんと空気が腹に入ってきて、視野もほぼ元に戻りました。
そして、吹き抜けのど真ん中でキューを握っていることがとても晴れがましくて誇らしくて気持ちいい!!!! ビリヤードのプレイヤーや関係者だけじゃない。きっと子供達が、お母さんお父さんが、学生達が、じいさまばあさまが、僕のビリヤードを見てくれていた!
僕がもう一発マスワリを出して5-4と1点差に迫った時、あくまで僕の中では、ですが、会場中が僕を見つめて拍手してくれて、全メディアが僕を撮っている気持ちになりました(※上の2つの写真、さすがビリヤードメディアのお2人撮影です。実物の100倍マシ)。ここで1球でも多く撞きたい!
この主役感は錯覚なんですが、吉岡プロが僕のマスワリの時に膝を叩いて「ナイス!」と呟いてくれたのはホントに嬉しかった。プロ達が言う、「観られてると力が出せるってこと、ホントなんですよ」の意味がちょっとだけわかった気がしました。
……と、すっかり特設でプレーする自分に酔ってしまった僕。そこからの記憶は――これは誇張でもなんでもなく――全くありません。
気付けば、そこから1点も入れずに4-7で敗れ、吉岡プロと握手していたのです。気持ち良かったけど、まだ戦えたよなぁ……という、あの形容しがたい気持ちの名前は何と言うのでしょうか。
そして、その30分後には兵庫のアマチュア選手(明らかに僕より試合慣れしておられるしっかりしたプレイヤーでした)と対戦し、ここでも4-7の敗戦。そうです、こうして僕はトーナメント最下層の民、「負け負けびと」になってしまったのです(あるいは「MM」)。
でも、今回初めて公式戦に、それも特設会場の兵庫オープンに出てみて、競技スポーツとしてのビリヤードの面白さを僕はようやくちゃんと知った気がします。
もともと僕は公式戦への興味が薄く、いきつけのビリヤード場でいつもの仲間でだらだら遊ぶのが好きなクチだったのですが、特設でプレーすることの気持良さをもっと早くに知っておけばよかった……! と今更ながらに思いました。これは上達意欲が掻き立てられ、練習のモチベーションもアップします。
この会場では誰もがヒーローになれる気がします。そして、普段のビリヤード場では出てこなかった「ぶっ壊れた/イケてる自分」にも出会えますし、一般の人達のボールを追う熱い視線の中に、ビリヤードが持つ様々な魅力を再発見できる場でもあります。そしてそのことは、きっと僕らのビリヤードライフを豊かにしてくれるでしょう。
HRCさん、JAPAさん、ニッケパークタウンさん、川端聡プロなどなど、お世話になった皆さん、ありがとうございました。対戦させて頂いた吉岡正登プロ、兵庫のIアマにも感謝します。
最後は金土日3日間の宴席写真をアップしてお開きとしたいと思います。打ち上げもまた遠征の楽しみ。たぶんB.D.、裏兵庫オープンの酒量選手権では毎夜上位入賞してたと思います……。