昨年(2018年)、
第10期女流球聖位に就いた
丸岡文子(神奈川)が、
今年(2019年)、
初のタイトル防衛に成功。
在位2期目に入った。
挑戦者は、第4期〜7期の
女流球聖の佐原弘子(千葉)。
トップアマ同士の好カードは
フルセットに及ぶ激闘に。
丸岡球聖は、さらに逞しく、
勝負強くなった姿を見せてくれた。
最強のチャレンジャーを
最高の舞台で破った丸岡球聖は
一時代を築き始めている。
本人に試合を振り返っていただいた。
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Ayako Maruoka
生年月日:1983年10月1日
出身・在住:神奈川県
所属店:『ARROWS』(神奈川県横浜市)
使用プレーキュー:EXCEED
所属連盟(クラブ):なし
ビリヤード歴:約13年
職業:自営業(ARROWS)
女流球聖戦参加歴:今年が6回目くらい
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――フルセットの激闘の末の初防衛です。
「挑戦者として挑んだ昨年(2018年)よりも、メンタル的にはるかにキツかったです。失うものがあるのとないのとではこんなに違うものなのかと。そして、この大一番でちゃんと上がる(勝つ)のってこんなに難しいものなんだと。やっぱり最後の方は勝ちを意識しちゃってたんでしょうね。何度も上がりのチャンスを失ってたので、終わってからも反省ばかりでした」
――ゲームボールを入れた瞬間、胸にあった思いとは?
「応援してくれた方、教えてくれた方、皆さんに『すみません……』でした(苦笑)」
――女流球聖として過ごした1年は、これまでとは違っていましたか?
「はい、自分が女流球聖になってみて初めてわかることが多かったです。例えば、以前は私もタイトルホルダーと対戦する時はどこか意識してしまって、自分の球が撞けないという経験をしました。まさに以前、佐原選手と対戦した時はそうでしたね。彼女は4年間女流球聖で、ずっと憧れの存在だったので、試合で当たると雑念が入っていたと思います。
でも、自分が女流球聖になってからは、自分と球だけの世界に入りやすくなった感覚があります。そして、他の人が私と対戦する時に、たぶん私をというより『女流球聖』というタイトルを意識しているのかなと思うことがありました。そういう時に『全国タイトルを獲った人ってこんな感じなんだ』って思いましたね」
――1日で9ボールの7ラック先取を7セット戦いました。体力や精神力は最後まで保ちましたか?
「スタミナには自信がありましたし、今回も最後までもったと思います。ただ、途中から撞く時に身体が動くことがあったみたいです。周りが指摘してくれて気付きました。アドレナリンが出ているから自分では疲れが原因だとは思ってなかったですけど、やっぱり身体に来てたんだと思います。1対1で10時間撞くのはやっぱりキツイんだなって(笑)。終盤は5個先までは考えられなくなってましたね。それでも最善は尽くしましたけど。
精神力は……これは反省点なんですけど、一定ではなかったです。最初は気合いが入っていたんですけど、そこから中だるみをしてしまって、そして、相手に先にリーチをかけられた時(セットカウント2-3時)に、やっと『ここからだな』って思えたんです。本当に遅い。以前からそうなんですけど、追い込まれないと頑張れないのかよ……っていうところが反省点です」
――昨年課題として挙げていた第1セット。今年は取りました(7-5)。
「反省を活かして、今年は第1セットからかなり集中して、ムキムキの精神状態で入りました。昨年とはまるで違い、強くなれた実感がありました」
――しかし、第2セット(6-7)と第4セット(6-7)はヒルヒルで落としてしまいました。
「両方とも最終ラックを撞いていて、取り切れる配置なのに取り切れなかったので、『それはそうなるよな』って。もっと言えば、そこに至るまでに自分が何かしらミスをしたからヒルヒルになってしまった訳で、反省しないといけないのはそこだと思いました。でも、それを受け入れて、すぐ気持ちを切り替えられたので、引きずることはなかったですね。『この先があるから忘れよう』と」
――印象深い局面やセットとは?
「第2セットのヒルヒルで8番を抜いた瞬間と、第4セットのヒルヒルで5番を抜いた瞬間。あとは最終セット(第7セット)の6-1でリーチをかけた直後のラック(第8ラック)の、3番サイドカットの空振り。あれは『ここで上がれる!』と思って撞いたんですけど、まさか3番に当たらないとは……。自分の目を疑いました(笑)。あの時はヒルヒルになることも覚悟しました」
――最終第7セットを迎えた時の心境とは?
「第6セットに入った時からずっとそうだったんですけど、かなり落ち着いていて腹はくくれてました。第7セットを迎えた時は、『あとはもう7先一発。自分が取っても取れなくても、これで今年の球聖戦は終わり。やるしかない』って思えました」
――6-1とリーチをかけてから2ラック足踏みをしました。
「第7セットの頭からずっと集中し続けていたので、6-1になったことに始めは気付いてなくて、『あれ……あと1点だ』って我に返った時に、一気に緊張してしまいました。勝ちを意識しすぎて球が入らなくなって。上がったラック(第10ラック)も8番を外してるじゃないですか。あれは撞き急いでしまいましたね。テーブルを一周して間合いを取って、整理が付いてから撞けば良かった。
大会前に金佳映(韓国のトップ女子選手。4月に日本に来ていた)と撞いてもらったんですけど、彼女は上がりのボールはだいぶゆっくり撞いてました。あんなトップの人でもあれだけ丁寧に行くのに、なんで私はそれを思い出せないんだろうって(苦笑)。そうやって変な精神状態のまま撞いてしまった場面がいくつかありました。そこがまだまだだなって思いますし、一番の反省点です」
――1年前から成長を感じられたところは?
「たくさんありました。技術はだいぶ上がったと思うし、メンタルも少しずつ良くなってきたと思います。単純にあの舞台に慣れてきたからなのかもしれないですけど、全体的には冷静でいられたと思います」
――また来年、2度目の防衛戦に向けてどんな準備をしておきたいですか?
「まずはメンタルの強化です。そして、今後キューを変更予定なので(『HOW』になる)、技術向上のために、もっと球の回転を意識して撞けるようになりたいです」
――最後に、応援してくれた方々へのメッセージを。
「前日に大阪の竹村幸祐さんが一緒に撞いてくださって、とても良い練習になりました。先月プロ初優勝を飾った小川徳郎プロに続き、竹ちゃんに勝ち運をもらえたのかもしれません(笑)。そして、大阪まで応援に来てくれたお店(『アロウズ』)のお客さんや、現地で応援してくれた方々、ケンカの絶えない私達夫婦(※夫はJPBA丸岡良輔プロ)の仲裁役として東京から来てくださった『ステラ』の清水さん、さらにYoutubeliveで見て応援してくださった皆さん、本当にありがとうございました」
(了)
※2018年(第10期)球聖位獲得時の
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