春は『球聖戦』の季節。
アマチュアの最高峰のタイトルの一つである。
すでに男女それぞれの部で試合は始まっている。
現球聖位への挑戦権をかけた戦いだ。
昨年、第4期女流球聖位に就いた佐原弘子は、
4月14日に初の防衛戦(女流球聖決定戦)を控えている。
今はただ挑戦者が決まるのを待つ身。
彼女の地元、千葉を訪れて意気込みを聞いた。
取材協力:スピリット1、On the hill !
写真・文:B.D.
――防衛戦まであと1ヶ月ほどです。今のお気持ちは?
思ったより切羽詰まった感じはなく、いつもと同じような日々を過ごしています。
――試合が近付いて来てることも意識していない?
それは意識しますね(笑)。もちろん球聖位は防衛したいですし、悔いの残らない試合にしたいので、本番までにやれることは全てやっておきたいです。
――挑戦者が勝ち上がって来るのを待つ側ってどんな気分なんですか?
結構緊張はしてますよ。「誰が上がって来るんだろうか」って考えますし。
――ああ、やっぱりそうなんですね。
対戦相手が誰になるのか、気にならないと言えばウソになります。でも、誰が来ても一生懸命自分の球を撞くだけだなと思ってます。周りの人達は「誰が上がって来たらイヤ?」とか聞いてきますけどね(笑)。
――誰が上がって来たらイヤですか?(笑)
いや、誰でもイヤではないです。強いて言うなら……、挑戦者の方は、土曜日に挑戦者決定戦を戦ってその翌日に私と試合しますよね。
――ええ。
かなりタフな2日間になります。その点、私がプレーするのは日曜日だけですし、体力的には有利だと思うんです。でも、すごく体力のある人が勝ち上がって来たら、私にそのアドバンテージはないですね。
――佐原さんご自身は体力はどうですか?
球撞きの体力は割とある方だとは思います。
――今、どんな調整や準備を?
所属する『スピリット1』で練習したり、ハウストーナメントに出たりしています。ああ、1月末に大阪に行って来ました。試合会場の『マグ スミノエ』にも行きましたよ。
――下見ですね。
去年もあそこで撞いていますが、やっぱりマグの風景に慣れておきたいなと思って。そして、久保田さん(知子。現JPBAプロ)に撞いてもらいました。
――それは面白いですね。彼女は第1期・第2期の女流球聖位で、後にプロになりましたね。
はい、アマチュアの頃から仲良くしてもらっていて。以前から一緒に撞いてもらったりもしています。
――話が逸れますが、佐原さんと久保田プロと言えば、'10年の『アマローテ』(全日本アマチュアポケットビリヤード選手権)ですね。お2人が一日で3回対決したんですよね。特にプレイオフが名勝負で皆が注目していたという。
ああ、そうでしたね。あのプレイオフは一球勝負だったんですよね。久保田さんがほんと素晴らしいプレーをしていて、私が負けたんですが、自分がやるべきことはやって敗れたので納得しています。
――その久保田選手は球聖を獲ってからプロに転向した訳ですし、佐原さんも「プロにならないの?」と周囲に聞かれませんか?
聞かれますね。でも、プロ入りは考えてはいません。
――それはどうして?
アマのフィールドの中でも、私にはまだ足りないところがあると思っているからです。より多くのタイトルを獲りたいですし、それと、私は男子アマの中でも戦えるようになりたいんですよね。男性に対してもライバル意識を燃やしているんです。
――佐原さんが思うプロとアマの違いとは?
意識の違いが大きいなと思います。やっぱりプロの方々は「ここは外せない」という場面で球を入れてきますし、その技術というか強さがすごい。
――メンタルも違う?
そう思います。精神的にもプロは皆さん胸張って「プロです」という気持ちでやっておられますからね。私はまだプロの方と対戦する時に甘さが出ているなと自分でも思います。
――昨年、球聖になった瞬間のことを思い出したりすることは?
あー、ありますあります(笑)。感無量な感じが蘇ってきますね。
――'07年に一つ目の全国タイトル『アマナイン』(全日本アマチュアナインボール選手権)を獲っていますが、その時と去年の球聖位は違うものですか?
全然違いますね。アマナインは自分が勝てると思ってなくて、まさかの優勝でした。でもその後、全くタイトルが取れず3位や準優勝ばかりで……。だから内心、「あのアマナインが最初で最後のタイトルなのかなぁ」と思ってたぐらいです(笑)。
――そんな頃に……。
そう、そこにきて、昨年穫れた女流球聖。すごく嬉しかったですね。欲しくて欲しくて堪らないものを自分の力で穫れた満足感があります。
――では、今回「防衛したらどんな風になるんだろう」と考えたりは?
うーん、そこまで考えることはないかな。特にイメトレをすることもないですし。あ、でも、基本的にだいぶポジティブなんですよ、私。
――それは知りませんでした。
球が入らない時も、「ああ、気のせい気のせい、明日になったら治るよ」と思えるタイプ(笑)。調子が悪い時も「自分はもうちょっとやれるはず!」と前向きに思っています。
――この1年間でプレイヤーとして成長できたなと思いますか?
それは間違いなく。まず技術的に伸びたと思います。人に見られる立場になったので、練習も一生懸命やるようになりましたし。そして精神面も。タイトルに恥じないプレイヤーでいようと心掛けています。見られながら撞くことにもだいぶ慣れましたしね。
――では、本番に向けて抱負をお願いします。
タイトル防衛をするために、今の自分に出せる力を100%出して頑張りますので、応援よろしくお願いいたします! 千葉から大阪まで応援団も来て頂けるようなので、皆に見られて恥ずかしくないプレーをしたいと思います。
佐原弘子さんはこんな人→
2012年第4期女流球聖位
1977年10月21日生まれ。O型・天秤座
千葉県出身・在住。
スピリット1(千葉県銚子市)所属
プレー歴は約11年