アジア1のポケットビリヤード強国、
台湾のビリヤードマーケットも
近年は縮小傾向にあり、
若い選手が少なくなったと聞くが、
今なお実績ある指導者のもとで
世界で戦える選手が次々に育っているようだ。
この呉芷婷(ウー・ジーティン)も
その一人。
現在19歳。女子大生の彼女は、
2013年10月の『北陸オープン』
2014年7月の『ジャパンオープン』
2014年11月の『全日本選手権』
と、13ヶ月の間に
日本の3大トーナメントを制してしまった。
勝因は何か。
そして日々どんな環境で撞いているのか。
2014年末に来日した彼女に聞いてみた。
協力/POOL LABO(横浜)
通訳/羅立文(POOL LABO)
写真・取材・文/BD
…………
Wu Zhi Ting from Chinese Taipei
1995年11月18日生(19歳)
取材時は大学1年生
ビリヤード歴9年
好きなプレイヤーはE・レイズ
2013年北陸オープン優勝
2014年ジャパンオープン優勝
2014年全日本選手権優勝
――ビリヤードを始めたのはいつですか?
「10歳の時です。父の影響で。父は有名な選手という訳ではなくて、ビリヤードが好きな普通のアマチュアです。しばらくは父に教わっていました」
――その後、誰か先生に教わったんですか?
「父の後は、日本でもご存じの方が多いヨウさん(楊要輝氏。選手・コーチ・用具商・台湾ビリヤード協会のスタッフなど様々な顔を持つ)に教わって、さらにその後は、高校のビリヤードのコーチである李宜先に教わりました。李コーチは、以前台湾国内で活躍していたプロ選手です。私はもう高校を卒業したけれど、そのまま李コーチに教わっています」
(※通訳をしてくれた羅立文プロによると、李宜先コーチと陳冠列コーチが台湾2大コーチと言えるトップクラスの指導者で、後者の陳コーチは呉珈慶や柯乗逸というトップ選手のコーチとしても知られる。コーチ同士がライバルであるため、2人の教え子もまたライバルなのだとか)
――普段、何時間ぐらい練習していますか?
「6~8時間です」
――どのような内容の練習を?
「自分の苦手な球を繰り返して練習します。成功のイメージが固まるまで。それから難しい配置の組み立てを考えて取り切る練習をします。あとはブレイクですね。私は一人での練習ばっかりで、大抵一人でずっと撞いています」
――ビリヤードを楽しいと感じる時は?
「テーブル上のボールを、全部自分の思う通りにポケットに落とせた時が楽しいです」
――自分自身をどんなプレイヤーだと思っていますか?
「そこまで自分に自信を持っているプレイヤーではないですが、向上心はすごくあると思っています」
――呉選手はまだ台湾の大きな試合では優勝していないそうですね。台湾国内のランキングで言うと、上から何番目ぐらいにいるんですか?
「はい、まだ台湾では優勝できていません。最高はプロツアーで3位です。女子ランキングで言うと9~10位ぐらいです」
――日本の全日本選手権、ジャパンオープン、北陸オープンという3つの大きな試合で勝ちました。なぜ勝てたと思いますか?
「元々私は日本の試合に出る時に『自分が優勝できる』なんて全く思ってなかったんです。どの試合も、本当にチャレンジャーの意識で向かって行っただけでした。出来る限り1球1球集中して撞いていただけです」
――欲もなく、ただ目の前の球に集中していた?
「そうです。自分はチャレンジャーだから、『絶対に勝たなくちゃいけない』みたいなプレッシャーはなかったです。1球1球に集中できたのはそういう精神状態だったからだと思います。そのお陰で、自分の調子を大きく崩すことがなく良いビリヤードができましたし、優勝することができたと思っています」
――日本という異国で、短期間で3回も優勝したのはすごいことです。
「私は日本という国が好きで、またその3つの大会は素晴らしい特設会場の試合だったので、力が出しやすかったということもあるかもしれません。そして、そもそも私が異国の大会に挑戦できて、しっかり試合に集中できたのは、絶えずサポートしてくださったMEZZ / EXCEEDのお陰です。言葉もわからない環境で短期間で3回も優勝できたのは間違いなくそれが理由です。MEZZ / EXCEEDの三木一則社長にはとても感謝しています」
――今回は何回目の来日ですか?
「4回目ですね。試合で3回来て、試合以外だと今回が初めてです」
――日本は好きですか?
「大好き! もう日本の全てが好きですね(笑)。食べ物も、空気も、出会った日本の人達も……。試合でも活躍できたから余計にそう思うのかな」
――日本のビリヤードプレイヤーに対する印象は?
「プレイヤーは皆さんマナーが良くて親切で、いつも感激しています。やっぱりテーブルの上では勝負ですから、誰だって勝ちたい勝ちたいと思っています。でも、日本の場合は試合が終わったらすぐに選手同士でちゃんとあいさつができるし、話もできる。他の国ではここまで気持ち良くはできないなと思います。なので、言葉の壁はありますけど、私は日本のプレイヤーの皆さんとお喋りしたりするのもすごく楽しみなんです」
――では、日本のビリヤードファンに対する印象は?
「ファンの方とはまだそんなにお話できていないので、まだあまり特別な印象はありません。でも、今後も日本の試合に出たいと思っているので、良かったら会場で声を掛けてください」
――今後のプレイヤーとしての夢は?
「世界チャンピオンになりたいです。あと、台湾には『アムウェイカップ』という大きな女子の国際大会があるので、そこでも結果を出したいです。そういうメジャーなトーナメントでベスト8以上に残りたいですね」
――次回来日するのは2015年のジャパンオープンの時でしょうか?
「はい、そのつもりです。これからも頑張りますのでぜひ応援してください!」