2018年8月、喜島安広が
『第58期名人戦 A級戦』(京都開催)で
勝利し、名人に復位。
これにより喜島は、
『球聖』『名人』というアマチュア
二大個人タイトルを"同時に保持"することになった。
高橋邦彦、栗林達(ともに現JPBA)に続く
3人目の快挙となる。
例年ならA級戦の後には
『名人位決定戦』が控えているが、
今年は名人位が空位だったためそれがない。
いわば短縮ルートでの名人復位に、
なかなか実感が湧いてこない様子の喜島。
とはいえ『球聖&名人、同時在位』の志は、
2014年に逃して以来、
ひそかに心に抱いていたという。
今期の名人戦を振り返っていただいた。
取材協力/JAPA、ピカソ(京都)
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Yasuhiro Kijima
1983年1月7日生 埼玉県出身・在住
所属:『セスパ東大宮店』、『5&9』(ともに埼玉)、SPA
プレーキュー:オリビエ
ビリヤード歴:約20年
主なタイトル:
『第55期、第58期名人位』
『第19期~第22期、第26期、第27期球聖位』
他、現存する「アマ個人全国タイトル」全て↓
『プレ国体』(全国アマチュアビリヤード都道府県選手権大会)
『アマローテ』(全日本アマチュアポケットビリヤード選手権大会)
『アマナイン』(全日本アマチュアナインボール選手権大会)
『マスターズ』
また、2016年&2017年『都道府県対抗』の連覇メンバー(埼玉県。SPA)
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↓ 決定戦(vs 林武志)試合映像。撮影:JAPA
――名人位に返り咲きました。
「まだ実感がないです。これでやっと『挑戦者』になったところという感覚のような……(※例年ならこの後『名人位決定戦』がある)。表彰式で久しぶりにトロフィーを持ったらやっぱり重たかったですけど(笑)、名人になったという実感はまだなくて、不思議な気持ちでした。内容があまり良くなかったというのもあると思います」
――負け無しの5連勝で勝利しましたが、手放しで喜べる内容ではなかった?
「その時々で一生懸命撞けていたとは思うので、後悔するということはないんですけど、いやぁ、まだまだ技術が足りないですね(苦笑)。展開的に自分がミスした後に相手もやってくれたりして、なんとか勝てたという感じです。特に1回戦は僕が何度も失敗してました。今回、5試合中3試合をYouTube Live配信テーブル(京都『ピカソ』の2番台)でプレーしたんですけど、以前からあのテーブルはちょっと渋いというイメージがあり、今回もその感覚のまま撞いてしまって、気持ちの面であまり上手く合わせられなかったなと思います」
――勝者最終と決定戦の2試合続けて、林武志選手(神奈川)とプレーしました。
「林選手には去年のA級戦の敗者最終で負けています。あれが初めての敗戦でした。林選手は今回もLive配信テーブルでのびのび撞いていて、大坪(和史)さんとの試合でもすごく入れてましたよね(232点ハイラン)。なので、Live配信テーブルで林選手とやるのはイヤだなぁというのは正直ありました。ただ、僕との試合ではミスをしてくれていたので、それも含めて展開が向いてたと思います」
――勝者側から勝ち上がって行くと、途中それなりに待ち時間もありますが、待つのは苦ではないですか?
「それが以前から自分の課題の一つだと思っています。この試合に限らずですけど、特に勝者側から決勝ラウンドに行ったりするとどうしても待ち時間が長くなり、敗者側の人の方が同じテーブルでより長く撞けたりすることもあるので、待っている間にネガティブな思考になりがちだったりもします。今回もそういうことが少し頭をよぎりましたけど、それ以上にLive配信テーブルを克服しなくちゃという気持ちの方が強かったので、あまりネガティブな方には行かず、純粋にベストを尽くそうという気持ちになれていたと思います」
――決定戦、特に後半は喜島選手らしい迫力ある取り切りが見られました。
「そう……ですかね。決定戦はそこまで悪くはなかったかなと思います。それなりには撞けたというか。1ラック目の11番のシュートミスや15番のサイドカットミスは悪い意味で印象に残ってますけど……」
――最後、相手のジャンプ6番インスクラッチから、6番センターショットを入れて7番も入れましたが、8番へポジションミス。8番セーフティを挟んで再び取り切り体制に入り、上がりました。
「理想的には6番からそのまま取り切りたかったですけど、7番から8番で当て出しに行って失敗しました。ほんとは手球を15番に当てたかったんです。でも、思ったよりも引きのコースが膨らんじゃってすぐ近くの12番に当たってしまった。あれは選択ミス。夢を追っちゃってましたね(苦笑)」
――決定戦でもし負けていたらプレーオフになっていた訳ですが、それは避けたいと思っていましたか?
「はい、思ってました(笑)。やっぱりプレーオフまで行くとこちらは疲れてくるけど、林選手は若くて疲れ知らずなので不利になるなと」
――今回の名人戦は『B級戦』からの登場でした。B級戦とA級戦、2大会を通して印象に残っている戦いや局面とは?
「B級戦は持永(隼史)選手に負けて敗者側に回って、最後、敗者最終で持永選手に勝ってなんとかA級戦に進めたので、それは印象に残っています。年齢も一緒ですし、意識する選手でもあるので。同じくB級戦の敗者最終一つ前の青柳(高士)さんとの試合は、確率的に言ったら分が悪いジャンプショットが入って、そこから取り切ってかろうじて勝てました。そして、A級戦は……センターショットをよく抜いたなぁということでしょうか(笑)。5試合で合計3回は飛ばしたと思います」
――A級戦の開始前から優勝候補に挙げられていました。本人としては不満の残る内容だったかもしれませんが、丸一日を通して名人にふさわしい落ち着きあるプレーぶりだったと思います。
「負けていてもおかしくない試合がいっぱいありましたから、そこは自分ではなんとも言えないですし、今回は『結果が出てしまった』感覚もあります。でも、どんな状況でも最低限のことは出来るようになってきているのかもしれないですね」
――これで高橋邦彦選手、栗林達選手(ともに現JPBAプロ)に続く、史上3人目の「球聖&名人」ダブルタイトル同時保持者となりました(※同時ではないが大坪和史選手〈今回5位〉もダブルタイトル獲得者)。
「それは少し意識していました。2014年4月に球聖を失って(大坪選手に敗退)、その年の9月に名人になりました(和田敏幸選手〈現JPBAプロ〉に勝利)。同じ年ではありますけど、間が5ヶ月あって同時ではなかったので。これまで2つ同時に在位していたのは、高橋さんと栗林さんのお二人だけ。その偉大なお二人に……、いや、お二人はプロの世界でもすごい成績を出している方々なので、並んだという表現は正しくないですけど、3人目として続くことが出来てやっぱり嬉しいです」
――来年、球聖と名人、両タイトルの防衛戦を戦うことになりますね。
「多くの方々に『プロ入りは?』と聞かれているのは事実ですし、個人的にも色々と考えることはあります。その時になってみないとわからないですけど、このまま来年も球聖と名人でいるならば、もちろん防衛に全力を尽くします」
――わかりました。最後に地元・埼玉のサポーターを含めて、応援してくれた人達にメッセージを。
「球聖&名人同時在位は、自分が勤めているお店(埼玉『セスパ』、『5&9』)のお客さんや埼玉の人達も期待してくれていたことだったので、実現出来たことを嬉しく思っています。日頃から、僕の試合の戦績を気にかけてくれたり、声を掛けてくださる方がいるというのは励みになりますし、いつもたくさんの方々に応援されているなと実感しています。とても感謝しています。今回もありがとうございました」
(了)
※4ヶ月前の球聖戦後の談話はこちら