土方隼斗・JPBAプロ

ジャパンオープン2度目の優勝。今季早くも6勝目。ハヤトの今

2016年7月

Hayato Hijikata won 2016 Japan Open
Hayato Hijikata won 2016 Japan Open

 

プロ11年目、土方隼斗の勢いが止まらない。

 

2016年の上半期だけで5勝を挙げ、

 

自身最多となる「年間6勝」を、

7月のジャパンオープンという大舞台で決めた。

 

ジャパンオープン初優勝は2013年。

その年は年間5勝を挙げて「爆発」と評された。

 

今年はまだ国内外で約10戦を残しているので、

更なる上積みが期待できる。

 

となると、今年の隼斗現象を表す言葉は、

「噴火」か「ハリケーン」か、はたまた……。

 

『ニューピアホール』を

攻撃的ビリヤードで沸かせたその夜、

土方は3年前より穏やかな声音で語り始めた。

 

写真・取材・文:BD

 

…………

 

Hayato Hijikata

JPBA40期生

1989年3月16日生 東京都出身&在住

アマ時代の2005年に『世界ジュニア』銀メダル

2005年&2013年『関東オープン』優勝

2007年『ルカシージュニアワールドテンボール』優勝

2008年『北海道オープン』優勝

2010年『エイトボールオープン』優勝

2013年&2016年『ジャパンオープン』優勝

2013年、2014年、2016年『関西オープン』3勝

2013年『東海グランプリ』優勝

2016年『全日本ローテーション』優勝

2016年『ハウステンボス九州オープン』優勝

『GPE』通算15勝、他、入賞多数

2013年JPBA男子年間ランキング1位

使用キューはEXCEED & MEZZ

 

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↓ ベスト8のリニング戦・試合動画

(撮影:On the hill !

 

インタビューで言及されている

1番のスーパーカットは、1h43m頃から

 

 

↓ 準決勝の大井直幸戦・試合動画。

(撮影:On the hill !)

 

「攻めよう」というのが最終日のテーマでした


 

――決勝戦から6時間が経ちました。

 

「今、ちょうど振り返ってました。今回の優勝は自分が強くなっている実感があって本当に嬉しいですね。2度目ということも嬉しいですし、内容面が良かったので、そこがまた嬉しい」

 

――持ち前のオフェンス力を武器に勝ち進みました。

 

「最後まで『隼斗スタイル』で走り切れたんじゃないですか(笑)。守りの選択もあるけれども攻めようというのが最終日のテーマでした。決まれば自分も乗っていけるし、流れも作っていけるだろうと。もちろん、アンセ(アンドセーフ)を意識しながら撞いた球も多いですけどね。

 

 ああいう会場だから、オフェンシブなビリヤードを展開していけば雰囲気も盛り上がってくるだろうし、会場を味方につけられれば流れが向いてくる可能性もあると思って意識的にやっていた部分があります。そうやって攻めに行った球がよく決まった。それが勝因の一つだと思います」

 

――3年ぶりの特設会場でいきいきしてるように見えました。

 

「やっぱり楽しかったです。反応がダイレクトに伝わってくるのが特設会場の醍醐味。お客さんの声やどよめきで、ショットの成否もわかるじゃないですか。

 

 例えば、リニング戦(ベスト8)の最後の1番カット(第15ゲーム)。あれなんかは、自分では入ったかどうかわかってないんです。身体を残して撞くことしか意識してなかったから、ボールの行方は追ってない。ポケットに向かう1番を見ていたお客さんの『おぉ~!!』の声で、『よし、入った!』と」

 

――プロ2年目の2007年にニューピアホール初体験。ベスト16で同期の大井直幸プロに負けました。あれから約10年。当時のことを思い出すことは?

 

「どういう感情だったかまで深く思い出すことはないですが、負け方とかは覚えてますね。大井さんはやっぱり当時から意識している存在でしたし、負けられないって気持ちでやってたんですが、納得できないままショットして失敗した球があって悔しかったことは覚えてます。

 

 あの時と今回の大井さん戦のテーブルの場所が同じだったんですよ(笑)。だから、今回の準決勝は絶対に負けないぞっていう気持ちで臨んで、バンキングを取って頭から走って行けました(※第1ゲームを2-10コンビで取り、そこからマスワリ3連発)」

 

――準決勝もファイナルも、仕上がった状態でテーブルに向かっているように映りました。

 

「ベスト8からもう仕上がってましたね。逆にベスト8と準決勝が良すぎたので、ファイナルはメンタル面では怖さがありました。でも、いざ始まってみれば、集中して球に向かえてたと思います」

 

リニングに自分のスタイルで勝てたことは大きい


 

――ファイナルはブレイクがそこまで良くなかったと思います。

 

「はい、当たりも良くなかったし、当たっても取り出しが見えてない。『ちょっと待ってよ』と(笑)。あの試合は、流れが良くてそれに乗って勝てたという感じではなくて、自分で難しいところを入れてカバーして取り切ってものにできたかな。それは最終日のどの試合にも当てはまるところで、そういう勝ち方ってなかなか一日を通じてできる訳じゃないんですけど、今回はあの4人を相手にそれができた。それが大きな収穫ですね」

 

――初日と2日目は?

 

「スタイル的には割と安全目に行ってました。それでも初日に1回負けてますけど(vs 幸真司アマ)。2日目にはジュニア時代の仲間、小川立致選手(アマ)と当たってだいぶ競りました。10年ぶりぐらいの対戦だったし、仲も良く、認めている相手ということでプレッシャーが大きくて、ミスもして。なんとか勝ったという感じでした。嬉しいのはその小川選手が特設会場で応援してくれたことですね」

 

――最終日、特に印象深い試合とは?

 

「しいて言えば、ベスト8のリニング戦。過去3回ぐらい当たってるけど、1回も勝ったことがなくて、ボコボコにされてるんです。それでも全く気後れすることがなかったし、自分のスタイルでミスなく勝てたというのが大きかった。互いに展開はそこまで良くなくて、どっちにも大きな流れはなかったですけど、その中で色々な自分の強みというものが出せたかなと思います」

 

――3年ぶりにニューピアホールに来て、1度目の優勝(2013年)の時の記憶がフラッシュバックしたりは?

 

「ありましたねぇ、色々と。試合中はそんなことは考えてなかったですけど、会場に入った瞬間とか待ち時間とか。『前回は赤坂泰彦さん(ラジオDJ・司会者)が呼び出しをしてくれたなぁ……』とか。そして、僕がニューピアホールに来てない2年の間に、ステージとか照明とかがグレードアップしたじゃないですか。ああ、今の決勝日はこんな感じなんだと思ったり」

 

自分にはまだ良くできるところがある。それが楽しい


 

――優勝の味も前回とは違うのでは?

 

「『やったー!!』という感じは前回の方が強くて、今回は……不思議な嬉しさですね。これはすぐじゃなく、後からじわじわくるヤツです。

 

 3年前と違うところって何だろうと考えてるんですけど、今回の方が気持ち的な余裕がありましたね。3年前はもう必死にやっていただけというか。でも、今回は展開が悪くても楽しく撞けたし、『行かれても行けるぞ』という気持ちを失わなかった。ということはそれだけ状態が良かったんでしょう。ただ、今までの経験から、1年後はどうなってるかはわからないということも想像できてます。だから、今はこの状態をできるだけ長く維持していくだけですね」

 

――大会前に既に5勝を挙げていて、全ての国内オープン戦でファイナルを撞いていた。それだけに2度目のジャパンオープン制覇に向けて周囲からの期待も大きかったと思います。

 

「期待されていることは感じてましたけど、『そんなに甘いものじゃないよ』と思う自分もいたし、かといって、ジャパンオープンだけこけるのは嫌だった。そういう点ではプレッシャーがありました。終わってみれば、様々な種類のプレッシャーがかかっていた中でも自分のプレーを貫けた感があって、それが一番嬉しいことかもしれません」

 

――今回は満点だったと言えますか?

 

「いや、課題はあります。1試合に一つはやっちゃいけないミスっていうのをやってます。でもそれも、自分にはまだ良くできるところがあると思うと楽しくなってきます。そこを直せば世界でも戦っていけるだろうし、海外タイトルを獲れるだけの力も付いてきてるだろうって自分ではわかっているので」

 

――この夏、世界選手権やアジア選手権がありますが、自分自身への期待値も高いのでは?

 

「こんなに良い状況で世界選手権に行けるとは思ってなかったですが、今の自分なら獲れるはずという風には思ってません。過度な期待はしていない。それは今までと変わらないですよ。調子が良いから勝てるってものでもないので。向こうでは自分のビリヤードをやるっていうことしか意識してません。それが空回りせずに上手い形で出て、本当に自分が頑張れた時に、タイトルを手にできるんじゃないかと思ってます」

 

(了)

 

 

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