競り合う展開やセーフティ戦のなか、
現球聖・増田真紀子が
難球をビシッと決めて1点をもぎ取る。
そんなシーンが何度も見られた
今年の『球聖位決定戦』。
本人は「まだ技術が足りない。
もっと球聖位にふさわしい球を撞きたい」
と自省の弁を口にするが、
勝負際の強さや落ち着いた佇まいには
王者の風格があった。
昨年の初戴冠からの1年をどんな思いで過ごし、
初めての防衛戦は何を考えて
キューを握っていたのか。
大会翌日に心境を明かしてもらった。
→ 大会結果記事はこちら
――初めての防衛戦を勝利で飾りました。喜びや達成感は?
増田:もちろん嬉しいのは嬉しいんですけど、とにかく防衛できてホッとしたという安堵感の方が大きいですね。
――疲れはありましたか?
増田:いや、疲れはそんなに感じなかったです。体力的にはまだまだ行けそうな感じでした。
――試合を振り返っていただく前に。女流球聖として過ごしたこの1年はどんなものでしたか?
増田:「もっと女流球聖らしい球を撞きたい」という一心で練習に励んでいた1年でした。周りから「球聖」と言われますし、そういう風に見られていると思うので、お手本になれるような球を撞きたいという思いもありました。でも、まだまだ力不足でそこには行けていないので、「もっともっと練習しないと」という気持ちが常にありました。
――今回の防衛戦に備えてどんな練習や準備をしてきましたか?
増田:去年の決定戦(『挑戦者決定戦』と『球聖位決定戦』)で失敗した球や考え方を間違えていたところを見返して練習に取り入れていました。あとは、フォームから何から一から見直して、悪いところを少しでも改善できるように努めていました。まだ改善しきれてなくて、今回の試合でも悪いまま出てしまったところもありましたけど(苦笑)。
――ファーストショットは第1セット第1ラック、相手の7番ミスで回って来ました。緊張しましたか?
増田:そうですね。1ショット目から「シュートミスしないようにきちんとしないと」と心掛けてました。最初にミスをしてそこからズルズルとダメになって行くこともありますから。その後は、回って来た球を1球1球どうするか。そこに集中できていましたし、「自分の球を撞こう」とだけ考えていたので、そこまで緊張という緊張はしてなかったです。
――「自分の球を撞く」。それが今回のテーマだったと言えるでしょうか。
増田:そうですね。この1年間練習してきたことを発揮できるように。そして、「ミスを少なくする」ということも意識してました。だから……上手く言えないんですけど「ちゃんとビリヤードをしよう」というのが目標でした。
――テーブルコンディションには対応できていたと思いますか?
増田:自分の中では合わせられた方だと思います。あの台はすごく撞きやすく感じました。下手な球もいっぱいありましたけど、1球1球、台と相談しながら撞けていたと思います。
――ご自身のプレー内容に点数を付けるとしたら?
増田:う~ん、正直言って50~60点ですね。いや、前半が50~60点で、後半は70~80点ぐらいになったかな。
――前半の評価が低い理由は?
増田:第1、第2セットは今自分が取り組んでいることが上手く出せなくて、「あれ、おかしいな」という状態で撞いてました。後半、第3セットから「あ、そうそう、こんな感じ」と思い出してだんだん撞けるようになりました。
――終わってみればセットカウント4-0と大差での勝利でした。勝因はなんだと思いますか?
増田:それはもうすごく運勢があったからだと思います。相手の坂田(夕紀)選手はとても上手な方だということはわかっていますので、ああいう展開で勝てたのはやっぱり自分に運勢があったからです。
――各セット、競り合う展開の中で増田選手のロングやカットなど難球の入れが光っていた印象です。
増田:難球を入れるのが私の持ち味と言いますか、少なくとも難球が回って来ても苦手意識はありません。普段ジャパンとかを撞いていても難しい球ばっかり入れてると思います(笑)。それが今回も出ていたのかなと思います。
――どのセットも落ち着いて撞いているように見えました。昨年の経験も大きいでしょうか。
増田:そうですね。そして、この1年間の練習で多少自信を付けている部分もあったので、それが落ち着きに繋がったのかなと思います。それに、「球聖になったからにはどんと構えておくべきかな」ということも少し思ってましたし、年齢的なものもあるかもしれません。
――印象に残っているセットや場面はありますか?
増田:良い意味で一番印象に残っているのは、最後の最後、上がりの取り切りですね。悪い意味で覚えているのは、1日中ブレイクが良くなかったことです。おそらく坂田さんも同じだったと思いますけど、ブレイクで的球が入っても取り出しが見えないことがすごく多くて。それで互いに乗り切れない部分もあったかと思います。
――セットカウント3-0で王手をかけて第4セットを迎えた時、「このセットで勝利を決めたい」という気持ちはありましたか
増田:いや、相手が坂田さんなので、いつひっくり返されてもおかしくないと思ってましたし、全く気を抜けない状態でした。でも、6-6のヒルヒルになった時は「ここで決めたい」という気持ちが強くなりました。「この1マス、最後まで諦めずに1点を取るんだ」と思っていたので、それまでとは違うプレッシャーも感じてました。
↑ 第4セット。6--6の最終ラック(第13ラック)は1h26min.より
――最後はロングの1番から取り切りました。どんな思いでテーブルに向かいましたか?
増田:「ミスは絶対許されない。取り切りたい」、その一心で入れ繋いだ感じです。今振り返ると、あの取り切りも運勢があったなと思います。3番は隠れてましたけど、前クッションで上手く決められて4番にネキストも出てくれましたし、4番から5番も思った所には出なかったですけど、悪くない形になったので。
――ゲームボールを入れた瞬間のお気持ちは?
増田:それはもう「やったー! 防衛できたー!」でした。すごくホッとしましたね。
――ここからまた1年女流球聖位として過ごし、1年後に2度目の防衛戦があります。
増田:技術が足りてない部分が本当にたくさんあるので、これまでの1年間と同じく少しずつ練習していくしかないです。今回の試合をしっかりと見返して、悪いところを直していきながら練習します。
――ちなみに、横断幕の「A.R.E.N.P.A」というコピーはアレですか……?
増田:そうです。制作は応援団の皆様に任せっきりでしたし、私は野球に詳しくはないのですが、阪神タイガースをイメージしたものだそうです(笑)(※「アレ+連覇」)。阪神タイガースは連覇しなかったみたいなんで、ちょっと怖かったんですけど(笑)、かっこいい横断幕を作ってくださってありがたかったです。
――最後に応援してくれた方々に一言。
増田:たくさんの方々のサポートのおかげで初めて防衛できたので感謝しかありません。前日から多くの方から励ましのメッセージもいただきましたし、会場での皆さんの声援や拍手はめちゃくちゃ力になりました。本当にありがとうございました。これからまた1年しっかりと練習して、来年もっともっと良い試合ができるように頑張ります。
(了)
※1年前の球聖位初戴冠時のインタビューはこちら
西日本代表 :増田真紀子(ますだ まきこ)
出身:北海道/在住:大阪府
所属店:『吹田中央ビリヤード』(大阪府)
使用プレーキュー:ADAM JAPAN 『MUSASHI 十二単』(シャフトは ACSS PRO、タップは KAMUI BLACK M)
ブレイクキュー:MEZZ POWER BREAK G
ジャンプキュー:CUETEC プロペル
ビリヤード歴:約25年(※間に約12年の休止期間あり)
全国アマ公式戦入賞歴:
2020年(第12期)『女流球聖球聖戦』西日本代表
2022年&2024年『アマナイン』(全日本アマチュアナインボール選手権大会)優勝
2024年&2025年『第15期・第16期 女流球聖位』
金額は空白欄に適当に(15円から)書きこんで下さい(あらかじめ入っている金額はAmazonの設定なので気になさらないでください)。受取人は 「 billiardsdays@gmail.com 」です。よろしくお願いいたします。