今、ポケットビリヤードの
女子アマ戦線が面白い。
個性溢れるプレイヤー達が
公式戦で躍動している。
その中心にいるトップ格のうちの一人が、
ジュニア時代からその名を知られる
小西さみあ選手だ。
今年で20歳。
美術系の大学に通う小西選手の
ビリヤードライフはどんなものなのか。
梅雨時の平日夜、大学終わりで
ビリヤード場で待ち合わせ。
取材・写真・文:B.D.
取材協力:AZ. Place
…………
Samia Konishi
2014年全日本アマチュアナインボール選手権
(通称:アマナイン)優勝
世界女子ジュニア5回出場(最高位は銀メダル)
1994年1月18日生、東京都出身・在住
女子美術大学アート・デザイン表現学科
メディア表現領域3年生
プレー歴は約9年
練習場所はAZ.Place、Triggerなど
――小西さんは、今どういう風に学業とビリヤードを両立させているんですか。
「大学は美術系で、必修の実技の授業が毎日あります。それ以外に講義もあるので、基本的に毎日休まずに学校に行ってます」
――それは大学だけでも忙しそう。
「居残りをして遅くなることもあります。学校が終わってここ(AZ. Place)に着くのが夜の8時ぐらいですね。そこから1~2時間撞きます。最近はちょっと頑張ってて、2時間30分~3時間ぐらい撞くこともあります。頻度は週3~5回ぐらいですね」
――練習メニューは?
「一緒に撞ける常連さんがいれば、ゲーム(セットマッチ)をやったりします。それ以外は一人でショット練習です。センターショットから始まってレール際の球とか。一人でナインボールやテンボールをやることもあります」
――松野剛明プロ(JPBA)が師匠ですよね。今も教わっている?
「はい。元々、松野プロがおられた『山水』(東京)でレッスンを受けていて、次に『カイザー』(千葉)で教わりました。その期間が一番長いです。数年前に松野さんが千葉に『Trigger』をオープンされてからは、月1~2回土日にTriggerに行っています。夏休みなど長期の休みの時は平日も」
――今はどんなことを教わっていますか?
「実戦形式ですね。松野さんとセットマッチを3回くらいして、合間合間で技術的なことからメンタルのことまで色々と教わっています。だいたい4時間ぐらいです」
――球を撞かない日もある?
「学校が終わるのが遅くなって、疲れちゃって、球撞くどころじゃないなぁってなると休みます(笑)。1週間ぐらい休むこともあります。最長で1ヶ月間休んだことがあります(笑)」
――大きな大会の前はいっぱい撞きたくなる?
「基本的には変わらないです。でも、この前の『アマナイン』(2014年5月。優勝)の前の週は気分が高まって、5日間ぐらい毎日しっかり撞きました。それでも時間は2時間ぐらいですけど」
――特に最近、一段と強くなったとBDは思っているんですが、ご本人にそういう実感はありますか?
「アマナインで初めて全国タイトルを獲ったことが自信に繋がったところはありますね。気持ちが軽くなったというか。その前まで春先あたりは精神的にひどい状態だったんですけど、今は少し気持ちの整理が付いています」
――ひどい状態というのは、女流球聖戦A級戦(3月)の頃とか?
「はい。特に4~5月が気持ち的にぐだぐだで。悩みもあってモヤモヤして、それが試合にも影響してましたね。良くない球ばかり撞いてました」
動画撮影:On the hill !
――最近めきめき力を付けている年下の平口結貴選手についてはどう思っていますか?
「年の近い女子アマプレイヤーと交流するのもほとんど初めてですし、4歳年下で素直にかわいいなぁって(笑)。この前、結貴ちゃんは『世界ジュニア』の日本代表決定戦(5月)で東京に来ていたんですけど、その時もここ(AZ. Place)に来てくれて、お喋りしたりして楽しかったです。これからもプライベートで一緒にいっぱい撞きたいですね」
――プレイヤーとしてはどう見ているんですか?
「以前から何回か当たっていますけど、一番感じるのは気持ちの強さ。球だけに集中できる選手です。素直に頑張っていることが伝わってきて、尊敬というか感動します。でも、試合で当たったら私はあまり相手を気にしないので、試合中にそういうことはほとんど考えないです」
――今、10代の女子アマは少ないですね。
「やっぱり年下の女子選手が出て来ると嬉しいです。私は以前から同世代の女子がほとんどいなくて、ライバル的な人もいなかったです。だから、女子ジュニアを見る基準が自分か世界のプレイヤーぐらいしかなかったんです。今だと、結貴ちゃんとか奥田(玲生)選手が活躍しているのは嬉しいですね。一緒に頑張りたいです」
――小西さんのこの先の目標や進路は?
「まだ決まってないんです。仮にプロになる方向に進むにしても大学を卒業してからです。なので、今の間は好きな球を好きなようにたくさん撞こうって決めています。今、自分のビリヤードの原動力は『楽しさ』なので、楽しくいっぱい自分の球が撞けたらいいですね」
――アマナイン優勝直後も「自分の球を好きなように撞けた」と言っていましたね。
「アマナインは『好きな球を撞く』ということを実際に貫けたと思います。仮に負けていたとしても、負けた悔しさはあっただろうけど、球の内容を悔やむことはなかったと思います。そのぐらい貫けました」
――「好きな球を撞く」の根本にあるのは、過去のどういう体験や教えなんですか?
「初めて世界ジュニアに行くことになった時に松野プロに言われた言葉かもしれないです。『相手が上手いとかじゃなくて、まずは一生懸命自分の球を撞けば良いんだ』って。どうせ周りがみんな上手いのはわかっているので(笑)」
――この先の目標は? 例えば、他のアマタイトル?
「他のタイトルを獲りたい気持ちは、自分の中にあるんだと思うんですけど、私は『勝つために撞く』というより、『上手くなったら勝てる』という風に考えています。勝つことを考えすぎると重荷になってしまうので、今、一生懸命やれば自然に結果が出て来るだろうと」
――ベタですが、ビリヤードの好きなところは?
「好きという感情以前に、最近は呼吸をすることみたいに自然な存在だと感じています。今、私からこれを取ったら違う自分になってしまうような……。ある意味、自分の一部。必要なものなんだと思います」
――ビリヤードと今まで以上に仲良く付き合えている感覚もあるのでは?
「ああ、ちょっとそれは実感しています。最近は、はっきりと『私、楽しいんだ』って思うようになっています。よくよく考えればそうじゃないとビリヤードやってないですよね(笑)。はい、仲良くやっています(笑)」