2013年末、南アフリカの
ヨハネスブルグで行われた
『世界ジュニアナインボール選手権』(女子の部)で、
日本の平口結貴選手
(ひらぐちゆうき。大会開催時16歳)
が、銀メダルを獲得する大活躍を見せた。
ビリヤードに超アツく、
北海道のプロ・アマプレイヤー達に
可愛がられている
自称「いじられキャラ」の平口選手。
北海道栄高に通う苫小牧の女子高生が
体験した初の海外遠征秘話をここに。
写真・文:B.D.
●大会戦績
ナインボール・6ゲーム先取
予選ラウンド/
1回戦 不戦勝
2回戦 不戦勝
勝者最終 2-W 呉芷婷(ウー・チーティン)(台湾)
敗者最終 W-5 カミラ・コジャエバ(ベルギー)
決勝シングルトーナメント/
Best 4 W-2 カタリナ・ポロヴィンチャク(ウクライナ)
Final 2-W ナターシャ・セロスタン(ロシア)
――銀メダル、おめでとうございます!
「ありがとうございます! 2位という結果は嬉しいというか、自分でもビックリしています」
――決勝戦をUSTREAMで観ていました。
「あ、そうだったんですか。他にも日本で観てくれた人が結構いたみたいなんですけど、決勝戦はダメでした。自分の良いプレーが出せなかったので納得できていないです。決勝戦で失敗した球は今でもはっきり覚えているぐらい悔しいです」
――しかし、世界ジュニア初挑戦で銀メダルは素晴らしい戦績です。日本のジュニアとしては最高位タイですね(※過去に土方隼斗・現JPBAプロと小西さみあ選手〈アマ〉が2位)。
「隼斗プロとは以前から親しくさせてもらっていて、今回『2位でした』と報告したら、『前に同じところに行った人がいるね』(※自分のこと)という返事が来ました(笑)」
――学校(北海道栄高校)の皆さんも喜んでいたのではないですか?
「はい、先生方もクラスメートとかもみんな結果を知っていて、私が思っていた以上に喜んでくれました。でも、2位って一番響きが悪くないですか? 『中途半端でごめんなさい!』って思っちゃいました(笑)」
――そんなことはないですよ。ところで、平口さんは海外は初めてでしたか?
「はい、外国へ行くのも、外国選手と試合をするのも初めてでした。私、英語が喋れないんですけど、身振り手振りでコミュニケーションして、たくさんの人と仲良くなれたので楽しかったです。男子の部に出ていた大塚雄豊選手は英語が喋れるんで、通訳してもらったりもしました」
――南アフリカには僕も行ったことがないんですが、どんな所でしたか?
「空港からホテルまでバスで移動したんですけど、その時しか街の様子が見られなかったので、ほとんどわからなかったです。大きなテーマパークみたいな所の中にホテルとカジノがあって、そのカジノに特設会場が作られていました。だからずっとそのエリアだけにいた感じです」
――それは安心でしたね。治安が良くないと聞きますから。
「はい。あっ、私、南アフリカの選手達と仲良くなりました。男の子4人と女の子1人です。一緒にアイスを食べたり、コインゲームをしたり。私、日本ではいじられキャラなんですけど、向こうでもいじられました……(笑)」
――(笑)。
――公式サイトを見たんですが、1回戦は不戦勝だったんですか?
「はい、そうです。そして、実は次の試合も不戦勝だったんです(笑)。ラッキーと言えばラッキーかもしれないですけど、2日間試合ができなかったので、感覚が全然掴めてなかったです」
――では、強豪の呉芷婷(ウー・チーティン。台湾)との勝者最終戦が、平口さんの1試合目だったんですか?
「そうです。やっぱり彼女の方が試合の感覚を掴んでいたし、上手いし、2-6で負けました。この試合の後、日本にいる鳴海プロ(※鳴海大蔵プロ〈JPBA〉。大会数ヶ月前から指導を受けた)につい弱気なことを言ったら叱られました。でも、そのお陰で気持ちを入れ替えることができて、次の試合に勝てたんだと思います」
――次の試合が敗者最終。相手が前回大会の優勝者、カミラ・コジャエバ(ベルギー)選手でした。ヒルヒルで勝ちましたね。
「彼女を生で観たこと、あります?」
――いや、残念ながらないんです。
「すごく上手くてすごく美人なんですよ(笑)。試合は、私がずっとリードされていて完全に相手に流れがありました。でも、1球、『これを外すの!?』という球を彼女がミスしたんです。私はそのチャンスを逃さないように、セーフティもちゃんと使って丁寧に戦いました」
――もともと攻めるのが好きな方なんですか?
「ずっと攻め攻めなビリヤードでした(笑)。でも、それだけじゃ勝てないとわかって、最近はセーフティも取り入れて戦うようになったんです。あと、ブレイクショットも見直してだいぶ練習したんですよ。この2つは大会前に準備しておいて本当に良かったです」
――前回チャンピオンとヒルヒルというのはアツいですね。そして、平口さんがそこで負けていたら「負けー負け」終了だった訳ですね。
「はい。最後の8番から9番は、すごく緊張して泣きそうになってしまいました。だから、一呼吸置いて、試合を見守ってくれていたお母さんの顔を観たんです。そうしたら、お母さんが頷いてくれて。あれで落ち着いて撞けました」
――そして、決勝シングルトーナメントに進出。準決勝はウクライナの選手(カタリナ・ポロヴィンチャク)に6-2。
「あの試合は私がしっかり撞けていたと思います」
――大会3日目に、呉戦からカタリナ戦まで3試合をやったんですか?
「そうです。最終日は決勝戦だけです。私、2日間しか試合してないんです(笑)。でも、最終日の朝は今までにないくらい緊張しました。決勝戦が9時スタートで、起きたのが5時。ずっと緊張状態でした。それなのに、試合の5分ぐらい前にその緊張感がほどけちゃって……。もっと緊張感のコントロールもできないとダメだなぁと思いました」
――南アフリカに行く前にどんな準備をしていたんですか?
「以前から教えて下さっている小山峰紀プロ(JPBA)と、あと数ヶ月前から鳴海大蔵プロ(JPBA)にも鍛えてもらっていました。鳴海プロには厳しいことも言われましたが、私はそれを激励だと考えて頑張りました。世界のトップジュニア達より自分が優れているなんて思っていなかったし、優勝したいとか全然考えてなかったです。だから、2位という結果を出せて、嬉しいというか、ビックリしたというか」
――さっき話に出たセーフティやブレイクショット以外に、どんな練習をしていたんですか?
「私は今まで、『上』の時と『下』の時とで差が激しかったんです。なので、下を上げる努力をしていました。それはとても良かったです。実際あっちではずっと下で撞いていたので。私はまだまだ下手なんで、テーブルコンディションもわからなかったし、良い球はほとんど撞けなかったです」
――それでも、下を上げる練習のお陰で、慌てることはなかったということですか?
「そうです。良い状態じゃない時の戦い方が少しわかるようになってきたというか……冷静になれるようになったのかな。今までは、悪い状態になったら一気に良い状態に持っていこうとして、結局空回りすることが多かったんですけど、この大会では空回りはしなかったです。たぶん2ヶ月前の私だったら、決勝戦の場に立ってなかったと思います」
――平口さんは世界ジュニアには年齢(誕生日)的にあと2回出られるようですが、やはり次は優勝を目指して?
「ここまで来ちゃったので……そう、かな? やっぱり今回優勝したナターシャや呉やカミラが今の女子ジュニア界のトップだと思うんですけど、私もその中に入って行きたいというか、彼女達に勝ちたいですね。それと英語を覚えて世界の選手達ともっともっと話をしたいです」
――名前が出たその3名は、今の平口さんより上にいるんですね。
「例えば、私が良い状態で、ナターシャが悪い状態だったら勝つこともあると思います。でも、まず、単純に技術が違うと思います。実は私……まだジャンプショットをちゃんと練習してなくて(笑)。でも、彼女達は当たり前にジャンプをしていたし。それと、あとは集中の仕方が全然違いますね。特にナターシャの集中状態は怖いぐらいでした。気合いが違うというか。私は気合いとか根性とかってすごく大事だと思うんですけど、ナターシャはそれを持っていました」
――わかりました。貴重なお話の数々、ありがとうございました。次の大きな大会は何でしょうか?
「『女流球聖戦』に出る予定です。それから、4月の『全日本ジュニア』です」
――また活躍を期待しています!
平口結貴さんはこんな人→
2013年世界ジュニア(女子)銀メダリスト
1997年7月11日生
北海道栄高校1年生(※取材時。2013年)
苫小牧在住
ビリヤード歴は10年
2013年全日本ジュニア優勝
使用CUE(全てMEZZ):
プレー/彩 AYA-O
ブレイク/パワーブレイク PB-O
ジャンプ/エアードライブ AD-O
キューケース:
QK-S Q-23SG
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※平口さんのインタビュー第2弾はここ
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